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2000.10.4
 
 


大学は産業界に近寄れるのか…

 ベンチャー・ビジネス・ラボラトリーやTLOといった、大学の知的リソーシスを産業に活用しようという動きが急だ。

 この仕組みは米国制度を真似たものだ。従って、米国での成功要件が欠けていたら、遅かれ早かれ、無理が生じる。

 こうした場合、制度スタート後、暫くして問題が生じる。ところが、そのような声が余り聞こえてこない。運営「絶好調」との報告を出したいため、問題指摘を避けていなければよいのだが。
 もしも、そのような姿勢なら、将来性は無い。雪達磨が坂道をころがるように問題が大きくなり、深刻化した時点では手の施し様がなくなる。問題は若い芽のうちに摘み取る必要がある。

 すくなくとも、すぐに表面化しそうな問題は特許化促進策だろう。

 特許明細を作成して申請手続きのコストは30万円から40万円はかかるだろう。小さい数字のようだが、特許の数を増やしていく制度なのだから、「金」は出ていく一方だ。
 当たり前だが、ロイヤリティ収入が得られるのは質の高い特許だけだ。机上の計画なら、簡単に収支バランスは描けるが、質の高い特許が生まれる保証はない。収入が予想を下回れば、政府の補助金や民間賛助金(入会金や参加費)のばらまき機関化する。

 今までの特許化件数を見ればわかるように、大学はビジネスの視点で技術を考えたことなどない。地方産業振興の役割を担おうという大学も極めて少ない。
 こうした環境下では、魅力的特許が出る可能性は薄い。必死になって、「儲かる」特許を考えない限り、構想倒れだ。そうした危機感ある運営が行われているだろうか。

 「アメリカでは大学の先生は・・・ビジネスのセンスを常に養っている。ところが、日本では『ビジネス音痴』なところがある。」と著名な先生も語っている。(三枝武夫:「大学人とベンチャービジネス」,高分子,49(10),697, 2000)「産業界との懇談会から始める。」時間感覚でビジネスセンスを養成したのでは、今の制度を支えきれまい。

 日本の制度は理想論である。大学人全員を対象した仕組みに力を入れても、成果があがる可能性は低い。

 産業技術を知り、ビジネスセンスが豊かな先生は少なからず存在する。この人達が自由に動けるような仕組み作りが鍵なのである。産業界が大学の知恵を生かそうと、このような先生と共に動こうとする際の邪魔を排除するだけでも、成果は次々と生まれる。
 新導入制度が、その方向に働く保証は無い。


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