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2006.7.14
 
 


米国ロボット市場が開く…

 日本の知能型ロボットは技術的に高度とされていはいるが、試用も含めた普及台数ベースで考えると、おそらくたいした数ではない。
 それでも、日本は労働人口不足と本格的高齢化社会への突入で、介護分野をはじめとして、様々な分野でロボットが使われる最初の国になるだろうと、世界中で言われてきた。そのため、技術開発を続けていれば、そのうち自然に大市場が開けると思っている人が多いようだ。
 そんなもんだろうか。

 市場創造は、そんな簡単なものではなかろう。
 多くの企業家が失敗を繰り返して、どこからか市場が開け始まるというのが、たいていの産業だからだ。

 パソコンを見るがよい。
 一番多く使われると考えられていた、ビジネス用途の大中型コンピュータに繋がる端末市場がビジネスを先んじて立ち上げることはできなかったのである。玩具にすぎないと揶揄されていたパソコンが野火のように広がってしまたのだ。そのため、それを繋ぐためのネットワークができていったというのが実情で、予想とは逆である。あげくのはてに、パソコンを使ったサーバとクライアントの仕組みが、二桁高価なメインフレームや、一桁高価な専用サーバ市場を食い荒らしてしまうまでになった。
 つまり、確実なニーズに応えるべく開発された製品が流れを作ることはできなかったということ。技術開発を進めている人達は、マインドセットされており、ユーザーの琴線に触れるビジネスを立ち上げることができなかったということでもある。
 ロボット分野もそうなる可能性が無いとはいえまい。

 そんなことをつい思ってしまったのは、日本に先んじて、米国はついに市場を立ち上げた感があるからだ。そして、その流れは奔流になるかも知れない。
 そう感じたのは、DARPAが330万ドルの予算で“robo-mouse spy”の開発を委託したというニュースを見たから。(1)
 日本企業がほとんど関与していない軍事研究分野で新しいロボット技術応用が進んでいるということ。警備・保安点検分野に続々と新しい取り組みが始まるということを意味していそうだ。言うまでもなく、産業用や家庭用でもそんなニーズがある訳で、そこから新しい流れが発生してもおかしくない。

〜 iRobotの代表的提携相手 〜
Boeing Company Small Unmanned Ground Vehicle
Advanced Scientific Concepts LADAR
TASER International electronic control devices
Deere & Company rugged vehicles
Clorox Company cleaning
(Aqua Products Group) (pool-cleaning robots)
 このプロジェクトの委託先はiRobot。軍需、産業用、家庭用のすべての事業を揃えた企業である。

 同社はすでに、U.S. Army Program Executive Office for Simulation, Training, and Instrumentation から合計2,200万ドルの仕事を受注したと発表したばかり。(2)

 同社は、図のように、ここ数年急激に売り上げを伸ばしてきており、(3)米国でロボット市場が開けてきたと見てよさそうである。
 分野毎に力がある企業と、提携を進めている様子を見ても、ついに本格的な展開が始まるのではないかという感じを受ける(4)

 特に気になるのが、同社が、家庭用のお掃除ロボット“Roomba”を発売している点。(5)当たり前だが、この製品があれば、ヒトが掃除しなくてもすむというほどの能力がある訳ではない。床にものが散乱していたり、段差や電線でもあれば、上手く使えない。ここだけ見ればたいしたものではない、ということになろう。このような製品を購入する家庭はせいぜいのところ数%という見方がでてもおかしくない。
 しかし、これをどう考えるかだ。

 ひとつは、Electroluxの“trilobite”(6)ような、高額製品での展開が考えられる。家電企業として将来を考えれば、掃除機事業のなかにロボット掃除機を揃えておきたいだろうから、よくわかる話だ。現段階の機能が今一歩なら、大量生産で安価にしても市場は開く筈がないと見るのは、極く常識的な判断である。
 だが本当にそうかは、わからない。安価な最低機能の商品を、使ってみたい人が工夫すれば、新しい掃除の進め方が見つかるかもしれないからだ。「掃除」のマインドセットから解き放たれているユーザーがイノベーションを引き起こす可能性は否定できない。

 iRobotは、いかにも、そんな感覚で事業を進めているように見える。ロボット掃除機のプラットフォームに「目、耳、口」を装備したような製品“ConnectR”(7)を発売したからだ。大量生産品を使っているおかげで、価格は500ドル程度。もちろん、パソコンで操作可能で、インターネットを通じて複数の人が接続できる仕組み。
 機能自体驚くものはない。それに同様のコンセプトの製品はいままでも色々登場していた。しかし、利用方法の柔軟性を欠くていたり、高価なものが多い。部屋を走り回って、こんな機能があって、買える価格という点が重要である。

 パソコンは、最初はコンピュータ好きの若者のお遊びと思われていた。実際、当初の機器は、チャチな玩具のようなものだった。安くてコンピュータに触れることができる喜びで、そんな機器が売れていたと見てよいだろう。
 文字が読めるだけの印刷状況だし、計算能力もたいしたことない状況が続いたが、ワードスターやマルチプランが登場した頃になると、誰でもが欲しい製品になった。
 どう使うかユーザーが徹底的に研究した成果だろう。エンタテインメントや教育の商品では終わらなかった。ユーザーが新しい利用方法を次々と開発していったからである。

 同じようなことがこの分野で発生する可能性はないだろうか。
 ただ、エンタテインメントや教育用のロボットは他への転用は難しかろう。可能性があるのは、具体的に使うことができるロボットではないか。
 いかにも、そんな発想を感じさせる動きがすでに発生している。典型が、非営利クラブが開発した「キッチンクリーニングロボット」(7)。入手し易い安価な部品の集合体であるから、こんなもので使いものになるのかといった代物にも見える。しかし、使えないともいえまい。ここが肝要。
 そもそも、キッチンでどういった使い方ができるのかは誰もわかっていない。面白い使い方は、使っているうちに初めて見つかることが多いのである。
  →  ReadyBot 日本語ホーム頁 [Video映像掲載]

 日本では、この手の、利用場面でのイノベーション誘発型商品を開発しようという取り組みが余りに少ない気がするのだが。

 --- 参照 ---
(1) “US military sponsors bendy-spy bots” PC Pro [2008.6.19]
  http://www.pcpro.co.uk/broadband/news/207339/us-military-sponsors-bendyspy-bots.html
  “iRobot to Create Revolutionary New Robot for DARPA” iRobot-Press Release [2008.6.17]
  http://www.irobot.com/sp.cfm?pageid=86&id=400&referrer=85
(2) “iRobot Receives Orders Totaling $22 Million” iRobot-Press Release [2008.5.22]
  http://www.irobot.com/sp.cfm?pageid=86&id=398&referrer=85
(3) iRobot At a Glance-REVENUE GROWTH http://www.irobot.com/sp.cfm?pageid=203
(4) iRobot Form 10-K http://files.shareholder.com/downloads/IRBT/
  348808712x0x188038/00d8fcc7-0f74-4ca2-b084-e598542b606f/2007iRobotAnnualReport.pdf
(5) iRobot Roomba http://irobot.com/sp.cfm?pageid=122
(6) Electrolux trilobite http://trilobite.electrolux.com/node217.asp
(7) iRobot ConnectR http://www.irobot.com/sp.cfm?pageid=338
(8) “Kitchen Cleaning Robot Debuts ? Readybot Challenge” Business Wire [2008.2.27]
  http://www.businesswire.com/portal/site/home/permalink/?ndmViewId=news_view&newsId=20080227006114&newsLang=en
(玩具のロボットのイラスト) (C) BMC.E-ARTjapan.com → E-ARTjapan


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