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2003.2.15
 
 


耐性菌問題…

 結核、マラリアといえば過去の病のイメージがあるが、世界で見れば、撲滅どころか、未だにメジャーな疾病のままだ。(http://www.who.int/entity/whr/2002/download/en)
 世界の人口の8割以上を占める開発途上国では、未だに感染症が猛威をふるっている。両者共に、毎年100〜200万人が死亡していると言われている。

 ところが、結核治療薬は未だに1960年代のもの。
 マラリアも同様である。しかも、かつての特効薬クロロキンにはすでに広く耐性が発生している。
 本来なら、抗生物質同様、新薬開発が行われるべきだが、そうはならない。
 患者数が膨大でも、医薬品市場の対象となる支払い余裕ある患者数が余りに少ないためだ。投資に見合った収益が得られないから、製薬企業は研究開発に踏みきれないのだ。

 このまま放置すると、どうなるだろう。最悪のシーンを考えてみよう。

 温暖化が始まったとする。マラリアが熱帯地方から先進国地帯へと徐々に広がる。効く薬が無いタイプが蔓延する。
 開発途上国では、エイズ感染が益々増える。このため、結核発症が急増する。しかも、不適切な治療が多いから、耐性が一気に高まる。薬もワクチンも効かない結核が広がる。このような耐性結核菌が先進国にも飛び火し始める。結核が不治の病になる。
 ・・・確率的に高いとはいえないが、ゼロではない。

 免疫学の進歩は素晴らしいと語る人が多いが、感染症に実効性あるワクチンを開発する手法は旧態依然たるものだ。新技術は生まれているが、その有効性は未確認のままである。
 従って、強い耐性を持つ菌が先進国に上陸してきたら、今のところ防御策はない。
 特に恐ろしいのが、結核菌だ。すでに、エイズ患者では多剤耐性が報告されている。こうした耐性菌がいつ先進国に流入してもおかしくない。

 非常事態を予想し、対応策を考えるべき時代に入ったといえるのではないか。

 といっても、現時点で、実効ある耐性菌流入防止策はないから、開発途上国の感染症撲滅策しか打ち手がない。従って、エイズ・結核・マラリア対策資金供与は不可欠といえる。 (http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/news/news_2/020322.html)
 先進国が忘れてならないのは、この資金供与は最貧国への経済援助とは違い、自分達を防衛するための投資という点だ。


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