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2004.4.14 



研究開発主導型経営は遠い…

研究開発従業者が
正社員に占める割合
の直近3年間の傾向
傾向 業種
上昇基調 製造業
情報サービス
ほとんど
変化せず
卸売業
小売業
飲食店
漸減 電気・ガス業
 2004年3月に「平成15年企業活動基本調査速報―平成14年度実績―」が公表された。(1)
 これによると、研究開発部門従業者数は対前年度比2.6%減少した。
 製造業では、4.0%もの減少である。

 しかし、正社員に対する割合で見れば、製造業、情報サービスでは、過去5年で見れば増加傾向のようだ。
 研究開発主導の経営へと少しづつ変わっているのかと、期待したくなるが、現実はそのようなものではなさそうだ。

 製造業の、売上高研究開発比率は4.28%であり、前年度の4.40%より低くなったのである。
 しかも、中味のうち、自社研究開発費の割合は3年連続して減少している。数字自体は88.1%とまだまだ外部委託が進んでいない状態だから、当然の動きとも言えないことはないが、研究開発が活発化してきたとは思えない。

 期待する方向には進んでいないようだ。

 まず第一には、多数の企業で行われている重複した研究開発活動から、少数の企業による効率的な活動への移行が望まれるが、さっぱり進んでいない。
 参入企業淘汰が進め、1社当りの、研究開発費が増える傾向が望ましいが、その傾向は読み取れない。

 第ニには、研究開発投資活動自体の活発化である。
 そもそも、研究開発費の対売上比率を考えること自体、この流れとは無縁である。費用をコントロールするといった、硬直的な運営から、機会を捉えて大胆に資源を投下し、飛躍を狙う企業が増えて欲しいものだ。残念ながら、この兆候は見えない。
 少なくとも、研究開発投資を増やして、チャンスを増やそうという傾向はない。
 (但し、輸送機械と化学だけは、投資姿勢が見られる。)
 チャンスが見つからないのか、力のある研究開発者が見つからないのか、ともかく人員増で飛躍できるとは考えていないことがわかる。

 ・・・と、見ていっても、時間の無駄だろう。
 要するに、研究開発マネジメント力で戦う体制になっていない企業が多い、ということだ。

 その象徴が、電気・ガス業の数字である。

 売上高が4.2%も縮小したことによる対応と言えないこともないが、研究開発費用が1年でなんと10.4%も削減された。
 エネルギーこそ、これからイノベーションが創出される分野だと思うが、肝心の当該産業が研究開発を沈滞化させる方向に進んでいるのだ。
 これでは、今までは、無駄な研究開発が多かったか、イノベーション創出の自信が無いか、のどちらか、と言われてもしかたあるまい。

 もっとも、これを当該産業の問題と見なすと、間違いかもしれない。
 この産業の受託研究開発費用は、なんと21.8%も減少している。今までは、意味が薄かったテーマを、しかたなく受託していたのではないか、と考えたくなる数字である。
 ようやく、押しつけ受託研究開発を切り、自らの決断で、真っ当な研究開発マネジメントができるようになったとも言える。

 道は遠い。

 --- 参照 ---
(1) http://www.meti.go.jp/statistics/downloadfiles/h2c1s4fj.pdf

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