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2000.9.16
 
 


動きはじめた日本語PDA市場…

 ハンドヘルドPC/PDAの国内市場が急に騒がしくなってきた。

 ソニーが2000年9月に「パーム」の自社版「クリエ」の発売を開始した。ハンドスプリングも「パーム」の自社版「バイザー」の積極的販売を進めている。ノキアが「パーム」と提携した。カシオは「ウインドウズCEのポケットコンピュータ」で頑張る。・・・といった動きがあるため、ハンドヘルドPC/PDAの雑誌記事が急速に増えた。ジャーナリズムは、PDA・ケータイ一体化も視野に入って来ており、これから急速に浸透するという論調だ。
 実際、店頭には、ファッショナブルなデザインの製品が並び、遊びにも使ってもらおうと、積極的なプロモーションが展開されている。

 「パーム」の話題が増す一方、98年頃から、「ザウルス」の影が雑誌から急速に薄れた。今迄、国内で圧勝していた「ザウルス」は追い詰められるとの発言も耳にするようになった。  パソコンのPC-9800のアナロジー的見方があるのだろう。ローカル規格は落ちこぼれ、グローバル版だけが残るという判断である。最終的には、PalmOSとWindowsCEの戦いだと言うのだ。

 しかし、鍵はOSなのだろうか。
 例えば、「サイオン」というハンドヘルド・コンピュータがある。(http://www.psion.com/revo/)馴染みは薄いが、日本語入力ソフトも搭載されている。このOSはEPOCというマイナーなもの。しかし、外部ソフト使用を除けば、特段不便な所はないという。
 ワープロ、表計算、データベースの基本ソフトは揃っており、ファイル変換機能が装備されているからだ。ドッキング・ステーションと情報共有ソフトが用意されており、パソコン連携も簡単だ。パソコンとは違い、高機能の大容量ファイルを扱う訳ではないから、ファイル互換性問題はほとんど無い。

 いまや、「パーム」、「ウインドウズCEのポケットコンピュータ」、「ザウルス」と、どれをとっても、機能の観点では、この「サイオン」仕様とほとんど変わらない。スケジュール、行動予定、アドレス帳、メモ帳という、4大基本アプリケーションで、細かな優劣比較しても意味はなかろう。E-メール、ブラウザも当たり前の仕様だ。素人で判断できる差といえば、せいぜい、接続カメラの性能差による画像の優劣位だ。(但し、動画ハンドルが可能という点では、仕様の差はある。)

 メジャーなOS利用の利点は、なんといってもソフトが揃うこととだが、これ以上に欲しい機能とはなんだろう。消費者は、マニアックなソフト、細かな調整可能なソフト、ゲームを求めているのだろうか。
 メジャーOSの「パーム」はソフト開発者を誇り、ソフトの品揃えが違うという。確かに、英文系はその通りだが、日本でも同じになる根拠はあるのだろうか。アプリケーション・ソフトの数が多いことで、機器が選ばれるのだろうか。
 あるいは、皆が持っている機器は、赤外線相互通信による名刺やデータ交換ができるから惹かれるのだろうか。
 これらが、たいした利点でないなら、一番安価な製品のシェアが大きくなるだけとはいえまいか。結果的に、その機器に搭載されたOSのシェアが高くなる訳だ。

 -----といった議論が、盛んである。


 しかし、「パーム」が騒がれているといっても、目新しい製品ではない。IBMの「WorkPad」は早くから上市していた。ところが、それ程浸透しなかった。にもかかわらず、今度は、浸透するという根拠は曖昧だ。
 日本で「パーム」普及が進まない理由は、どうみても、入力方法だ。手書き入力「Graffiti」はあくまでもアルファベットが対象である。英文なら実用性は高いが、日本語入力は大変な作業だ。といって、スクリーン・キーボードでの長文入力も苦しい。(尤も、ケータイの文字盤で片手入力できる世代は、ファッショナブルなら「苦」とも思わない可能性もあるが。)
 長文入力が必要なユーザーなら、手書き入力の手帳型よりキーボード一体型を選ぶだろう。

 ところが、日本ローカル品と揶揄されている「ザウルス」は違う。優れた手書き日本語入力の仕組みが搭載されている。その上、メモ自体をGIFファイルで記憶させる仕様になっている。この点からいえば、唯一の本格的日本語用手帳といえよう。ソフト開発力が弱体な機器メーカーが多いなかで、光る。(といっても、キーボード一体型と同じような価格帯商品に力を入れたのでは、この技術の威力は限定的だが。)

 本当は、もう1つの大きな違いがある。小さな画面で文字情報を扱うのだ。フォントと文字表示技術で、読み易さには、相当な格差がある。本来、決定的な問題なのだが、語られないことが多い。

 -----といった見方もあるが、PDAの発展性を考えると、ネットワーク接続の新しい機能開発が決め手かもしれない。


 製品機能云々の時代は終わりを告げ、すでに、機器専用サイトの提供機能で勝負する時代に突入している可能性もある。
 サービス内容や、機器の機能向上に繋がる仕掛けの巧拙で、機器の価値が決まる。製品仕様は大差なくとも、利用可能なサービス内容が違えば、まさに天と地の差が生まれる。一端、この流れが始まれば、コンテンツを供給したい企業がメジャーな機器に集まる。この動きが、いつ本格化するのかが、一番の問題といえよう。
 「ザウルス」の専用サイトサービスが、こうした流れに乗って飛躍することになるのだろうか。あるいは、競合が、これを凌駕する魅力的なサービスで挑戦し成功を収めることになるのか。いよいよ、競争が始まる。

 -----この競争を通じて、是非とも、時代を切り開くような、魅力的なコンテンツ・サービスを創出して欲しい。


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