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2008.10.23
 
 


クラウド競争本格化…

 クラウドコンピューティングで日本のコンピュータ企業はどうなるんですか、という質問を受けたが、それはご自分でお考えになったら如何。
 どんな競争になっているか、日本の現実に即して、書いてみたのでご参考まで。

 ITシステムを眺め、少なくとも、素人でもわかる、とてつもない大きな変化がある。
 それはサーバがとんでもなく安価になったこと。そして、通信容量が大きくなったことの2点。このため、扱うデータ量の膨張がすさまじい。なにせ、家庭用のUSB接続の1テラバイトのハードディスクが1万円台で買えるし、1ギガUSBフラッシュメモリが1,000円強というのだから。

 このことは、大企業のITシステムの超巨大化は避けられないということ。思ったより早く、巨大システムメインテナンス問題が発生するということ。
 常識で考えれば、個別企業で対応するのは無理だろう。
 それだけでも、Googleは注目されて当たり前。検索はキャッシュメモリを多用するから、凄まじい能力が必要となる。ひょっとすると、100万台規模でサーバが繋がっているシステムかも知れないのだ。お金がかかることもさることながら、この管理が大変なのは言うまでもない。

 こんなとんでもなく巨大な仕組みが例外的ではなく、当たり前になってくるとしたら、一体どうするつもりか、考える時代が来たということ。誰が考えたところで、ハードは次々と壊れていくし、OS/ミドルウエア/アプリケーションソフトのバージョンアップも錯綜してくるのはわかりきっており、企業内システム部門の対応能力を超えるのは間違いあるまい。
 早晩、全く違う仕組みを構築せざるを得ないのは自明なのである。
 こんなことを考えた上で、企業のITシステムの将来の姿を考えておく必要がでているということ。今までのように、「世界は数台のコンピュータに集約されるのだろうか」といった遠い将来話をしている訳にはいかなくなったのである。
(話はとぶが、Obama大統領が誕生すれば、米国政府はCTOを設置し、この流れを促進させる政策を打ち出すと思われる。)

 クラウドとは、このような時代の先駆けと考えると理解し易いのではないか。
 つまり、企業が社内組織でシステムを管理できなくなっていくということ。SUNのスローガン、“The Network is The Computer”の時代に突入するということでもある。

 現在の技術で、次世代のハードをイメージするなら、巨大なグリッドコンピューターを作り、桁違いの処理能力を実現すると共に、膨大な記憶容量を持つセンターを設置したようなものとなろう。ごく自然に考えれば、そのインフラ上で稼動するのは、SaaS(Software as a Service)しかあるまい。当然、端末はシンクライアント。それを活用して様々なサービスが提供されることになる。

 Eric Schmidtの警告を、この観点から読むとよいかも。
 “What's surprising is that so many companies are still betting against the net,
 trying to solve today's problems with yesterday's solutions.
 Cloud computing is hardly perfect:
 internet-based services aren't always reliable
 and there is often no way to use them offline.
 But the direction is clear.”(1)

 ただ、早とちりすべきでないのは、この世界がgoogleのリーダーシップで動いていくとは限らないという点。SaaSのリーダーがヘゲモニーを握るべく「Web 3.0」なる言葉を言い出し、両者が協力せざるを得なくなったことでわかるように、結構流動的なのである。(2)
 思えば「Web 2.0」(3)は2005年の話だ。勘のいい人は、これだけで、これからどういう方向に動くかわかった筈。「Web 3.0」でも同じことが言えるかも。

 いたく概念的なものだが、以下のように記載されている。
Web 1.0 Anyone Can Transact eBay,Amazon,etc.
Web 2.0 Anyone Can Participate social networking,
user-generated content,
online collaboration
Web 3.0 Anyone Can Innovate Cloud Computing

 要するに、業界地図を塗り替える狼煙をあげたということ。

 まあ、最初は、SaaSのPlatformの競争となるのだろう。ビジネス向けのSalesforce.com、一般向けのGoogle、そして後追いのMicrosoftの三つ巴が目立つことになる。オープンな“Mozilla Firefox”の普及が進んでいるにもかかわらず、Googleが独自ブラウザ“Chrome”を投入したことが話題となった理由もこの辺りにある。まだたいした機能は揃っていないようだが、稼動中突然落ちるリスクを極小化したようだし、NetSuite(SaaS型CRM/ERP/Eコマース統合スイート)がすぐに対応したから、動きは機敏である。(4)
 こうした観点でみるなら、この競争に、Yahoo!/ZimbraやeBay等も加わっていくことになろう。
 一方、日本の大企業はおしなべて“betting against the net”だから、この土俵には参加しようがない。

 ただ、この競争だけ見ていれば、状況がわかるというものではない。帰趨を決めるのは、ビジネス用途だからだ。ここがポイントである。
 現実に、大企業が持つ、巨大なデーターセンターが絡んでこなければ、クラウド時代を切り拓くことはできない。従って、この分野を誰がリードしていくかで流れが決まることになるということ。
 言うまでもなく、この分野で、俗に言う「ミッションクリティカル」な巨大インフラ構築能力を持っているのは、IBM、Sun、Dell、EMC VMwareといった企業。そして、ウエブアプリケーションを支援するAkamai等がこれを支援する構造ができていると見たらわかり易いのではないか。
 このなかから、企業内のクラウドコンピューティングの奔流が生まれるということ。こちら側が主導していく可能性もかなり高い。こちらの勢力にしてみれば、企業内の仕組み作りから始まるから、“Chrome”といったブラウザがなくても支障はないからだ。

 もちろん、こうしたネットワークを介した巨大なシステム構築にに係わらないIT企業もある。当然ながら、この産業ではマイナーな役割しか担えなくなるということ。

 それでは、日本のIT企業がどの辺りかといえば、構築してきた銀行向けシステムの規模を見ればよいだろう。かつてはこれが大規模だったが、今ではこの程度の処理能力では、巨大とは呼べないのが実情だろう。“The Network is The Computer”に一歩入ってしまえば、競争のシーンから消え去る可能性も否定できない。
 そうなりたくないなら、そのための体制をつくるしかない。ただ何をするのにも時間がかかる文化だから掛け声だけで終わるかも。
 もし、残るつもりがないなら、その時代に残っている仕事は何か考える必要があろう。
 もっとも、“internet-based services aren't always reliable”が続くから、今の“betting against the net”で行くとの選択もあろう。この場合、賭けに負ければ、消滅することになる。
 どれを選択したのか、はっきりさせないということは、最後の道を選択をしているということになる。
 これだけのこと。

 --- 参照 ---
(1) Eric Schmidt: “Don't bet against the internet” The Economist, The World in 2007
(2) Marc Benioff[CEO, salesforce.com]: “Welcome to Web 3.0: Now Your Other Computer is a Data Center” TechCrunchIT [2008.8.1]
   http://www.techcrunchit.com/2008/08/01/welcome-to-web-30-now-your-other-computer-is-a-data-center/
(3) Tim O'Reilly: “What Is Web 2.0” O'Reilly Media [2005.9.30]
   http://www.oreillynet.com/pub/a/oreilly/tim/news/2005/09/30/what-is-web-20.html?page=1
(4) “NETSUITE ON-DEMAND BUSINESS APPLICATIONS FIRST WITH NATIVE SUPPORT FOR GOOGLE CHROME”
  Press Release [2008.9.5] http://www.netsuite.com/portal/press/releases/nlpr09-05-08.shtml
(イラスト) (C) clipart.jp http://www.clipart.jp/index.html


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