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2006.6.19
 
 


癒しロボット販売好調の報道を見て…

 “世界一癒し効果”のある、アザラシ型ロボット「パロ」の上市は2005年3月だそうである。  南砺市起業家支援センターに入居しているベンチャー、(株)知能システム(1)が、産総研からライセンスを受け生産しているそうだ。
 2006年6月17日のニュースによると、すでに国内で600個販売したそうである。(2)
 小売価格35万円だから、介護施設が気軽に買える価格ではない。ニュースや博覧会で見て、面白そうと買った人がほとんどだろう。それでも、2億円の市場規模に達した訳だ。

 このプロジェクトは(3)、1993年開始だ。政治的なリクエストも多く、紆余曲折もあったようだが、通算の研究開発費用は10億円を軽く超えるだろう。

 これだけの情報だと、製品そのものは面白いが、コスト・ベネフィットのバランスが悪そうとの印象を与えるのではなかろうか。
 その理由は、高齢化社会に対応し、癒しのペット“代替”イメージが強いからだ。生きた動物で引き起こされる問題を避けるために、動く縫ぐるみを作ったと言えないこともない。

 おそらく、もっと安価に提供して、ヒトとロボットの交流を増やせといった意見が飛び交っていると思う。

 しかし、そんな方向に進むなら、この研究の意味を失いかねまい。
 この分野は、趣味のロボットとか、技術を学ぶための教育ロボットとは違うからである。ロボットマニアが色々試すことで新市場が広がるなら、安価にすること自体、大きな意味があるが、「パロ」ではそうはならない。

 わかり易く語ろう。

 このロボットは、チョット見には、アザラシの縫いぐるみにすぎない。せいぜい抱えたり、側に置くだけ。動き回ることもないのだ。
 ただ、触覚・光・温度・姿勢センサーとマイクで拾った情報に応じて、動いたり鳴いたりする。温度も変わるのかもしれないが、この程度だけなら、特段、目新しい感じはしない。
 唯一、なかなかよくできている所といえば、面的接触の感知の仕組みである。なでられたり、抱きしめられたことがわかるのだ。

 ところが、お年寄りには大好評なのである。
  → 「介護老人保健施設でのロボット・セラピー 」[動画83秒] >>>
  → 「パロの動画 」ファイル ダウンロードのページ >>>
          (C) AIST

 縫ぐるみは、ロボット機能などなくても、十分可愛い。これに、マイコンを導入し、機械的に動かせば、その効果は増すだろう。
 実際、そんな玩具や縫ぐるみもある。

 しかし、どういう訳か、その手のモノは、少し時間がたてば飽きが来る。反応がつまらないからだ。
 ここが肝要なところである。飽きさせない、反応の仕方があるのだ。
 どうすると飽きがこないのかがわかれば、ヒトの感性的反応の規則が見えてくる筈である。それは意外と簡単なアルゴリズムかもしれない。ここが肝心な点である。
 もし、そんなことがわかれば、イノベーションのタネはいくらでも見つかると思う。

 従って、価格より、「ロボット・セラピー」(4)の深化に期待したいのである。

 仕様を落として製品を安価に提供しても、飽きられないとの自信があるのなら別だが。

 “世界一癒し効果”をウリにするのも結構だが、素人でもわかるような、技術上の着想をもっと明確に示し、技術開発の奔流をつくりだして欲しいと思う。

 --- 参照 ---
(1) http://intelligent-system.jp/about-us.html
(2) http://www.chunichi.co.jp/00/ach/20060617/lcl_____ach_____001.shtml
(3) http://resource.renesas.com/lib/jpn/superh/forum/archive/04/sangyoken_paro.pdf
(4) http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2004/pr20040917_2/pr20040917_2.html


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