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2010.2.9
 
 


ノートパソコンの価格を眺めて…

ノートパソコン5万円時代でも、同じことを続けるつもりなのかな。
 使用中のノートパソコンの筐体(ヒンジ部分)にヒビが入ってきたのでそろそろ買い替えが必要かと思って眺めてみたのだが、右の価格を見て、一種独特の感慨を覚えた。
 だいたい、OSのアップグレード・ダウンロード版が\15,429なのだ。

 これは、【円高還元セール 第2弾 2/4まで!】と銘打ったThinkPadノートパソコンセールである。 CPUは先端ではないが廉価品として十分な力があるし、他の仕様は極く普通の仕様と言ってよいだろう。その価格が5万円を切っているのである。もちろん、少しお金を足せば、先端のデュアルタイプのCPUにすることもできる。
〜上記モデルの仕様〜
OS Window 7 HP
ディスプレー 15.6型
CPU Celeron T3000
メモリ 2G
HDD 250G-5400rpm
光ドライブ DVDmulti
無線 802.11a/b/g/n
保証 1年引き取り修理
  要するに、様々なモデルが揃ってはいるものの、完璧なコモディティ商品と言うこと。

 性能は向上しているが、新しい使い方が生まれている訳ではないから当然の話ではある。しかも、日本市場は成熟というより、衰退である。2009年の国内のパソコン出荷額は前年比21%減で、9年連続減少だそうである。(1)
 にもかかわらず、新プロセッサーが登場すると、20社が50もの“春モデル”を上市するのだ。(2)
 とんでもなく非合理的な状況と言ってよいだろう。

 まあ、“日本のPCが高すぎた”(3)だけ。“8時間ノート、5万円から”(4)というのが世界で見れば当たり前の価格なのに、日本だけ、それが通用しないのである。
 企業側の問題もあるが、高機能なものを買うのが嬉しい人が多いからこうなるだけのこと。廉価な汎用品は未だに敬遠されるのだからいたしかたあるまい。
 生き残るためには、市場が衰退していても、機能満載で次々と新製品を出すしかないのである。本来なら、市場若返りのために研究するのが筋だが、そんなことする余力も無くなったというのが実態かも。このままなら、穏やかに衰退するしかなかろう。

日本の特殊性をバネに飛躍する気はないのだろうか。
 今や世界のパソコン市場の規模は3億台らしいが、(5)ほとんどの日本企業は、1,300万台市場で熾烈な製品開発競争をしていることになる。
 ケータイ端末市場と似ているが、違うのは、世界的に5指に入る日本企業があること。日本市場の特殊性を理解しながら、世界の流れに合わせる能力がある訳で、たいしたものである。

 電子書籍にしても、製品は立派なものを作れるのに、さっぱりチャンスを生かせないのはこの辺りの能力が今一歩なのかも。
 出版産業の閉鎖性のためと言う人がいるが、イノベーションとは普通はそれを乗り越えるもの。後ろ向きの産業は衰微するだけのこと。そんなことを失敗原因にするなら、挑戦などやめた方がよかろう。

 だいたい、漱石を読める「電子書籍」として売れば、結果は見えたようなもの。パソコンで読んでいた人が少し買う以上ではなかろう。よくて「電子辞書」市場程度にしかならないのはわかりきったこと。
 日本でヒットさせたかったら、使える“おもちゃ”にしないと駄目なのは当たり前。それをそうとは言わずに、例えば、“漱石を読もう”という名目的スローガンで売るからヒットするのだと思うのだが。それがビジネスマンの発想と違うか。

 そもそも、役に立ちそうもない機能満載になりかねないのが、日本の家電の特徴である。当然、一過性の流行で終わることが多いが、市場の淘汰で新しい機能が決まっていくという仕組みでもある。
 海外の先進国ではこんなことは難しい。従って、リードユーザーを定義して、しっかりしたマーケティングが必要になるのだが、日本ではそんなことをしない方が実践的なのである。これに胡坐をかいているのでなければよいが。

 感覚的にわからない人もいるかも知れないから、例で説明しておこうか。
 一番よくわかるのがPHSと旧型の携帯電話との競合。PHSは、音質が圧倒的に良く、都会では携帯より通話できる場所が多かった上、通話料金は格安で、安定して繋がるシステムだった。
 しかし、流行ったのは携帯。デジタルといっても中途半端な技術を使っており、そんなものを選ぶ必然性など無かった。ただ、通話範囲が広いという宣伝は効いた。確かに郊外ではPHSが通じない所は多かった。だが、都会の人なら、そんな必要など滅多にない筈。
 おわかりだと思うが、実用性・実践性の視点での通話可能範囲が広いということではなかったのである。公衆電話がなさそうなところから電話できるという“おもちゃ”性が楽しかったことを示す現象である。
 それに、本気でモバイルが必要な人は、PHSを選ぶしかなかったのである。小生は当時の携帯も使ったが、通信得度遅すぎ、とても実用にならなかった。だが、PHS使用者は限定的に留まったのである。
 これ、実は、予想通り。ビジネスマンでボイスメールを使おうとしないのは日本だけと言われていた頃の話なのである。

 これだけで、勘の良い人なら、何を言いたいか想像がつくかも。

 iPod、iTune、iPad、iPhoneといったアップルの製品を少しはまともに考えてみたらどうなのということ。
 どれをとったところで、実用性というより基本はデジタル“おもちゃ”では。本当なら、このようなコンセプトは日本市場が一番あっているのではないかと思うが。
 そんなことは、日本発のゲーム機が世界を駆け巡っていることでわかっている筈。ウオークマンなど音楽鑑賞の世界を遊びに変えたという典型例。
 そこが日本の新製品開発の強さに繋がっていたのではないか。

 それを忘れて惰性に流されれば、地位を失うこと間違いなしと思うが。最近のパソコンに“おもちゃ”性を感じるかね。そうでないなら、コスト優位な企業の汎用製品で十分となるのだと思うが。

 ということは、“おもちゃ”性ということでは、世界に冠たるケータイで雄飛することも、理屈上ではありえないことではないことになる。
 ただ、今の技術マネジメントでは無理だろう。使い方を学ぶのがえらく煩雑な代物だからだ。こんなものが一般大衆に飛ぶように売れるのだから凄い国だが、おかげでガラパゴス化するしかない。

 今のままなら、マニュアル不要の“おもちゃ”型の、電子機器に日本市場は制覇されていくのではないか。新しい機能をいじるより、ウオークマンが登場した時のように、簡単に新しい遊び方ができる方が嬉しいもの。
 日本は世界の先頭を走る高齢者王国ということを忘れているのではないか。
 要は、インターネットでどう遊ぶかということ。広がりがあるなら、一世風靡間違いなし。

 --- 参照 ---
(1) 「2009年 国内パソコン出荷概要」 MM総研 [2010.2.3]
   http://www.m2ri.jp/newsreleases/main.php?id=010120100203500
(2) 「新 2010 インテルCoreプロセッサー・ファミリーが ライフスタイルを変革すると講演」 インテル [2010年1月25日]
   http://www.intel.co.jp/jp/intel/pr/press2010/100125.htm
(3) 岩城俊介: “「価格破壊? いえ、当たり前の価格なのですが」──エイサーの野望 2010” ITmedia [2010年01月27日]
   http://plusd.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1001/27/news096.html
(4) “日本のPCが高すぎた。” Aspire Timeline ACER
   http://www.aspire-timeline.jp/
(5) “PC Market Returns to Growth With Double-Digit Gains Expected Through 2013, According to IDC”IDC - Press Release [17 Dec 2009]
   http://www.idc.com/getdoc.jsp?sessionId=&containerId=prUS22140709&sessionId=MI1GPDR45WGWYCQJAFDCFFAKBEAVAIWD


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