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2005.3.7
 
 


たまたま燕三条を知る…

 上越新幹線の駅名が「燕三条」なので、燕と三条の金属加工産業を一体化して考えていたが、両者は全く異なる産業であることを知った。(1)

 燕の主体は、金属(ステンレス主体、銅、真鍮、チタン等)の成形産業だ。洋食器・ハウスウェアが製品ラインである。国内ではほぼ独占的地位を維持しているようだ。
 技術的には、コイル、熱処理、表面処理、金型、溶断といった点でのノウハウが蓄積されているといえよう。

 一方、三条は昔から盛んだった鍛冶屋産業が中心である。(2)
 もともとは、農機具と大工道具が発祥である。といっても、いくつかの拠点が集まった産業構造だったようだ。
 ・与板の打刃物 鉋(かんな)、鑿(のみ)(3)
 ・脇野(現 三島町)の鋸(のこぎり)(4)
 ・月潟の鎌(かま)(5)
 ・燕の鈩(やすり)(6)[洋食器研磨の原点だろう.]

 現在は、 包丁と鋏(はさみ)を中心とする刃物、大工道具・建築金物類、 作業工具(スパナ、プライヤー、モンキーレンチ等)、金属製測定器具といったラインになっているようだ。
 こちらは、研磨、プレス、鍛造のノウハウが蓄積されていることになる。

 このような技術を利用して、燕・三条地区には、アウトドア用品、ガス機器・石油機器、金型までビジネスが広がっているという。

 しかしながら、両者のカルチャーは、どう見ても、相当違うと思う。
 鍛冶屋とは基本的には職人集団だ。堅実な商売に徹するだろう。
 職人集団にもかかわらず、産業として大きく発展できたのは、技術優位もあろうが、三条商人の力が大きかったと思われる。このノウハウが生かせないと、鍛冶屋産業の今後の発展は限定的だろう。

 これに対して、燕の洋食器ビジネスは明らかに、成長分野に賭けていくタイプだ。

 両者は名目上は、金属加工技術という点でのシナジーが期待できるが、実際には難しい感じがする。
 ブランド訴求にしても、洋食器はデザインという点をウリにできるが、工具系とは異なるアプローチが要求されよう。

 従って、飛躍のためには、両者は別々の道を歩むべきだと思う。

 原則論からいえば、職人芸で戦う三条の産業の狙うべき道は見えている。
 少量特別注文を低コストで受ける能力と、その特別品の大量生産にもすぐに対応できる仕組みを作ることが飛躍の鍵である。このような受注を獲得できる「技術商人」育成が急務だと思われる。

 一方、燕はすでに産業基盤を持っており、安価な海外産品に対抗できるデザイン力が要求される。おそらく、単純な洋食器ブランドという発想では、勝てまい。食卓の新しい文化を打ち出せるかが問われていると思う。
 又、成長に賭けたい企業が揃っている可能性があるから、研磨技術や特殊金属加工のスキルを活用して、新分野に乗り出すのも推奨路線と言えよう。
 但し、後だしではなく、一番乗りで市場を席巻する必要があろう。そのチャンスをどう見つけるかで、飛躍できるかが決まってしまうのではないだろうか。

 --- 参照 ---
(1) http://www.dbj.go.jp/niigata/report/pdf/0623_all.pdf
(2) http://www.city.sanjo.niigata.jp/~shoko/kajinowaza/index.htm
(3) http://www.lalanet.gr.jp/shisetsu/nlpc/dento/T-1.html
(4) http://www.city.nagaoka.niigata.jp/c090/c090i010/pdf1607/24-599.pdf
(5) http://www.tsukigata.or.jp/kaiin/meibo.htm
(6) http://www.alfact.co.jp/homepage-f/tsubame-2.htm#b


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