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2004.1.23 
 
 


若い女性の急速な保守化…

 男性向け週刊誌の、“20〜30代「男は結婚しないほうが得じゃん!!」の実態” との、電車つり広告見出しを読んで驚いた人が多い。

 “可処分所得激減、管理&搾取される毎日、不自由な人間関係&下半身事情…… 不景気&就職難で独身女の専業主婦願望が高まる今、一方的な「依存型結婚」が蔓延中!”との副題がつく特集である。
 結婚の損得について検証した記事とのふれこみだ。夫になると経済的責任をとらされ、カネは妻に握られる。時間もお金も、自由がなくなるから、結婚は損だ、との内容である。
  (扶桑社「SPA」2004年1月27日号 “SPA! REPORT”)

 結婚を損得で考える発想に驚く人もいるかもしれないが、これが日本の現実である。

 こうした状況を、表立って発言するには勇気がいる。口火を切ったのは、心理学者 小倉千加子氏だ。
  (「結婚の条件」朝日新聞社 2003年11月刊)

 日本の若い女性は、結婚をビジネスと割りきっている、と指摘したのである。
 苦労して就職したところで、たいしたリターンは見込めないが、専業主婦の座を勝ち取れば、優雅な生活が約束される、と考える女性が多い、との話しである。女子学生が、現在の自分の生活水準を保障してくれる男を探している実態をわかり易く描いてくれた。

 作家 高橋源一郎氏は、この本を読んで、「この国は、いちばん底から壊れはじめている」と評しているが、恋愛と結婚が別なものになっただけの話しとも言える。
  (http://book.asahi.com/review/index.php?info=d&no=4860)

 貧乏を避けたいなら、これは極めて現実的な選択だろう。
 逆に、職業を得て、それなりの贅沢ができるなら、結婚する必要も無いと思われる。

 この流れこそが、晩婚化/非婚化を促進している元凶と言えよう。

 これに対して、若い男性の方は、「自分の逃げ場や癒しの場として、妻や子を欲している」との特集記事がある。
  (朝日新聞社「AERA」2004年1月26日号 “「30歳までにパパ」夢見る僕たち 「早く子どもが欲しい」男心/やる気は満々だが”)

 こちらの方が、「底から壊れ始めている」といえそうだ。妻や子はペットではないのである。

 といっても、子供が増える兆候は、統計数字には全く現れていない。

 日本の出生数は、第1次ベビーブームの1947年には270万人を記録し、その世代の子供が誕生した第2次ベビーブームでは、1973年に209万人だった。それ以後は減少を続けており、120万人を下回るまでになった。普通に考えれば現れる筈の第3次ベビーブームは、ついぞ発生していないのである。

 [合計特殊出生率はすでに1.32まで下落している。
  (http://www1.ipss.go.jp/seisaku/html/111b1.htm)
 合計特殊出生率の将来中位推計では、1.3程度まで低下した後、徐々に向上することになっている。
 一方、低位推計では、長期的に減り続け1.1程度で落ち着く予測である。
  (http://www.ipss.go.jp/Japanese/newest02/3/z_7.html)
 低位推計が妥当なのは言うまでもなかろう。
 東京都の実数で見れば、傾向は鮮明だ。1996年に1.1を切り、その後、1.07近辺で推移している。
  (http://www.fukushi.metro.tokyo.jp/gaiyou/2002sya/15_2.htm)]

 ということは、若い女性の保守化が急速に進んでいることを意味する。結婚して、苦労などしたくないのだ。
 「この国は、いちばん底から壊れはじめている」は言い過ぎの感じがするが、これだけ保守的なら、痛みを伴う改革が進まないのは当然かもしれない。


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