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2004.7.28 



業界協調路線の復活か…

 液晶デバイス産業が、日本のエレクトロ産業の柱になると期待が集まっているようだ。
 その一方で、疑問を呈する意見も根強い。

 市場が伸びるという点については、意見の違いはないが、今後、十分な収益を得られず、苦境にたたされかねない企業が発生する、と考える人もいるのだ。
 現状でも、日本企業は、1社を除いて、黒字体質事業とは言い難い、と語る人も少なくないのである。

 家電事業が抱えている巨大な固定費をカバーするために、液晶ディスプレーで売上を確保せざるを得ないため、とりあえず注力する方針は、それなりに理解できるが、今後の収益確保の根拠は薄弱だから、黄色信号が点灯していると見るしかない、との理屈である。
 資本効率が悪い事業に何故注力するのか、という本質的な疑問をつきつけられているとも言える。

 成長率が高い大市場に参入していれば儲かる時代は終わった、と考えるなら、当然の主張である。

 VTR事業の大成功の再来があるとは思えまい。大市場に発展すれば、マイナーな参入者でも努力を惜しまなければ儲けられるという、楽な時代ではない。
 結局のところ、儲かるのはトップの一握りの企業に限られる、と考えるのが普通だろう。

 にもかかわらず、VTR事業の大成功と同じパターンの事業展開が始まったように映る。
 米国市場で安売り大量販売を行い、日本市場では高価格を守ることで、全体として収益があがるビジネスへの移行が進んでいるようだ。
 これは、本来は、自由競争の社会では無理筋である。製品価格差があれば、目敏い企業がかならずビジネスチャンスとばかり乗り込んでくるからだ。かつては、参入者が同じようなタイプの日本企業だけだったから、競争はあるとはいえ、協調できただけの話である。協調が、強者にとってもメリットになったのである。
 しかし、現在は違う。強者は利益極大化を目指すしかない。弱者が生きていける環境を作れば、利益は圧縮されてしまう。協調路線は採用し難い。

 ビジネスマンなら、こんなことは肌で感じていると思う。
 ところが、昔の路線が復活しつつある。ということは、業界が日本市場をコントロールするつもりなのかもしれない。
 もしそうなら、弱者救済路線に進むことを意味する。この業界は、技術開発も盛んで、果敢な投資を進めているから、活力あるように見えるが、実態は違うのかもしれない。


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