↑ トップ頁へ

2010.4.12
 
 


iPadの競争相手とは…

電子書籍規格の話とiPad発売を過度に結びつけると流れが見えなくなる。
 EPUB v.s. Kindle(AZW)らしき話をしてしまったが、iPadが登場したばかりで、iPad v.s. Kindleの話と混同されがちなので、一言追加したくなった。
  → 「日本でも電子書籍化が騒がしくなってはいるが」 (2010.4.8)

 言いたいことは単純。
 機器と書籍規格が不可分な状況だから致し方ないとはいえ、これを分けて考えないと大きな流れを見落としかねまいというにすぎない。

 まず書籍規格としてだが、以下のようになろうか。
□ EPUB [International Digital Publishing Forum] □
   ・標準化を進めるために作られた。
   ・従って、マルチプラットフォームが考慮されている。
   ・出版界の紙本データソフトとの親和性を重視していそうだ。(日本だと, QXPとかInDesignになるのか.)
   ・XHTML形式を自己解凍ZIP圧縮ファイルにしたようなもの。
   ・欧米の本はほぼこの形態ではないか。
   ・フリーのビューワーは色々あるらしいが、パソコンではAdobe Digital Editionsか。
   ・GoogleBooks、iPodが採用している。
   ・縦書、段組タイプ(日本の雑誌/新聞型)、コミック挿入文への対応は埒外で進んだ。
   ・要するに、日本の出版業界が気にするレイアウトの規格にはなっていないということ。
   ・日本語版はまだ「案」段階。外字問題もあり、どうなるかわからず。
   ・Kindle端末はEPUBには非対応。PDFには対応。(PDFは日本語組版対応.)
□ Kindle (AZW) [Open Book Alliance/Amazon] □
   ・マルチプラットフォーム化は考えていないようだ。
   ・と言っても、パソコン、iPodには対応している。
   ・EPUBをAZWに変換するツールは提供されている。
   ・英文の新聞・雑誌用途には合いそう。
 常識的に考え、日本の本で両者の100%互換性は期待できそうにないから、校閲作業を考えると、商業出版では変換ソフトは使われることはないのでは。

iPadは従来型の読書用の機器とは言い難い。
 くり返すが、こうした電子書籍規格の話と、端末機器の話は別。
 と言うだけではつまらぬので、iPad v.s. Kindleの話もしておこう。

 小生は、iPadとは、モバイルのエンタテインメント機器であって、一般的な書籍のビューワー機能は呼び水にすぎないと見ている。異なる機器を、比較するのはほとんど意味がないと思う。

 そもそも、Kindleは、カラー画像でもなければ、動画も見れない。絵本や、画集・写真集は対象外ということ。基本的に文章を読むだけの端末機器である。つまり、BlackBerryのようにメールに特化して登場した通信端末と同じようなもの。
 余計な機能がないからこそ、読み易くて、電池も長持ちする。これはじっくり読書したい人にとってはぴったり。それに、米国の場合は、日本と違って手近に本屋さんは無いし、あったところで、立ち読みで本を選択する場ではない。それが、通信費用を気にせず、すぐに購入でき、しかも紙本より安くて、何時でもどこでも読めるとなれば、これは便利だぜと考える人が出ておかしくない。
 ただ、一世風靡しても、かつてのPDAのように、他の機器で読む方がよいとみなされれば消滅する可能性はあろう。ただ、一度揃えたライブラリーを捨てる人はいないだろうから、電子書籍規格は残るのではないか。

 一方、iPadの仕様は、従来型読書を好む人にとっては必ずしも嬉しいものではない。美しく明るいテレビのような発光画面と、部屋の灯りだけの紙面とは全く違ったものだからである。それに、人によって生活スタイルは違うとはいえ、持ち続けての長時間の読書には無理がある重さではないか。充電を頻繁に行うのも結構面倒かも。電池の充放電回数で寿命が決まるなら、高価な買い物になるかも知れぬし。(iPadは24.8Whのリチウム電池だそうだ.(1)使い方にもよるが公称10時間.)

 つまり、iPadとは従来型の読書に対応するリーダーと見るべきでないということ。画面が大きいから、アニメを眺める端末機器として使われるかも知れないし、巨大なアルバム帳かも。最初はポータブルゲーム機器として大々的に使われることになる可能性も高い。早い話、汎用性が高い機器ということ。
 入力にしても、片手入力の無線キーボードを使う人も出るかも。
 こんなことを言うと、モバイルのタブレットパソコンと見ているのかとなるが、その通りでもあり、そうでないとも言えるから、説明が一寸難しい。

iPad登場の本質はモバイルOSの主導権争いでは。
 iPadをタブレットパソコンと見てはいけないのは、OSの流れが違うから。ここが肝。
 iPadとは、Mac OSを軽くしたデジタルメディアプレーヤーのiPod touchや、携帯電話iPhoneの類。分野としては携帯電話のOSでパソコン用OSではないということ。

 ご存知のように、パソコンのOSは巨大化しすぎている上、Windowsが圧倒的。Linux系も使われてはいるが、バラバラで全体の状況を変える力はなさそう。ところが、携帯分野は違う。スマートフォン化は始まったばかりだし、Symbian[Nokia主導]、Windows Mobile、LiMO[Linux系, NEC/Panasonicが中心]、Android[Linux系, Google]、i-Phone OSと乱立状態。

 こんな話をすれば、何を言いたいかおわかりになるだろう。日本で発売されたi-Phoneを見れば一目でわかるが、その一番の特徴は携帯電話をインターネットの広い世界に繋ぐことを優先した点。(日本の各通信企業が作り上げた独自の言語王国に対応する気はないということ.[i-mode, EZweb, Yahoo!ケータイ])

 要するに、モバイル用OSの進化はこれから始まるということ。
 iPadファンは色々機能を付加したくてうずうずしているから、プログラムに自由度を与える開発キットを揃えて、主導権を握るべく動くことになろう。
 要するに、Windowsがパソコンで歩んできた道と同じように、新規機能追加で大騒ぎする路線を敷こうということ。

 しかし、柳の下に二匹目の泥鰌という訳にはいかないかも。モバイル端末はビジネス用途ではないからだ。
 それに、一方では、Androidのような流れがある。こちらのOSは、携帯電話用と言うのに、当初から大画面を前提にしていたようなので驚いたが、声とウエブ情報を同一次元で送る仕組みの導入など、他のOSとは考え方が全く違うことが特徴。
 早い話、電話用ではなく、軽くて安上がりにつくウエブ端末用ということ。クラウドの時代に機能満載端末でもなかろうという思想がありあり。パソコンのWindowsとは正反対の方向である。
 このことは、iPadの一番の競争相手は、Androidということになる。

 思わず、前書いたことを思い出してしまった。
 ・・・「携帯電話用OSを無償提供すると大宣伝している企業なのに、Eric E. Schmidt CEOは、iPhoneビジネスに注力しているAppleの取締役を兼務している。今度は、OSまで提供するのだ。それでも続けるつもりだろうか。そのうち、Appleも、“安物”ではないネットブックを出すと思うが。
 相反する利害もなにもあったものではない。」[2009.7.27] (2)

 --- 参照 ---
(1) “iPad Teardown” iFixit  http://www.ifixit.com/Teardown/iPad-Teardown/2183/1
(2) 「Chrome OSに何を期待したいのか」 (2009.7.27) http://www.randdmanagement.com/c_net/ne_172.htm


 インターネットのインパクト の目次へ>>>     トップ頁へ>>>
 
    (C) 1999-2010 RandDManagement.com