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2004.5.18 



国際競争力評価の見方…

 2004年5月4日、恒例になった感もあるIMD World Competitiveness Yearbook が発表された。(1)
 日本の総合順位が1993年まで5年連続1位だったことがあるから、今でも順位がどうなったか知りたい人が多い。

 2002年には、30位まで落ち込んだが、今年は23位まで回復してきた。ようやく復活歩調に入った、と考える人がいるようだ。
 しかし、仕組みを考えれば、今のままなら、上位へ戻ることはあり得ないと思う。

 経済環境が好転すれば、そのお蔭で自動的に好転する指標は多い。おそらく半分ちかくは、直接/間接的に変わると思う。
 ところが、その一方で、高い生活コストや赤字財政のように、社会の抜本的改革なくしては、最低レベル評価から脱し得そうにない指標もいくつか存在している。今のままなら、これらの値が変わることはないと思う。
 さらに、起業や大学教育といった得点の上昇も望み薄だ。統計数値が得られない指標は、日本の経営者へのアンケート調査結果で採点されるからだ。(2)
 規制でがんじがらめの状況を肌で感じている日本の経営者が、設問に対して、改善したと答える筈がなかろう。

 結局のところ、日本は、技術では進んでいるが、構造改革がほとんど進まない国、との陳腐な評価がこの先も続くことになりそうである。

 夏にはWorld Economic Forum からも、「Global Competitiveness Yearbook」(3)が発刊されるが、再度同じトーンのニュースが流れそうだ。
IMD世界競争力調査 2004年
10傑中の東アジア諸国(1)
順位 前年
[人口大国ランキング]
台湾 4位 4位
マレーシア 5位 7位
浙江省(中国) 6位 14位
日本 9位 9位
中国 10位 11位
[人口小国ランキング]
シンガポール 1位 3位
香港 3位 7位

 ・・・と考えると、World Competitiveness Yearbook が果たしてきた「日本の地位」評価の役割は終わったような気がする。

 これからは、東アジア一帯の変化を眺める方が面白そうだ。

 2004年のレポートは壮観である。中国本土への大規模投資に伴う、東アジア中華圏が躍進中だ。
 しかし、同じ東アジアでも、中華文化が余り入っていない国は低位に甘んじている。
 タイは総合順位29位(前年30位)、韓国は35位(前年37位)、フィリピンは52位(前年49位)、インドネシアは58位(前年57位)である。
 日本同様、中国の経済発展の流れに乗って、国内改革を進めることはできなかったといえそうだ。

 --- 参照 ---
(1) http://www02.imd.ch/documents/wcy/content/pr.pdf
(2) http://dci.dentsu.co.jp/network/tie-up/wcy.asp
(3) http://www.weforum.org/site/homepublic.nsf/Content/Global+Competitiveness+Programme%5CGlobal+Competitiveness+Report

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