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2003.10.9 
 
 


話題の町工場 [長島精工]…

 先細りの職人技術とされている「キサゲ三面摺り」を武器に、超精密NC成型平面研削盤事業で強い競争力を持つのが、京都の長島精工である。金型工場への納入数は1,000台を越えていると思われる。
 (http://www1.sphere.ne.jp/NAGASIMA/kodawari/index.htm)

 世界1の中小企業として、テレビにもたびたび取り上げられるから、知っている人も多い。
 たいていは、手造りの伝統技能を継承することでナノに迫る精度(0.1μ)を実現し、工作機械のナンバー1の地位を獲得した、と紹介されている。真面目にモノ作りに励んで成功した、との印象を与えるから、マスコミ受けがよいようだ。

 ・・・このような紹介は、間違いではないが、誤解を与え易い。職人芸を磨くだけでも戦える例がある、と間違った捉え方をしかねないからだ。

 この成功物語の本質は、職人技術を磨いた点にある訳ではない。
 職人技術が武器になるような技術マネジメントと、技術を活かせる事業構造を作りあげたからこそ、業界のトップレベルにのぼりつめたのである。
 誤解を恐れず語れば、的確なマネジメントで、「キサゲ三面摺り」の技術独占をつくり出したといえる。「残り物には福」を実現したのだ。

 簡単に解説しておこう。

 この企業を支える基盤は、どう考えても、中国西安にある製造工場である。「職人が作る」商品にもかかわらず、とてつもない高額商品にならない理由がここにある。おそらく機械の8割の部材が中国で製造されているのだと思う。
 しかも、製品ラインは、力を生かせる成型研削盤だけに絞り込んでいる。
 1種しかないのだから、高品質かつ低コストで製造しやすい体制である。開発から製造までの業務プロセスと、必要スキルの手当を工夫すれば、コスト削減効果は大きいはずだ。長島精工は、この部分のマネジメントも優れている。
 これは、職人芸を磨くだけでは、できかねる。

 さらに重要なのが、技術全体における、武器になる技術の位置付けだ。
 ウリの「キサゲ三面摺り」は、おそらく、キーコンポーネンツの最終仕上げだけに使っている。それ以外は汎用技術で対応する仕組みだ。だからこそ、強い競争力が発揮できる。
 余計な部分にこだわりなど持っていない点に注目する必要がある。職人のこだわりを許すのは一部で十分なのである。

 そして、忘れてならないのは、メインテナンス技術である。
 この企業のユーザーは精密金型製作メーカーだ。価格が高くても、長島精工の機械を買うのは、超高精度の実現もさることながら、長期に渡って安心して使えるからに他ならない。
 製造部門を中国に移転していても、機械の全ての技術を日本で把握し、機械の調整・修理を行える高度なエンジニアを抱えている。これこそが、この会社の圧倒的強みだ。


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