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2003.11.24 
 
 


特許査定率の意味…

 2003年11月に公開された報告書のなかに、「企業における戦略的知的財産の取得と産業競争力」項目をみかけたので、早速読んで見た。
  (特許行政年次報告書2003年版http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/nenji/nenpou2003_pdf/honbun/3-1-3_5.pdf)

 「特許査定率」を、重要な案件を精度よく効率的に権利化している指標として考えることができる、との主張が記載されている。
 この論拠として、「特許査定率」と「営業利益」の相関が示されている。

 特に指摘されなくとも、ほとんどの企業は、競争力強化に向けて、特許査定率向上に動いてきた。「特許査定率」を向上させ「営業利益」を増やそうという主張に反対する人がいるとは思えない。
 しかし、それはあくまでも個別企業内の課題である。
 この考え方を、産業全体に適応すると、違和感が生じる。

 同じ業種であっても、企業によって業態も戦略展開も違う。そもそも、企業毎に競争環境が全く違うのに、一律に特許査定率の絶対値で比較する発想に実践性喪失感を覚えるのだ。

 一般に技術競争が厳しくなれば、他社の権利化を防ぐための防衛作戦が重要になる。特許化できそうにない提案でも戦略上不可欠なものになりかねないのが現実だ。
 当然、特許査定率は低くなる。
 これは、日本の特許の仕組み上避けられない方針と言ってよい。公開公報で他社情報を見たら、領域確保に走るしかないのである。

 一方、競争が緩やかな分野を事業対象としている企業や、基本特許を保有している企業にとっては、このような防衛活動を急ぐ必然性は薄い。
 このような企業は自動的に特許査定率が高くなる。

 当然ながら、前者に属する企業の営業利益は低いし、後者は高い。
 この状態を見て、的確な特許戦略で特許査定率を向上させれば収益率は向上する、と主張したところで、空虚に響く。そもそも研究者・エンジニアも、くだらぬ防衛作戦など止めたいのだが、そういかない制度なのである。

 重要なのは、この報告で述べられているように「同業種の企業でも特定の技術分野にピークを持つ企業は高い利益をあげている」点だろう。
 「同質の競争では儲からない。勝てる分野を絞り込んで、使える特許を揃えろ。」とはっきり語るべきだ。


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