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2005.2.7
 
 


専門家が発言しないでどうする…

 村井純慶大教授のインタビュー記事を読んだ。
  → 『インタビュー: 慶大教授・村井純さん ネットを育てる(上)』 (2005年1月31日) (1)

 誰もが読める場で、インターネットの創成期から活動してきた方が貴重な発言をしてくれた。有難いことである。

 発言が文字になった。・・・始めの頃は、「学会発表の機会もない。」

 これが日本の学会の実態である。
 電話屋の仕事に入り込んできた邪魔者には、発表の機会さえ与えられないのだ。
 学会に君臨する学者達は、異端は排除するのである。
  → 「科学研究費問題(4:異端排除)」 (2003年2月7日)
  → 「学会の体質問題」 (2003年2月24日)

 今もって、この体質を変えたいと考える人は少数派のままだ。

 従って、過去は異端であっても、主流になれば、同じ体質に変わる危険性は高い。
 つい、そう思いながら読んでしまった。

 「インターネットの活用がうまくいっていない時、専門家が発言しないでどうする。」との批判を受け、動いたそうだ。その結果、「05年に10Mbpsのインターネットが月額3000円で利用できる」ようになった。

 1人のユーザーとしては有難い結果である
 しかし、マクロでの総括は、別次元の問題である。

 この流れを作りだした一番の功労者はADSLベンチャーだと思う。
 この視点が重要だと思う。施策がこうした挑戦者を生むきっかけや、追い風になったかのか、十分考えるべきである。

 こう考えるのは、価格引下げのドライブをかけたのは、国の方針とは思えないからだ。どちらかといえば、今は消え去ったADSLベンチャーが驚異的な低価格を打ち出したことにある。
 果敢な挑戦者が登場したため、業界が動揺し、負けずと低価格戦争が勃発しただけに見えるのだが。

 とはいえ、廉価なサービス実現のスローガンは、インターネット浸透には絶大な効果を発揮したのは間違いない。しかし、それ以上ではないかもしれない。

 結局のところ、インフラ産業は、資金豊富な後だしグループ3社寡占状況になってしまった。
 ともあれ、安価なインフラが短期間でできあがったのである。

 これで成功と見るのなら、視野が余りに狭すぎるのではなかろうか。
 できあがったのはインフラ産業であって、これを利用する新産業ではない。この視点を欠けば、ハコもの作りができたというだけの話でしかない。

 これでは、新幹線を誘致すれば僻地でも産業が勃興するという安易な発想に近い。
 世界一安いインフラを作ったから、経済を刺激し不況状況の突破口が見え、新産業が勃興したのなら成功と呼べるが、そうでなければ成功とは言い難い。
 実際、この間に勃興したのは、インターネットと言うより電話(ケータイ)の方である。電話を伸ばすための付属物としてインターネットが活用されたに過ぎない。これを高く評価する訳にはいくまい。

 要するに、価格を最安価にすることが重要ではなく、インフラを使った新サービスや、生産性向上が図れる体制構築が求められているのである。価格や普及率は、その観点からの一つの指標にすぎない。

 もとはといえば、インターネット接続料金が高いから、新しい製品や新しいサービスが勃興しないとの主張だった筈だ。
 それでは、世界最安値のインフラができて、実際、新産業は勃興したと言えるだろうか。

 典型は家電産業だ。
 インフラが整って、新製品市場を創造しようと動いているだろうか。

 未だに、収益源は薄型テレビやDVD関連商品だ。インターネット接続とは無縁である。ゲーム機での利用も微々たるものだ。
 新型パソコンに至っては、テレビ仕様がウリである。インターネット利用とは全く無関係な方向に進んでいる。
 ブロードバンド化しても、音楽ダウンロードサービスも進む気配はない。
 これが実情ではないだろうか。

 現実を直視すべきだと思う。
 できたのは素晴らしいインフラ、即ち、ハコものなのである。

 特に、それを強く感じるのは、凄まじいIP電話の宣伝攻勢を受けた時である。

 インターネット接続サービスへの付加オプションとして拡販が進んでいるのだ。インフラ業者にとっては、単価が安すぎるインフラビジネスだけでは、収益不足だから、収益源を求めるのは極く自然な動きだ。
 しかし、どこかおかしくないか。

 インターネットが開かれたインフラなら、IP電話はインフラ業者の付加サービスになるとは思えない。

 筋からいえば、様々なIP電話機器や、独自のネットワークサービスを自由に購入できる状況が生まれる筈だろう。
 これにより既存電話事業は一気に没落するだろうが、新産業が勃興し、新市場が切り拓かれていくのである。
 このダイナミズムが求められているのではないだろうか。

 インフラ構築が新産業を生み出す訳ではない。新産業の息吹を、インフラ業界が抑制する状況を打ち壊すことが求められているのだ。

 「インターネットの活用がうまくいっていない時、専門家が発言しないでどうする。」は今でも通用する言葉だと思う。

 --- 参照 ---
(1) 下[2005年2月2日]: http://www.mainichi-msn.co.jp/it/coverstory/news/20050202org00m300148000c.html


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