↑ トップ頁へ |
2003.5.30 |
|
|
ソニーは普通の会社になるのか…2003年5月28日、ソニーグループ2003年度経営方針が発表された。 (http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/200305/03-023/)グローバルメディア&テクノロジー企業としての地位確立を目指すとのことだ。 全社でネットワーク型ビジネスを目指す方針は消滅したようだ。エレクトロニクス事業の従来型商品群が再興の中心に位置付けられている。独自の技術・デバイスに支えられた強力商品群を投入し、市場におけるリーディングポジションの回復を目指すことになる。といっても、ほとんどが既存商品ラインの延長である。防衛的な方針で、手詰まり感が漂う。 こうなることは相当前からわかっていた。エレクトロニクス部門の低収益性はずっと続いており、ゲーム部門の収益が経営を支え続けてきたのである。エレクトロニクス部門の収益構造を転換できない限り、この問題は解決できない。 ソニーも、他社よりは遅れたが、日本のモノ作り企業が抱えている典型的問題に直面したといえよう。 そして、残念ながら、ソニーの経営者も特効薬は持っていなかった。キーデバイスの内製化による収益源確保と、大型最終製品へのシフトといった、変わり映えしない処方箋が提示されたのである。この方針により、エレクトロニクス分野での開拓者イメージは消え去った。これからは、イノベーション追求ではなく、極く普通のメーカーとして、堅実な道を歩むつもりなのだろう。 換言すれば、時代を切り拓くイノベーション創出型から、厳格な財務管理型への変身と言えそうだ。技術マネジメント力で優位に立つことを諦めたのだろう。 変身の象徴は、ビデオカメラ事業の強化方針だ。すでに圧倒的な地位を確立しているにもかかわらず、さらに絶対的な地位を目指す。はたして、そのような展開に意味があるだろうか。もしも技術で戦う方針なら、新技術投入による周辺市場の開拓とか、融合型商品の投入といった挑戦を図るのが普通だ。しかし、挑戦すれば短期的には収益を低下させる。挑戦より、今のキャッシュなのだろう。エンタテインメントの鍵を握る技術分野だと思うのだが、長期的な展開シナリオには組み込まれていないのかも知れない。 市場が伸びているPDP/LCDテレビについては、No.1ポジションを目指すという。しかし、キーデバイスのパネルは外部調達だ。大市場の廉価セグメントで価格競争力を発揮できる技術的根拠があるとも思えない。 ほぼ伸びが止まっているパソコン市場では、全機種にDVD搭載という程度の新しさで飛躍を賭けるらしい。しかも、ネットワークサービスとの融合を目指すという。プラットフォーム化する程の高シェアを実現している訳でもないのに、端末機器事業とネットワークサービスの融合を図るのだ。ネットワーク技術で優位性があるとも思えないから、収益向上に繋がるとは思えないのだが。 携帯電話に至っては、強力デザインで戦うらしい。次世代の携帯市場開拓に賭ける意欲は感じない。 どこを見ても、統一的な技術マネジメント思想が感じられない。しかも、こうした商品群全体の将来像も提起されなかった。テクノロジー企業のエレクトロニクス事業の方針とは思えない。ソニーは変わったのだ。 といっても、挑戦を避けている訳ではない。大型新商品の投入や、将来に向けたホームサーバ用次世代プロセッサ利用の動きが始まっているからだ。 しかし、これが新産業構造の構築を目指す動きなのかは、判然としない。高機能な新商品とはいえ、DVD/HDレコーダーとゲーム機が合体しただけの製品かもしれないのだ。もしも、「ビデオデッキやビデオカメラのような看板商品」を目指すだけなら、従来型ビジネスの踏襲にすぎない。 そうなると、スリム化して普通の会社になるしかあるまい。 侏儒の言葉の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
|
(C) 1999-2004 RandDManagement.com |