↑ トップ頁へ |
2003.4.1 |
|
|
Back to Natureの動き…「Back to Nature」という、洒落たタイトルの記事が、MIT/Technology Review誌2003年3月28日号に掲載された。(http://www.technologyreview.com/articles/wo_shukla032803.asp)自然界に学ぼう、との主張だけでは新しさは感じないが、新しい科学分野「Biomimicry(生物模倣技術)」が勃興している、と語れば、アカデミズムも産業界も関心を示す。 ブームを起こそうと図っているな、と揶揄する研究者もいるが、成熟した社会において、一番実用性がある科学とは、このような分野かもしれない。 といっても、バイオミメティック材料研究が役立つというよりは、研究を通じて明らかになる「評価の視点」が様々な産業の新製品開発に影響を与えそうだ、という視点での話である。 [エコロジーを最重要視する人達が、有限な資源を活用している自然の生態系に学ぼうという運動を繰り広げ、「Biomimicry」という用語を多用するので、様々な概念があり、注意を要する。有名な本--Janine M. Benyus:“Biomimicry: Innovation Inspired by Nature”,Harpercollins,1997] 確かに、視点を変えれば、モノ作りプロセスでイノベーションが生まれる可能性が高い。おそらく、この技術の有効性が最初に認められるのは、こうした分野だろう。 しかし、「評価の視点」が明らかになってくると、商品開発にも大きな変化がおきるのではないだろうか。 先進国では、ほとんどの市場は成熟している。全く新しい効能による新市場創出も少ない。 技術の進歩だけは著しいため、世代替わりは激しいが、消費者にとってみれば安価化や高度化にすぎず、琴線に触れる商品はほとんど登場しない。 今や、新機能付加は新商品上市の前提条件にすぎず、成功の鍵とは呼べなくなっている。ヒットの秘訣は、「スタイリッシュ」感と考えた方がよい。 従って、商品開発における重要スキルは、「スタイリッシュ」なデザインと言える。 ところが、デザインについては、研究者/エンジニアが発言できない状態が続いている。もともと感覚論は苦手であり、今からスキル向上も図りようがないと諦めているからだ。しかも、市場情報も持ち合わせていないから、マーケッターの言うなりである。 なかには、どう見ても自称にすぎないクリエーティブな人達が、商品の「スタイリッシュ」性を判断している企業もある。特に、技術志向が高い企業では、もともと研究者/エンジニアが実質的にマーケッターも兼ねていたからこの傾向が強い。 これでは、折角の技術力が生かせない。 しかし、「Biomimicry」が登場すれば、大きく変わる。 研究者/エンジニアが、エレガントな全体構造の提起や、ヒトの五感に訴える商品コンセプト創出で、中心的役割を果たせるからだ。 いい加減な流行予測や、論旨がはっきりしないライフスタイル論から、論理思考に変わる。「スタイリッシュ」性を、論理の世界で議論できるようになる。 まだ、夢の世界ではあるが、記事には先進的企業が活用し始めた例が引用されている。イノベーターは思ったより早く「Biomimicry」利用を始めそうだ。 侏儒の言葉の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
|
(C) 1999-2004 RandDManagement.com |