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2002.12.26
 
 


自動車産業の転機…

 経済低迷のなか、自動車産業だけが絶好調に見える。

 しかし、この産業は岐路に立たされていることを見逃すべきでない。

 90年代は欧州統合が追い風となり、自動車購入意欲が欧州で旺盛だった。その上、米国経済が好調で高水準の購買が続いた。特に、米国の売れ行き状況は、販売台数の高止まりと、RV車志向が明らかだから、明らかに長期的にブームが続いていると見るべきだろう。
 この状況が、この先も続くことは考えられない。

乗用車 トラック/バス 合計
1998 39,756,760 16,499,045 56,255,805
1999 40,835,487 17,223,434 58,058,921
2000 39,538,157 16,231,844 55,770,001
 世界生産台数統計(OICA)を見れば一目瞭然だが、市場は飽和している。(http://www.jama.or.jp/world/world/world_t2.html)
 これに対して、生産能力は過剰である。どう見ても1000万台〜2000万台の余剰能力があると思われる。資本効率が急速に低下している産業なのである。

 にもかかわらず、資本投下が進んでいる。熾烈な生き残り競争のため、以下のコストが嵩んでいるといえよう。
 1つ目は、伸びる市場での生産体制構築投資だ。貿易障壁のため工場投資せざるを得ない場合もある。
 2つ目は、モデル導入費用削減のための投資だ。品質/機能の差がなくなったため、スタイルとブランドでの勝負となり、従来型の効率競争では効果がないのだ。
 3つ目は、次世代自動車開発競争である。

 このような状況に入れば、産業は大きく変わらざるを得ない。このような時は、新しい事業構想に合わせ、研究開発の仕組みを大胆に変えることで、飛躍実現のチャンスが生まれる。
 ところが、こうしたチャンスを探そうとしない企業が多い。
 旧来の成功パターンで頑張れば、将来がひらけると考えているのだろう。

 特に重要なのが、フルライン化における技術優位性発揮構造と、外製モジュールの新技術取り込み開発プロセス、である。

 日本企業は、様々なカテゴリーの強力ブランドを揃える戦略ではなく、単純なフルライン戦略を採用しがちだ。シェアが極めて低いにもかかわらず、フルラインを追求する企業が存在する位である。
 漫然としたフルライン化では、経済規模のメリットは僅少であり、シナジー効果はほとんどでない。しかも、コア技術の使いまわしも奏効しないことが多い。従って、技術マネジメント技術体系の巧拙で競争力が変動する可能性が高いといえよう。

 又、部品業界のスーパーサプライヤーの登場によって、こうした企業の技術をどう取り込むかで、競争力が左右されるようになってきた。Win-Winの関係になるから、系列関係にとらわれず、力のあるサプライヤーとの取引を優先せざるを得ない。そうなると、作りこみ業務より、モジュールの独立性とモジュール間の干渉制御方法の確立が重要となる。新生産方式のモジュールが生まれるような、研究開発組織が必要となる。各技術の雄である企業が集まって、新しい部品を生産する可能性が高い。このためには、系列外にもオープンだが、限定企業による共同開発環境を車メーカーが用意する必要がでてくるといえよう。

 要するに、自動車産業は転換期であり、各メーカーも又転換期なのである。現在の勝者が、明日も繁栄できるとは限らない。


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