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2008.2.18
 
 


パソコンのコンセプト再考が必要では…

 2008年1月29日開催の四半期決算説明会(1)で、「国内PCはトップシェアを堅持し、採算を確保」(2)したと報告した企業幹部が、「PC事業を長期的に捉えると、増加していくよりも、縮小していくことになる。毎年、増えていくことは期待できない」と語ったそうだ。
 これに対して、“そうならないようにがんばってほしい”(3)という声援がとんでいる。パソコン産業界の人なら当然の反応だと思う。

 パソコン用CPUの生産を見れば、サーバ用も含まれているが、2007年は数量ベースで13%もの伸び。(4)ノートパソコンは当面2桁成長は堅いと見なされている。どう見ても衰退産業ではない。

 とはいえ、確かに、市場の状況は大きく変わりつつある。
 パソコンの位置づけで事業戦略が大きく変わる時代に突入したということである。
 今や、世界は5強[HP, Dell, Acer, Lenovo, Toshiba](米国市場だけはこれにAppleを加える.)の動向で市場の流れがほぼ読めるようになってしまった。(5)こうなると、単なるパソコンメーカーとしてなら、存在意義が問われて当たり前だ。

 なんと言っても特徴的なのは、シェアトップのHPの好調さ。製品のコストパフォーマンスが好評のようだから、この勢いは続くだろう。その一方で、ビジネスモデルで一世風靡したDellは苦闘している。直販以外にも注力することで不調から脱しようという方針そのものが、Dellの競争力の衰えを如実に示す。
 シェアはかなり離されているものの、残りの3社は確実に成長路線を歩んでいるようだ。いずれも、ノート型で定評がある企業ばかり。
 デスクトップ型市場が伸びず、市場がノート型中心になれば当然の結果だろう。

 このことは、ビジネス用個人向けパソコンのニーズと、家庭用パソコンのニーズの間の溝が、急激に深まりつつあるということでもある。
 法人マーケットの様相が変わっているということ。当たり前だが、企業は、各社員にパーソナルに機器を設定されてはえらくこまる。それでなくとも、個々の機器の管理費用が嵩んでいるのに、セキュリティ上の心配まで抱えるのは御免こうむるというのは自然な態度。
 社員のパソコンなど、当座必要な機能が搭載されており、安価で安全なものにして欲しいのだ。それこそ、1台紛失したところで、新品を渡せばどうということもない状態にしたいのが本音。シンクライアントは掛け声だけでさっぱり浸透しなかったが、ついにその発想を取り入れざるを得なくなってきたのである。
 この声に応えれば、企業内の個人用パソコンがどう変わっていくかは自明。

 従って、パソコンメーカーのなかから、HPに生産を委託する企業が出て当然。(6)おそらく、東芝設計のマザーボードを使用している企業もあろう。
 システムとの整合上、どうしても独自なパソコンが必要ならともかく、マイナーな地位で細々と非サーバ用の法人向けパソコンを生産する意味はなくなったということ。

 もっとわかり易いのは、スモールビジネス分野の動き。パソコンへのサポートがそれほど意味を持たなくなってくれば、各自が対処し易いAppleのノートでもかまわぬとなるのは自然なこと。

 しかし、問題は家庭用パソコン。
 こちらはビジネス用とは違って、利用者も利用シーンも多種多様だ。潜在ニーズ発掘の可能性を秘めた市場であり、今後どうなるか、確実な予想を立てるのは無理だ。
 と言うより、イノベーターの登場が期待されている領域と言った方がよかろう。「どうなるか」が問題なのではななく、「どうするか」が課題なのである。

 この領域では、仕事場と似た機器が欲しい層はもはやリードユーザーでないし、ノートパソコン化しているのに、パソコン組み立てオタクを相手にしても話にならないだろう。リードユーザーはだれなのか、再考すべきではないか。
 そして、彼等はパソコンを何に使うかだ。

 どうも、この辺りを考えず、ただただモノ作りに励んでいるとしたら、間違いなく衰退産業への道。
 テレビを見習うべきである。一家に一台ではなく、一人に一台で、市場を大きく広げた。性能向上がわからなくなってしまったパソコンも、この時のテレビと同じことではないか。
 昔、パソコンなどなかった頃、各部屋に1台のコンピュータという将来の家庭の絵姿を議論したことがあるが、そんな経験を踏まえると、パソコンでテレビなどという流れほど訳がわからないものはない。そんなにテレビが見たければ、そこらじゅうにテレビを置けばよいからだ。それに録画など、ビデオ機器で十分。

 パソコンとは、得られた情報を自分なりに処理したり、その結果を直積したり、他の人に伝えることができる道具。
 しかも、ようやく苦労してインターネットの世界に繋げたというのに、インターネットとは全く無関係のメディアをわざわざ取り入れる。パソコンの意義を消し去る方向に進めようと頑張って、一体何を実現したいのだろう。
 原点に戻ってパソコンの将来像を考える必要があるのではないだろうか。

 --- 参照 ---
(1) 2008年3月期の第3四半期決算説明会 http://www.c-hotline.net/?module=Viewer&codeAcc=NECCcf155c86795a767e2e4da7ffc8bbaf7e
(2) http://www.nec.co.jp/ir/ja/pdf/080129/080129_02.pdf
(3) 山田祥平のRe:config.sys 「パーソナルコンピュータはなくなるのか」 [2008年2月1日]
  http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0201/config193.htm
(4) “Worldwide PC Processor Market Hits Record Levels of Unit Shipments Again in 4Q07, According to IDC” IDC Press Release [2008.1.22]
  http://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prUS21049708
(5) “PC Market Still Strong In Q4 With Solid Growth Across Regions, According to IDC” IDC Press Release [2008.1.16]
  http://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prUS21041708
(6) “日立とHPのパートナーシップ強化について -ビジネスPC事業における協業で基本合意-” [2007年3月9日]
  http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2007/03/0309a.html
(イラスト) (C) clipart.jp http://www.clipart.jp/index.html


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