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■■■ 歴史観 2021.5.15■■■
[6] 台湾領有に動くのは自明
北京オリンピックが終われ中国共産党大会。その先は、人民解放軍による台湾侵攻が何時発生してもおかしくないと、米軍制服組が語ったとの報道があったらしいが、たいした反響もなかったようだ。

それはそうだろう。いかに鋭く対立しようが、巨大国同士は戦争を避けようとするのが普通であり、その危険性を孕む動きは起こるまいとたかをくくって見ているのが普通だからだ。

しかし、この場合はそれが通用しそうにない。
それは遅かれ早かれ何時か発生すること。回避は難しかろう。
決して、悲観論とか、イデオローギ的な見方をしている訳ではなく、それが人民解放軍の使命になっているからだ。しかも創設100年を目途にして綿々と実現のために準備して来たのだから。それでも、かつては、それは誰が見ても悲願でしかなかったから、儒教的合理主義で静かにしていただけに過ぎない。ところが、すでにこの地域のパワーバランスは変貌を遂げてしまっており、今や、軍事委員会の決定が下されれば、即日開始できる状態に来ているのは間違いない。
(但し、台湾海峡に頻繁に投入している航空部隊を見る限り、実戦的にはほとんど無力と言わざるを得ない戦闘機である。海峡越しのミサイル攻撃で空軍を完全壊滅させた後に登場する航空部隊としての示威を行っているということになろう。)

軍事的に中国沿岸ではすでに米軍の力は発揮できる状況にはないからだ。台湾海峡に至っては、米軍は、空も海中も情報支援体制が欠落したままであり、空母を台湾海峡に丸裸で派遣するなど無理筋だろう。
シュミレーションゲームでも行えば、雲霞のようなミサイル攻撃を受け、即時制空権喪失では。
こうなることは、相当前からわかっていたこと。人民解放軍将校が、米国制服組に面と向かって西太平洋を中国管轄にする構想を直接伝えたのに、それを黙って聞くだけで何も対処しなかったのだから。
常識的には、オバマ政権はそれで結構との信号を中国指導部に送り続けたと言ってもよかろう。・・・なんら意味ある軍事対応をとらず、みかけの太平洋地区重視配備と、地域米軍に中国の軍事拡張反対のマスコミ向けデモンストレーションをさせただけである。必要と思われる軍備増強は一切避け、警戒システムも作るそぶりひとつ見せなかったのである。米軍は随分と頑張ってパフォーマンスを繰り広げたが、所詮、オバマ式美辞麗句のようなもの。
人民解放軍からすれば、新秩序に諾々と従うとの回答ありと考えて当然である。
今更、それを反故にするというなら、新秩序樹立に向けた動きを加速させることで応えて行くべしとなろう。魯迅がいみじくも言ったように溺れる犬は叩かねばならぬ的に。それが、中華思想の基本中の基本では。

オバマ政権は市民運動型であり、そもそも軍事覇権主義を嫌っていたようで、米国はその地位から降りると宣言したようなもの。核兵器を除けば、相対的に見れば弱体化路線をひた走ったのだから、今更、中国の軍事的膨張を云々してもどうにもなるまい。
特に、軍事技術の流れが変わっているのに、最優秀兵器重視方針を堅持したことが、実質的軍事力の大幅低下につながっていることも間違いなさそう。軍事産業維持と、財布の都合からの決断かも知れぬが。

反米勢力からすれば、ついに、米国が覇権国の座からころげ落ち始めたと解釈することになろう。実質的に支配している金融秩序を武器にしたりすれば、反作用で真っ逆さまになるのがオチであるし。
普通、力が落ち始めれば弾みがつくだけで、止めようがなくなるもの。
人民解放軍にしてみれば、ここで引くなど有り得まい。米国との地位逆転が図れる時代が到来したと考れば積極果敢に動くことが鉄則だからだ。
この人民解放軍だが、独裁者の私兵的存在の顔もあるし、独自の経済基盤を有することから、かつての軍閥的顔もあって、極めてわかりにくい組織である。国家組織に属さず、共産党組織の中核として位置付けられており中華思想一色の特異な組織風土を形成してきたことは間違いない。
従って、この組織が本気で台湾の武力解放を言い出したらそれを止めることなどできなくなる。

そんな雰囲気が生まれているとしたら、台湾武力侵攻の可能性は限りなく高い。

米中高官アラスカ会議開催後に、急にこの危険性が言われるようになったし、制服組高官が発言したところからみて、米軍は備えが不十分なのかも。

しかも、この会談だが、米国にはなんの準備も戦略もなかったように映る。中国の報道を見る限り、何のために設定された会談かさっぱりわからない。
中国では、米国に招請されたのでに出向き、中国の主張を言い放って即帰国とされている。米国政府事実上ナンバー2にあたる高官との会談とはとても思えない扱い。なんといっても注意すべきは、独裁者の親書も持たずなのだ。そして、中国側は序列上実務者で政治的決定権無き、外務と党の官僚を派遣したとあからさまに書いている点。国内的にその方向を選択するしか無いことが見てとれる。
一方の米国は、その後日米韓会談を設定。発表文面からして、中国問題が議論されたのではなく、東アジア全体の漠然とした話に終始したことは明白。軍事同盟が存在している国家が改めて会談する内容とはとうてい思えない散漫なアジェンダだったとしか思えない。

このことは、単なる顔合わせ以上ではないことを意味し、米国の外交基本姿勢は、問題先送りと考える以外になかろう。唯一、明確な意思表明は日本海を東海と呼んだくらいのもの。このことは、朝鮮半島政策も鵺的に立ち回るだけで無方針ということになる。
政権発足時で準備不足と言うより、人民解放軍に対して、オバマ政権時同様に軍事的フェードアウト路線で行くつもりと早々と表明したことになろう。米国は経済的観点から緊張路線は続けようがないが、当たり前だが、人民解放軍の最優先事項は経済ではないし、米国が国内事情で外交を考えるようになったのと同様に、中国も国内権力闘争で方針が左右されるから米中間の齟齬が生まれ易くなっている。そこらを読み違えないで欲しいもの。

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