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2003.12.22
 
 


走り跳ぶロボット技術の意味…

 2003年12月18日、ソニー エンタテインメントロボットカンパニーが「歩行・跳躍・走行運動統合制御」を開発したと発表した。
  (http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/200312/03-060/)

 AIBOを販売している企業だから、製品ライン拡張ということで、2足歩行技術を取り入れたのがQRIOと思っていたら、全く系列が違うようだ。
  (http://www.sony.net/SonyInfo/QRIO/technology/index2_nf.html)

 AIBOとは、どう見ても、人工知能系のコンピュータ・ソフトを使って、物理的動作を愉しむ新型のゲーム機である。
 一方、QRIOはAIBOと同じOSらしいが、2足歩行技術が中心になっている。大きさが小さいだけで、基本は本田技研工業のASIMOと変わらない。

 QRIOは様々な機能が発揮できるが、2足歩行のロボット・プラットフォームに、既存技術ベースのコミュニケーション機能(音声認識/画像認識)や位置判定能力(測距センサ)を加えたにすぎない。
 とはいっても、完成度は高い。(アクチュエータの馬力とコンピュータの処理能力がトルクバランス2足歩行を実現するためには、という制限がある。)

 QRIOには、注目すべき点が2つある。

 1つは、機械要素の深化である。アクチュエータが高度化しているのである。反応性抜群のデバイスが完成したようだ。

 アクチュエータ仕様の高度化と安価化が、ロボット普及のボトルネックであるのは間違いない。このデバイスの能力とコストがわからないから、どの程度のインパクトを与えそうかは、さっぱり判断がつかないが、大量生産が得意な家電企業だから期待が膨らむ。
 しかしながら、ロボットの軽快な動きを見ると、価格を考えず、とりあえずは制御のし易さを狙ったデバイスを開発したように見える。

 もう1つが、自動動作の仕組みが大幅に導入された点である。
 例えば、押されると、押された方向へと歩いて転倒を避ける。転倒不可避と判断すると、腕を出したり、かがむといった、防御姿勢をとる。転んでしまうと、自力で立ちあがる。
 さらに、今度は、走ったり、跳んだりできるようになった。
 アクチュエータの能力が向上したため、このような展開が楽に図れるようになったのだろう。

 但し、QRIOの動きを見る限り、高度な判断能力に基づいて自律行動をとっている訳ではなさそうだ。人間の行動を分析し、条件に応じて、仕組まれた動作をしているだけだと思う。

 といっても、自律行動でないから、技術が未熟という話しではない。これは人間でも同じである。
 ロボットの専門家の話しでは、人間でも、鉛を入れたコーヒーカップを手渡すと必ず落としてしまうという。カップを手渡されたら、どのような動作をすべきかが、脳に刻み込まれているから、予想した条件と違うと上手く行動できないのである。人間も、条件に応じて仕組まれた動作をするだけなのである。

 走る、跳ぶという行動は、見かけは派手だが、仕組まれた動作の延長上だろう。人の動作を解析して、その類似パターンで行動させる訳だ。

 こうした系統の技術なら、「世界初」でも、技術リーダーの地位を守るのは難しい。

 人の動作の分析技術のリーダーはロボット技術関係ではないからだ。
 アニメーション業界では古くから人や動物の行動解析を進めている。蓄積した知識も膨大だし、画面上ではあるが、ソフトで行動制御する技術も持っている。このスキルと比べると、ロボット領域はまだまだ貧弱だ。

 アニメーション業界の技術とロボットの機械制御技術が融合すると、ロボット技術は一挙にブレイクする可能性を秘めていると言えそうだ。


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