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2010.11.4
 
 


孫正義氏はハコモノ公共事業推進派なのかも[続]…

 孫正義氏は光ファイバーを全家庭に引き込むという「光の道」に今もってご執心のようだ。ADSL事業はジリ貧化間違いなしだから、企業の経営者としてはわからないこともないが。
     →  「孫正義氏はハコモノ公共事業推進派なのかも」  (2010.5.12)

 “「税金ゼロ」で実現できる成長戦略があります。”というふれこみである。昔よくやった不況期の電力設備投資前倒しとおなじように、経済刺激策になるし、工事で大幅な雇用が期待できるから、これは政治的にもお勧めということ。
     →  「光の道の実現に向けた新提案」  ソフトバンンク(株) [2010年10月25日]

 小生は、この手のインフラ投資は、テレビ放送のデジタル化と同じようなものと見ている。

 まあ、放送のデジタル化は理屈の上では決して悪くはないのだが、インターネットプロトコルとの親和性を減らし、他産業とは融合しないように頑張るのだから、せいぜいのところテレビ買い替えの前倒し程度の意味しかないのである。この結果、腐るほど沢山あったアナログテレビが粗大コミ化する。当然、テレビ視聴も大幅に減るし、投資負担がのってくるからコスト削減不可避で番組の質も低下する。放送産業はこの先沈んでいくこと間違いなし。ともかく、資本効率が急速に悪化するのは間違いない。

 家庭の全光化の話にしても、すでに3,000万世帯以上がインターネット環境下にあり、これを全戸に拡大したからといって、生活の実態を変えるとは思えまい。電話しか使っていない家は、同じ電話機を使い続けるだけで終わる可能性が高い。もっとも、光ケーブルを全家庭に引き込み、その利用機器を国が無料で支給すれば、電子機器業界も潤うし、その機器を使うサービスも出てくる筈というのがウリのバラマキ施策かも知れぬ。

 この手の話は昔からある。
 日本独特の官だのみで市場を作るやり方だ。こんなことをしているから、イノベーション創出ができないのだが、現在の仕組みを温存しながら粛々と計画を進めたい人だらけの社会だから、常にその道を歩んでしまう訳である。
 この提案にしても、設立される新会社の株主構成は圧巻。これだけで、どんな性格のものか一目瞭然。
 国が4割出資で、国が36%の株を保有するNTTが2割出資というのである。今時、JALのような企業を作るというのだからビックリ。要するに、赤字の場合は、国の力で通信料金を値上げしていただこうとの算段。
(交換機代替期が迫っているから、メタル配線を止めたらという提案でもある。この場合、光に変えればメンテナンス費用が大幅に安価になるとなるとの試算は、正しいとも正しくないとも言える。NTT型のメタル配線の保守は、雇用の問題もあるため、海外と比較するともともと大幅な過剰品質である可能性が高いからだ。尚、常識的には、交換機代替に当たっては、メタル回線に乗せる信号を、アナログからインターネットプロトコルに変えることになろう。どの道、ソフトバンク型のADSL商売はなくなる運命だと思う。)

 早い話、昔の電々公社時代に逆戻りの政策を打てと主張している訳である。
 そう思いながら、「光の道」の絵を見ていると、ISDN計画そっくりなのに気付く筈。世界の先頭を走って、21世紀の情報化社会の雄になると誰もが語っていたはるか昔と同じ。当時の絵をそのまま使えるのではないか。ただ、クラウドという言葉をつけ、ISDNという言葉を消す必要はあるが。
 “分岐のPONを用いた100Mbpsベストエフォートで全家庭に繋ぐ”方式が最善という確証などないのであり、又、使いもしない無駄なものを全国津々浦々に広げることになるのかも。
 もちろん、もう少し前なら、光ファイバー全戸引き込みも意味はあったが、もう遅すぎるのである。今急ぐべきは無線LANの整備。これを利用した市場が急速に開けつつあるからで、このチャンスをみすみす逃すべきではなかろう。
 もっとも、既存携帯電話会社はそれが一番怖いから消極策をとらざるを得ない。無線の常時接続インターネットが普及すれば、インターネット電話になるのは時間の問題だからだ。

 再び、アナログ電話時代からの問題にぶち当たっているわけである。アナログ電話は、全国一律普及のため、高額な電話料金は不可避とされてしまった。競争が始まってようやく安価になってきたという状況である。お蔭で、様々な通信サービスはさっぱり広がらなかったのはご存知の通り。テレビに電話をつなげたりしたところで、たいしたこともできないのに、料金ばかり嵩めば誰も使う訳がなかろう。
 もし、電話料金が定額制だったら、とうの昔に様々なビジネスが立ち上がっていた筈である。日本のサービス産業は細かい工夫や新基軸を打ち出すのが習い性で、電話を利用して自由になんでもできるようにしてあったら、一大産業ができていたと思う。

 ただ、その手の新しい風を吹き込むのは、業界安定第一の日本では難しい。にもかかわらず、それに切り込んだのが当のソフトバンクだった。
 がんじがらめに見えた産業を一変させたのである。イノベーション創出と呼ぶに値する快挙と言えよう。
 なかでも重要なのは、リスクをとれる資金調達方法で事業を進めたこと。リスクを避ける経営しかできない企業だらけになってしまったなかで、ようやく曙光が見えたようなものである。
 そうそう、イノベーション阻止に回ったISDN関連の技術者(ソフトバンクのモデムは問題ありというデータを揃える作業に邁進)の壁を突破したのも特筆もの。そのお蔭で、ADSLが普及し、当然ながらそのユーザーは次々と光に乗り換えていく訳である。
 ソフトバンクも大企業になってしまったから、イノベーター役はもうご勘弁ということなのだろう。


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