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2002.12.12
 
 


白色LED開発コンソーシアムの意義…

 発明者と企業の所有権紛争や、企業間の特許紛争が大きく報道され、青色発光ダイオード(LED)が有名になった。
 これらの発明は、すべてGaN(InGaN)基板の紫外〜青/緑色域発光技術に関するもので、青色レーザーと同じ技術体系に属している。光関連産業の心臓部に当る技術分野だ。たまたま紛争が発生したというより、紛争多発が当然の分野といえよう。

 この分野は、GaN系の物性研究力と、製造スキルで勝負がつく。特許は、この結果にすぎない。
 もちろん日亜化学工業は世界のリーダーだが、類似技術を磨き続けてきた豊田合成や、1990年代初頭に緑色LEDを発表したCreeやOsram Opto Semiconductorsにも豊富な技術蓄積がある。[CreeとOsramが使う基板はサファイアでなくSiCなので若干の違いがある。カリフォルニア大サンタバーバラ校中村修二教授はSSLDC(Solid State Lightning and Display Center)を管轄している。]

 この重要技術分野で、日本企業の研究開発コンソーシアムが立ちあがった。「21世紀のあかり計画(高効率LED開発)」である。(NEDO 1998年度〜2002年度)

 このプロジェクトは、日亜化学工業が1996年に白色発光を実現したため、企画されたものといえる。LEDは寿命は長いし(10万時間程度)消費電力も蛍光灯の半分なので、照明のLED化を狙ったのである。
 白色LEDは、商用化直後から、活用がすぐに進んだことからみても、間違いなく将来有望な照明光源といえる。[代表的応用:数個〜20個を実装した携帯機器用液晶パネルバックライト/スキャナ光源、自動車速度計用バックライト等]
 しかし、ローソク程度の明かりで100円を越すようでは、実用性が低いから、まずは高効率発光に挑戦すべし、との論理で始まったのである。
 金属系材料研究開発センターがまとめ役となり、多数の企業と大学で協同研究体制を構築した。2002年にはプロトタイプが発表された。[発光機構(アジレントテクノロジー、山口大学)、エピタキシャル(昭和電工、三菱電線工業、古河電気工業)、基板(並木精密宝石、住友化学工業、ジャパンエナジー、住友電気工業)、蛍光体(化成オプトニクス)、発光ダイオードパッケージ(スタンレー電気)、照明器具(三菱電機照明、オムロン、山田照明)](http://www.jrcm.or.jp/news/news9.htm)

 ところが、メンバーには、上記の技術リーダー4社が入っていない。しかも、日亜化学工業は、GaN/InGaNに関係する特許をライセンスアウトしない方針である。[シチズン電子へのライセンスアウトに基本部分は含まれていない。Osramとはクロス契約である。]
 しかし、このプロジェクトは非GaNへの挑戦ではない。[非GaNの例:ZnSe単結晶基板は青色発光し、厚みや材料調整で黄色光も混ざるから、白色化可能---住友電気工業の特許]

 ということは、技術リーダー4社への対抗プロジェクトという位置付けになる。目的からいって、GaN基板上の青色/紫外系LEDの安価製造法や、高効率化技術で、圧倒的な技術蓄積を誇る先発と競争することになる。

 ライセンス皆無で、後発ができる挑戦とは、特許に抵触しない周辺技術開発になるのが普通だ。例えば、YAG系 (イットリウム・アルミニウム・ガーネット)以外の新高効率蛍光体開発である。もっとも、この程度の目標なら、紫外LEDを購入して、新蛍光体と組み合わせる企業内開発の方が効率がよい筈だ。実際、豊田合成は東芝の蛍光技術を活用していると言われているし、松下電器産業は1999年から豊田合成のLEDで白色製品を出荷している。2002年12月にも、星和電機がカルシウム等を母材とした黄色蛍光材料で白色発光させる製品を発表している。(http://www.seiwa.co.jp/)

 技術リーダーを巻き込めないのなら、このような、狭い技術分野の開発しかできないのは、自明だ。
 にもかかわらず、製品の上流から下流まで企業を集めて研究開発コンソーシアムが編成される。このようなプロジェクトにどのような意義があるのだろうか。


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