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2003.1.4
 
 


燃料電池車納車式の意味…

 2002年12月、トヨタ自動車とホンダの燃料電池車の納車式が首相官邸で行われた。小泉首相はご機嫌、と報道された。(http://www.e-mobi21.jp/news/02120201.html)
 いかにも、政府が燃料電池車普及を支援しているように見える。しかし、イベント以外は、月額数百万円のリース代金と官邸内の水素供給装置設置だけだ。驚くことに、その後、何の施策も発表されない。現政権は、この分野で、イニシアティブを発揮するつもりがないようだ。支援者の顔をしているが、実態は逆なのかもしれない。

 しかも、こうした政治状況を、マスコミが支援している。1台が未だに億円単位の製品で価格低下には時間がかかるから、本格的な普及は相当先、と報道する。その一方で、「頑張れ日本メーカー」といったセンチメンタリズムを振り撒く。政治への要求など見たことがない。

 燃料電池車は、インフラが整い、消費者さえ望めば、急激な価格低下が可能な商品である。現行価格の指摘はピント外れだ。

 自動車用燃料電池なら、寿命5,000時間が実現できれば、市場性は十分ある。このレベルなら、現在の技術水準を考えれば、難しくない。しかも、燃料電池は自動車以外にも大きな市場がある。寿命4万時間で、排熱回収の温水タンク付き製品が、10万円になれば、電化製品として家庭市場が開き始めるだろう。構成要素と製造プロセスを考えれば、この目標も高いとはいえない。市場が開けば、価格低下スピードは凄まじいものになろう。(一方、競合技術のマイクロタービン+コジェネは精密機械部品の塊だから、このレベルの価格実現は極めて困難だ。)高分子膜利用の燃料電池は市場の期待に十分応えられる製品なのである。

 従って、大量生産が可能な条件さえ揃えば、燃料電池車の爆発的な普及はあり得る。現在の価格が高いことは、普及の困難性を示している訳ではない。普及のバリアは価格ではなく、燃料供給体制の方である。
 こちらは、自動車メーカーや電機製品メーカーだけでは対応できかねる。日本は、もともと規制ばかりであるし、エネルギー産業が燃料供給体制構築に協力しない可能性も高い。こうした障害を取り除くのが、政治の役割の筈だ。

 日本には、長距離幹線パイプラインさえないのだから、今のままなら、水素ボンベ搭載の燃料電池車などいつまでたっても走れまい。
 本気で燃料電池車普及を支援するつもりなら、まずは、水素燃料供給体制構築の決意を披瀝し、障害に立ち向かう姿勢を明確にすべきである。

 インフラが全くないのだから、水素貯蔵/運搬方法のイノベーションを支援するのが当たり前と思うが、こちらも動きがない。
 日本発新技術があっても、そしらぬ顔である。新技術の評価研究を短期間で一気に立ち上げ、注力すべきかの判断を早期に下す必要があると思われるが、一般の注目研究の扱いだ。
[シクロヘキサン/ベンゼン転換で水素の貯蔵運搬を実現する技術を北海道大学触媒化学研究センターの市川勝教授が開発](http://www.museum.hokudai.ac.jp/newsletter/05/news05-07.html)
[2002年に国土交通省が小規模な「北海道における燃料電池関連技術の実証実験」を施行]( http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g20329d05j.pdf)

 要するに、政府の指針とは、海外と比較して「遅れるな」というものといえよう。納車式も、カリフォルニア州に遅れたくなかっただけだろう。


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