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2005.7.27
 
 


地震対策とは…

 しばらく前は、東海地震間近との話をよく聞いた気がするが、有難いことに、なにもおこらずに2005年後半に入ってしまった。
 そのためか、東海地震に関する話題がマスコミに登場する頻度も減ってきたようだ。
 とはいえ、夏になると必ず地震の話がもちあがる。といっても東海地震の話ではなく、首都直下地震に変わっている。こちらの方は、もともと何時おきてもおかしくない地震だが。

 話題の対象は変わったとはいえ、法律もあるから、広域行政としての地震対策は着々と進んでいるそうだ。

 “地震予知”と“被害シミュレーション”に合わせて計画を作っているのだろうが、どのような地震を想定しているのかはよくわからない。

 これでよいのだろうか。

 ・・・などと書くと、烈火のように怒る人がいそうだ。一生懸命仕事をしているのに、なんたる輩だと言われること間違いなしである。

 しかし、現状では、短期的な予知は無理と見た方がよいのではないか。せいぜいが中期的に漠然とした予測ができるレベルではなかろうか。

 もちろん、比較的短期予測で当たった例も指摘されている。だが、その一方で数多くの外れた予測があることを忘れるべきではなかろう。データが少なすぎ、当たったからといって、その仮説が正しいとは言い切れないのだ。次は外れるかもしれないのである。
 その程度の予知に頼った政策には疑問を感じざるを得ない。

 どういうことかは次の一文で明らかだ。

 “静穏期が終わると、前震活動が起き始めるか、前震なしに本震発生となる。”(1)
 ビジネスマンならこんな書き方はしない。地震発生前に予兆現象があるかどうかはわからないということである。

 それに、歪が集中しているのに静穏期があるとの説明も腑におちない。

 警告は有難いが、予測が当たるとは信じがたいのである。

 そもそも、現在の地震学者は「地震波動学」を専攻しているようなものらしい。(1)
 大局的に地震を見ることができない訳だ。「地震波動学」は進歩しているが、予知能力向上に繋がっているとは限らないということだ。総合判断を「地震波動学」の学者ににまかせるのは考えものである。

 為政者は自分の頭で考えて判断すべきだろう。

 はっきりしているのは、日本における地震は2種あるという点である。

 1つはプレートがぶつかるところで発生するマクロな地殻変動に由来するもの。地震地図を見れば誰でもすぐに納得する理屈である。(2)ここでは常に地震が発生しており、大地震が50〜150年間隔で発生するということである。つまり、歪みが蓄積され、耐えられなると大地震が発生すると考える訳である。極めて分かりやすい。
 このことは長・中期的な予測はできるということである。しかし、短期予測は別な問題だろう。

 もう1つは、断層部分から発生する地震だ。
 こちらは、全国津々浦々まで調査が進んでいる。危険地帯ははっきりしている。素晴らしい仕事である。しかし、データが揃っていないのだから、発生時期予想などとても無理だと思う。

 両者は発生原因が違うのだから、同じような論議はできまい。
 しかし、対策として、どちらを優先させるのかは為政者ならはっきりさせる必要があろう。
 このような点を曖昧にすれば、中途半端な対策にならざるを得まい。

 ついこんなことを言ってしまうのは、東海地震発生間近説を前提にした対策が多すぎるからである。
 
プレート由来の地震等
時期年 時代 南海トラフ 相模トラフ
684年11月29日 白鳳 南海・東海
887年8月26日 仁和 南海・東海
1096年12月17日
1099年2月22日
永長
康和
東海
南海
1361年8月3日 正平 南海
1498年9月20日 明応 南海
1605年2月3日 慶長 東海・南海
1703年12月31日
1707年10月28日
1707年11月20日
元禄
宝永
宝永
 
東海+南海
 
関東
 
富士山噴火
1854年12月23日
1854年12月24日
安政 東海
南海
1923年9月1日 大正 関東
1944年12月7日
1946年12月21日
昭和 東南海
南海
http://wwwsoc.nii.ac.jp/ssj/lib/higai/higai.html

 どうして、東海ばかりに焦点をあてるのか納得し難い。

 そもそも、海のフィリピンプレートが、大陸のユーラシアプレートに潜り込む現象が地震発生源なら、地域区分にはそれほどの意味はないという仮説も成り立つような気がする。歴史をみれば、ほとんどの場合、近隣地帯で同じ頃に地震が発生しているではないか。
 素人の目から見れば、プレートのどこかで弾ければ、一気に動くと考えたくなるが。
 つまり、東海・東南海・南海の一帯で、そろそろ大きな地震が発生すると見る訳だ。

 ・・・と言うより、南海地震がそろそろ発生しそうということだろう。それに連続してこの一帯に地震がおきる感じがする。まだちょっと先ということだろうか。

 確かに、根室沖では空白地帯で地震が発生した。ここだけ見れば、仮説は正しいように見える。しかし、大地震発生後に再度大地震がおきることもあるではないか。
 信頼に足る仮説とは思えない。素人からすれば、プレートとして一体化しているなら、噴火が続く伊豆が近辺にある東海より南海の方がやっかいなのではと考えてしまうが。
 それにむやみに11〜12月が多いということは、冬に向かう海流変化に関係するのかも、とも思ったりする。

 そんな好い加減な話より、甚大被害がありえそうな箇所を眺め、最悪の事態を考えて対処策を練る方が有意義ではないだろうか。

 例えば、この一帯でマグニチュード9.0が発生したら、一体どうなるのか。
 日本にそこまで大きな地震が発生しない根拠はあるのだろうか。マグニチュード7クラスがほとんど発生しないのも不思議だが。
 マグニチュード9.0クラスだとおそらく死者数は1,000万を越え、産業も壊滅的被害を被るだろう。そんな時、どう対処するつもりか。北九州に首都を移転すればよいのだろうか。

 とはいえ、過去を見る限り、こんな大地震が発生する確率は極めて低いとはいえそうだが、無いとも言えないのではなかろうか。

 それでは死者の数で考えると、大被害はどこに発生しそうか。素人なら、すぐに答えることができる。関西だ。
 南海トラフで大地震が発生すれば、間違いなく大阪湾を大津波が襲う。スマトラ沖地震以上の大津波の可能性がある。すぐに波が到来するので、防潮対応の時間はとれそうにないから、阪神・淡路大震災を大きく越える被害を被るう可能性が高いのではなかろうか。

 地震対策の肝は、予知ではないし、被害のシュミレーションでもないと思う。

 地震はコントロールできないのだから、そんな作業に力を割くより、他のことをした方が有意義だ。

 そんな観点で考えるのなら、なんといっても、最悪の事態を想定することが重要だと思う。精度などいらないのだから難しいことではない。
 後は、もし万一そうなったら、どのような原則で動くべきかを予め決めておけばよいのだ。例えば、壊滅的状況と判断した時は、中央集権ではなく、勝手に生き残りを図れる取り決めが必要だろう。

 整然とした計画を作っても、想定外の被害がでたら、全く対応できないかもしれないではないか。

 --- 参照 ---
(1) 上田誠也「地震予知はできる」岩波書店 2001年
(2) http://www.iris.edu/seismon/?view=eveday

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