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2002.9.8
 
 


技術経営嫌い…

 日本のトラック産業はどん底だが、なんとか4社体制 (日野自動車、三菱自動車工業、いすゞ自動車、日産ディーゼル工業) が保たれてきた。このままでは立ち行くまい、との指摘がなされてきたが、抜本的な動きに結びつかなかった。(週刊東洋経済2002/06/29「国内トラック4社体制の崩壊目前」、週刊エコノミスト2002/06/25「国内トラック4社体制の崩壊目前 」、日経ビジネス2001/05/07「トラック業界、消耗戦−トヨタが子会社化した日野の攻勢で乱戦必至」)

 ついに、2002年8月14日に、大きな動きがおきた。いすゞが、GMと金融機関から2000億円の支援を受け再建する、と発表したのである。(http://www3.nikkei.co.jp/kensaku/kekka.cfm?id=2002081407198) 2005年には累損2100億円を一掃する計画だという。

 しかし、その内容には驚いた。

 基本は、現行事業をそのまま続行する方針だ。財務リストラと、経営効率向上だけで、経営の健全化が可能と考えているようだ。(http://www.isuzu.co.jp/company/info/2002/08_14vp3.htm)

 国内のトラック需要はピーク時の半分以下であり、収益性の高い大型車は特に売れ行き不振である。海外市場もあるが、高収益市場は消失しており、利益捻出は極めて難しい。環境規制の登場で市場が活性化しない限り、今後もこの状態が続くと見るべきだろう。

 この状況で、社内改革だけで生き残れるとは思えない。トラックアセンブル事業分野で、優位技術があるとは思えないし、改善による生産性向上を続けても、他社を凌駕できる根拠もないからだ。  トラック事業の問題は、すでに1社で解決できる次元を越えている。低い稼働率が続く限り再生は困難である。生産能力の余剰削減は不可欠だ。国内を見れば、明らかに1社分の削減が必要である。この課題を解決しない限り、前進はありえまい。

 従って、4社体制を崩す再建策の登場を予想したが、全く逆だった。

 トラックアセンブル事業と北米のRV事業を続行するために、明らかに競争力があるディーゼル・エンジン事業をGM傘下に移す。米国やポーランドのディーゼルエンジン生産会社はほとんどGMの一部になるようだし、(出資比率60%) ディーゼルエンジンの開発部隊は合弁の別会社に移行する。

 いすゞをはじめ、日本企業はディーゼル・エンジン技術開発では先行している。生産技術も高水準だ。エンジン産業に、技術で戦う時代が到来すれば、勝者になれる可能性は高いのである。
 現在、乗用車の4割近くがディーゼルエンジンを搭載している欧州を先頭に、高燃焼効率のコモンレール方式エンジンへの移行計画が進みつつある。(蓄圧容器に高圧燃料を貯え、電磁弁を使ってシリンダー内に燃料を噴射させる方式) これは、技術優位な企業にとって、世界に飛躍できる千載一遇のチャンスといえよう。しかも、いすゞは、次期排出ガス規制をクリアできる「超クリーンディーゼルエンジン」まで開発済みだ。(http://www.isuzu.co.jp/company/museum/tms2001/engine.htm)
 もともと、いすゞは、「ディーゼルエンジンの質・量ともに世界No.1メーカーを目指し」「先進技術を結集して、経済効率が高く、しかも環境負荷の少ないエンジンの開発に取り組んで」きた。(http://www.isuzu.co.jp/company/museum/tms2000/1.htm)

 従って、エンジン事業なら、戦略を立て直し、競争力が発揮できる事業構造に変えれば、世界市場で十分戦える筈だ。ところが、この事業はいすゞの中核ではなくなり、GM側に移転する。  その一方で、優位な技術もなく、今後も厳しいと見られるトラックアセンブル事業に貴重な財源を投下して生き残りを図る。

 理解し難い動きだ。おそらく、技術を活用した経営はしたくないのであろう。


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