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2002.7.23 |
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危険を孕むデジタルTV戦略…2002年7月、「ブロードバンド時代における放送の将来像に関する懇談会」の中間報告が発表された。これによれば、三大都市圏で、2003年末までに地上波デジタル放送を開始し、そのうち50%以上を高精細度放送とする。(http://www.soumu.go.jp/singi/b_kondan/b_kondan0717.html#a7)この方針に合わせて、メーカーは衛星・地上波デジタル共用受信機、高精細度放送対応の低廉な受信機の市場供給することになる。2011年にはアナログ放送を停止するのだから、それまでにすべての設備とテレビが一新される。政治主導で大市場勃興を実現しようとの目論見である。 政府のデジタル転換支援も得られるから、放送設備・テレビメーカーは大喜びだ。特に、デジタル放送チップ開発に全社資源を傾注してきた企業は一安心だ。 しかし、この動きにより、日本と米国は違う方向に歩み始める可能性が高い。 米国では、2003年に全局が地上波デジタル放送を開始し、2006年にはアナログ放送廃止の計画だった。ところが、開始時点の2002年にして、大半の局で準備ができていない。投資しても、経営の目処が立たないのだから当然だ。日本と違って、受信機自体ほとんど普及していないから、この先も事態好転の可能性は薄い。誰が見ても2006年の転換は無理である。 こうなると、米国では、期待は、テレビからパソコンに一気に移る。もしも、米国でデジタル放送が立ちあがらなければ、テレビ機器市場は衰退しかねない。 デジタルテレビのメリットは消費者から見れば、「高画質」以外にない。それだけなら、ライブの必要さえ無ければ、放送である必要はない。デジタル機器ならテレビでなくともよいのだ。ところが、いままでは、パソコンは、能力が不足していて、とてもテレビの高画質とは競争できなかった。それが、CPUの性能向上で、急遽ライバルとして登場してきた。 といっても、技術的にはグラフィックの能力が不足している。このボトルネックを克服さえすればパソコンが本命になる可能性がある。米国では、すでにパソコンを用いたビデオ作成・編集ソフト・ハードの研究開発が急速に高まっている。これは、高画質デジタルテレビ放送とは無縁な動きである。 よく考えれば、デジタル放送成功の鍵はコンテンツにある。アナログハイビジョンの失敗を考えればわかるが、重要なのは放送局の装置や受信機ではない。映像を作成・編集する放送内容制作者が、高画質で魅力的なソフトを提供できるかが普及の決め手となる。 放送局の施設はデジタルになっても、放送内容制作現場が簡単にデジタル化できるとは限らない。下手をすれば、ソフト制作現場がアナログのままで、デジタル放送が始まる。こうなれば、デジタル放送で画質は良くなるどころか、現行アナログ放送より悪化しかねない。これは危惧とも言えない。 現実は極めて厳しい。専門家向けのデジタル編集機器は大型で高価なものがいくつかあるだけ。消費者向けデジタルテレビは廉価になるだろうが、今のままなら、安価な専門家用編集機が多種登場するとは思えない。少なくとも、そのような機器の開発に賭ける米国企業はいまい。 業界状況から見て、ソフト制作側が、数千万円もする高画質対応の大型機器をすぐに購入するとは思えない。特に、挑戦的企画を生み出す零細業者は投資などできないから、別の業態に流れざるを得ない。こうした人達に、パソコンが新ビジネス機会を提供するかもしれない。 こうなると、放送とパソコンのどちらが魅力的な内容を提供できるかの競争になる。日本企業は放送の将来性に賭け、米国企業はパソコンの将来性に賭けることになる。 侏儒の言葉の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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