300万円生活は可能か?…
年金問題等、争点はあったが、第20回参議院選挙の結果は野党善戦といった程度で終わった。
大多数の国民は、現状維持を望んでいるということだろう。
森永卓郎氏の「年収300万円時代を生き抜く経済学」がヒットする社会である。
金銭的な余裕がなくても、心豊かな生活はできる筈、とのメッセージがすんなりと受入れられるのだから、現状維持派が多いのは当然かもしれない。
想定経費(年額) 東京都港区 |
項目 |
計算方法 |
金額 |
控除後の 課税対象 |
\3,000,000 と仮定 |
所得税 |
対象x0.1
(330万円まで) -減税20% |
\240,000 |
特別区民税 |
対象x8%-\100,000 + 均等\3,000 |
\143,000 |
都民税 |
対象x3%-\70,000 + 均等\1,000 |
\21,000 |
医療保険 (国民保険) |
住民税額x2.08 + 人頭額\30,200 (最大53万円)
|
\371,320 |
介護保険 |
住民税額x0.24 + 人頭額\10,800 (最大8万円)
|
\50,160 |
国民年金 |
月額\13,300 |
\159,600 |
水道料金 |
20mm30mm3 2ヶ月額\3,948 |
\23,688 |
電気料金 |
30A-200kWA 月額基本料\819 電力量料\3,339 |
\49,896 |
ガス料金 |
30mm3 月額基本\1,092 ガス量\3,457 |
\54,588 |
固定電話料金 |
月額回線\1,522 通話\1,000 |
\30,624 |
ADSLインターネット料金 |
Yahoo! BB 月額\3,282 |
\39,843 |
携帯電話料金 |
DoCoMoプラスL 月額\6,159 |
\73,908 |
新聞購読料金 |
月額\3,925 |
\47,100 |
NHK受信料金 |
衛星カラー契約 2ヶ月額\4,580 |
\27,480 |
生命保険 |
都民共済入院2型 月額\2,000 割戻33% |
\16,080 |
都会で、どの程度の生活になるのか、経費や控除後の課税対象額が300万円の場合で、ざっと現状を見てみよう。
税金は約40万円。
公的な保険/年金に支払う金額は総額で約58万円。
水道、ガス、電気、新聞、テレビ等に支払う額が約36万円といったところだろうか。
これに、住居費用に150万円、食費が50万円かかると考えると、合計で334万円になる。衣服代は入っていないが、一応、不可欠な出費額と考えてよいだろう。
基礎控除(\380,000)、社会保険料控除(\581,080)、保険料控除(\16,080)があるから、収入から経費を引いた実所得は約400万円程度である。
この差額から、様々な出費や、将来の蓄えを出すことになる。
確かに生活はできるだろうが、「心豊か」な生活は難しいように思われる。
従って、「心豊か」な状況にするためには、収入を増やすか、コストカットしかあるまい。
どちらが現実的かは、自明である。
ミクロで言えば、各人が懸命に努力して、収入を増やすしかあるまい。
マクロで見れば、経費の単価を下げ、公的支払いを減らすのが一番の早道である。
政策で意味があるのは、前者に関しては、高い賃金が支払える産業振興だし、後者に関しては、価格低下圧力をかけることである。
特に、住居、食費、ユーティリティ価格を下げることが重要だと思われる。それぞれの産業にとっては市場収縮になるから、抵抗するのは間違いあるまい。しかし、産業構造を変えることで、マクロでの生産性は上がる筈だから、経営力があれば収益性は向上する筈だ。この変革なくしては、「心豊か」な庶民の生活などあり得ないと思う。
特に、都会における基本経費を下げる施策が重要だろう。
と言うのは、経費が下がらないと、消費が回復しない可能性があるからだ。
仮想出費を見ればわかるが、すでに財産を保有している層は、今の状態でも、おそらく年支出300万円で謳歌できる。公的負担が重いから、収入を増やさず、小さな生活を楽しみ始める可能性が高い。本来は消費できる層が、消費を抑え、税金の支払いも減らそうと動くことになる。収入を望まなくなりかねない。
その一方、収入300万円だけに頼る層の生活は苦しくなろう。余裕がないから、消費が抑えられる。収入を増やすための、投資もできないのだ。
両者ともども、消費は上向かない。
今のままでは、消費の拡大が期待できる層は、高額納税者しかなくなりかねない。