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2003.9.9 |
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理解できない放送政策…放送開始1000日目で視聴者1000万世帯との掛け声で始まったBSデジタル放送だが、結局のところ、受信機器は219万台しか出荷されず、目標の2割をようやく越したという状態だ。(http://www.bpa.or.jp/daisu/daisu.html) 膨大な投資にもかかわらず、遅々たる普及で、これではとてもリターンどころではなかろう。 特筆すべき新番組もないのだから、予想通りの結果と言えよう。 しかも、インターネットの規格と違う仕組みを取り入れ、双方向通信のメリットも活かせないようにした。 データ放送のような新機軸の魅力を奪う仕組みをわざわざ作るのだから、普及が進まないのは当然だろう。 さらに、12月にはデジタル地上波放送が始まる。姿勢が変わった訳ではないから、再び、同じことを繰り返す可能性が高い。見返りが乏しい投資を挙行したことになる。 もともと、TV放送のチャンネル数を増やすだけなら、現行CSかCATVで十分である。 すでにCS視聴契約数は785万に達している。(世帯普及率では16.7%) (http://www.cab-j.co.jp/frame2/pdf/4-5.pdf) 苦闘が続いたスカパーも2003年4-6月期から黒字体質への転換が進んでいる。 (http://www.skyperfectv.co.jp/skycom/frame/fr_zaimu12.html) ようやく多チャンネル時代が動き始めたといえそうなのだ。 ところが、ようやく、多チャンネル化が軌道に乗り始めたところで、デジタル化である。番組提供業者が力を発揮できないように、現行の放送局中心の体制に戻そうとの試みと見ることもできそうだ。 歴史の流れに逆行しても、現行放送業者による寡占体制を守ろうという訳だ。 おそらく、こうした動きは、奏効するどころか、逆に、既存勢力の衰退を加速することになろう。デジタル放送を始めたところで、売上が増える保証などないからだ。 その一方で、デジタル番組製作コストが急増する。下手をすれば、赤字化し、魅力的な番組作りもできなくなるかもしれない。 そもそも、視聴者獲得をインフラ寡占で実現しようという考え方が間違っている。 本来、寡占は、視聴者の番組選好から発生すべきものである。 多チャンネルになれば、特定視聴者向け番組と一般視聴者向け番組のすみわけが進む。従って、多チャンネル化は、既存番組提供者の没落を意味しない。一般視聴者向け番組では寡占化が進み、今まで以上に視聴率が向上するかもしれないのである。 しかし、番組とインフラを一体化している限り、そうした動きにはならない。 [両者を分離すれば、番組の魅力が即視聴率になる。両者が統合されている日本では、そのような見方ができない。インフラが乱立しており、番組は時間を変えて様々なインフラでバラバラ垂れ流されており、視聴率はインフラ接続状態を示すだけのデータかもしれないのだ。] 分離されれば、新興番組企業が勃興してくる。魅力的な番組提供者が登場するのだ。 例えば、24時間ニュースのCNNは、Robert Edward Turner III氏が1980年に米国アトランタで始めた放送だ。僅か10年程度で世界有数のメディアに育ったのである。なかでも、1991年の湾岸戦争では、一人舞台だった。・・・今や、先進国の国際ニュースはBBCとCNNというアングロサクソン系独占状態と言ってもよいだろう。 CNNは、「Cable News Network LP, LLLP」の頭文字だ。これでわかるように、CATVから発足した企業だ。衛星経由で各地のCATVに放送を流す仕組みで始まった訳である。しかし、米国の視聴者はCNNをCATV業者と考えてはいまい。CNNは番組提供者であって、インフラ業者とは違うのである。 [1996年にCNNはAOL Time Warner Companyの傘下に入った。日本では、スカパー257チャンネルとCATVで放送。] 視聴者にとっては、インフラは、衛星放送だろうがCATVだろうが、かまわない。便利なものを選ぶだけのことだ。その上で、インフラに流れてくる様々な番組から好みのものを選ぶのである。・・・これが、放送産業の基本形態である。 ところが、日本はインフラと番組がバンドルされている。そのため、視聴者の自由度は極めて小さい。すべてのインフラを整えない限り、好きな番組を見ることなど不可能な仕組みだ。 しかも、ようやく多チャンネル有料CSが育ってきた時点で、新たなインフラを次々と加える。今までの努力を消しさろうとの試みと言える。 これからは、地上波で、デジタル地上波、VHF/UHFアナログ地上波の3種類の方式で、既存業者から番組が流される。衛星放送では、BSデジタル、BSアナログ、現行CS、110度CSの4種が並ぶ。これに、有線の、CATV、インターネット・ブロードバンドが加わる。 まさに、インフラ乱立状態といえよう。 狭い国土に、どうして、これほど多種のインフラが必要なのか聞きたいものだ。 さらには、この状態で、家庭にどう対応させようと考えているのか。 様々な番組を見たければどうなるか考えてみよう。・・・ますは地上波用の2種類のアンテナを立てる。さらに衛星用のパラボラアンテナを2台取り付けることになる。その上、電話線にも接続させる訳だ。 一般家庭の常識からすれば、驚くべき施策と言わざるを得まい。視聴者から見れば、どのインフラであろうと、様々な番組が見ることができれば、それで結構なのである。 例えば、CSかCATVのどちらか1つ加入し、数100チャンネルの番組が視聴できさえすれば、十分とはいえまいか。すでに画面は十分美しいのである。 しかし、総務省の情報通信政策局は、未だに地上放送課、衛星放送課、地域放送課と、インフラで分割した体制を敷いている。番組側の産業振興など全く考えていないことがよく分かる。それぞれのインフラ分野毎に、普及促進を図るつもりなのである。 通信と放送の融合というスローガンもよく聞かされるが、こちらの方も、未だに、全く異なる規制下である。融合とは口先だけであり、現実には、厳格な分離を貫き続けている。 しかも、ハード・ソフト統合路線を堅持するようだ。通信・放送の融合など遠い先という考え方が底流にあるのだ。 (http://www.soumu.go.jp/singi/b_kondan/b_kondan_03.html) その一方で、放送政策研究会は「マスメディア集中排除原則の在り方について」で、規制緩和を語っている。地上波のローカル局のチェーン化による寡占化を防ごうということらしいが、現時点でもキー局番組の垂れ流し状態である。独自番組など稀な放送局の経営権の独立性を議論したところで、意味は薄い。 (http://www.soumu.go.jp/s-news/2003/pdf/030227_7_2.pdf) 今のままなら、日本のテレビ放送は衰退するのではなかろうか。 侏儒の言葉の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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