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2003.3.13
 
 


ローフード思想の勃興…

 米国でローフード(Rawfood)が流行っているそうだ。(http://www.foodmarketexchange.com/datacenter/news/dc_ns_index_detail.php3?newsid=14149)

 といっても、玄米菜食主義とは違うし、刺身主体の食事でもない。ポイントは、食材の高温処理を避けることにある。生食ライフスタイルを推奨する運動が始まったとも言える。(http://journalism.smcvt.edu/echo/10.30.02/lifestyles.htm)

 もっとも、生食は、家庭では簡単に実現できないから、ファッショナブルなローフード・レストランが繁盛しているというのが実態と思われる。(例えば、http://www.quintessencerestaurant.com/)
 ローフード・レストランが注目を浴びているのは、予想より食事が美味しい点にありそうだ。しかも、珍しい食材を使っていない点も、支持される要因になっているようだ。
 例えば、用いている調味料は、味噌、生醤油、石臼轢のエキストラバージンオリーブオイル、リンゴ酢、等だ。健康増進のための添加物がある訳ではない。使われる食材も、海草、もやし、ナッツが多用されており、入手しやすいものが多い。
 レシピには、見かけはパスタだが、実際はズッキーニを剥いたものがあったり、ナッツと発芽穀物のハンバーグが登場している。頭で考えると違和感を感じるが、食べると美味しいので、印象が一変するらしい。調理技術も優れているようだ。

 しかし、顧客は味に感激している訳ではない。ローフード・レストランの考え方に共感を覚えているのだ。
 食材に熱を加えなければ、有用物質を壊さずに摂取できる、との思想を支持しているといえよう。

 本格的なローフード・ファンになると、外食だけで終わらないらしい。自宅でも、生ジュースや大昔の製造方法のパンを食すようになるという。実際、自然食品店は、発芽小麦を石臼で轢いた上で、捏ねて天火干しで製造したパンの販売を始めている。
 もちろん、ローフード派の集まるサイトも活発化しているようだし、ホームページの内容も充実してきた。(例えば、http://www.rawfood.com/)
 米国社会は、一端始めると、とことん追求する人が登場する傾向がある。このため、ローフード愛好者のなかには、キッチンから火力を外す極端な人までいる。このような情報が流れると、特定の人達の動きに映りかねないが、社会の底流で、より健康なメニューへの移行が始まっている、と言えそうだ。
(ローフードだけでは欠乏しがちになる成分もあるし、熱調理には栄養面のポジティブな効果もある。コーヒーを飲まない生活が可能とも思えない。ローフード万能思想が蔓延する訳があるまい。)

 健康への関心が高まっているが、米国のファーストフード市場は相変わらず巨大である。ところが、その一方で、サプリメント市場も大きく育ってきた。便利で、それなりに美味しい、安価な食事を捨てる気はないが、食で健康を維持したいのである。
 欧州でも、揚げ物の危険性を指摘した記事がガーディアンに登場しており、ローフード普及への追い風も吹いてきた。(http://www.guardian.co.uk/g2/story/0,3604,774677,00.html)
 この状態で、ローフードの効用が広く知られれば、底流の動きが表面化して、一気にブーム化するかもしれない。

 米国ではローフードは目新しいコンセプトだろうが、よく考えれば、日本食ではよく見かけるパターンだ。しかも、日本では、様々な分野で無菌/制菌技術が活用されている。日本は先進国である。
 従って、日本の食品企業にとって、一大ビジネスチャンス到来と見ることもできよる。成功すれば、食品産業の地殻変動に繋がる可能性さえある。
 しかし、日本では、未だに、ローフード・レストラン開店の噂も聞かないし、ローフード食品展開の試行の動きも見かけない。挑戦する気概を持つ起業家はいないのだろうか。
 21世紀は、確実な将来動向などあり得ない。流れが見えてきてから真似したのでは、遅すぎる。流れは、自ら作るしかない。
 ローフード・ビジネスはこうした時代の典型といえよう。成功の鍵は、思想を共有するコミュニティ作りなのだ。

 日本企業はこのような展開を避け続けてきた。研究開発部門や事業開発部門は、トレンドに乗ろうとするが、トレンドを作る気はない。
 新市場を自分の力で切り拓くのではないから、いくら早く始めても、結局は出遅れる。しかし、生き残りのためには、死力を尽くすしかない。
 思想なくして、トレンドに乗ろうと頑張ればどうなるか。おそらく、酵素が失格している「低温処理」製品を開発することになろう。・・・そして、信用喪失。

 悪循環は早く断ち切るしかない。


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