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2006.6.13
 
 


科学技術ポータルサイトの閲覧感想…

 “−科学技術の今を伝えます−”と称するサイト(1)を閲覧した。
 科学技術ポータルサイト2006年6月7日公開と宣伝していたから、チラッと眺め回しただけのことだが。

 トップ記事は、「脳のメカニズムに迫る」である。次にロボット特集が続く。これはこれで結構な企画ではあるが、この内容と、このサイトのメイン、研究成果のニュースリリース一覧とは何の関連もない。
 話題の分野をとりあげ、関心をひこうとの趣旨かも知れぬが、この特集を読む人が、メインの記事を読む必然性は無いだろう。PR誌の体裁をとって、効果があがればよいが。

 ビジネスマンなら、違う発想で企画するのではないか。
 例えば、国内外での日本人受賞者一覧表を作り、そこから新進気鋭の研究者をピックアップしてインタビューを載せたりする。
 あるいは、論文サイテーション上位のリストを掲載し、執筆者による成功話の企画もでるだろう。
 基本特許や注目特許を選ぶ会を作り、座談会で話題にのぼった発明者グループの活動を記事にするのも面白いかもしれぬ。・・・

 もっとも、どんな閲覧者を集め、どんな広告を掲載して、どの程度収益が上げるかという計算を同時に進めることになる。根本思想が違うかも知れぬが。

 トップ記事の次に目立つのは、そのすぐ横にある、組織トップの「ご挨拶」。PR誌なら巻頭言のようなものだろう。
 これがあるため、科学者組織の宣伝サイト臭が漂う。一般人を相手にするつもりなら、目立たないように気を遣うべきだった。
 もっとも、このサイトは、一般向けではないらしい。
 “科学技術に携わる我が国の研究者、技術者、教員、学生が、一日一度は開いてみたくなる、親しんでいただけるポータル”を目指しているからだ。

 しかし、そうなら、「ご挨拶」は、もっと濃い内容にすべきだろう。

 こんなつまらぬ問題を取り上げてどうする、と思われかもしれないが、実は、ここが一番重要である。さらに、「ご挨拶」を検討してみよう。

 企業内サイトなら「ご挨拶」をどう扱うか考えてみるとよい。
 「ご挨拶」とは、経営トップが組織の長として、ビジョンを解説したり、社員に対して問題意識語りかける場である。当然、一番最初に見てくれそうな位置に掲げることになる。多くの社員が読むことになるから、何を書くか熟考せざるを得ない。形式的な挨拶を書いたりすれば、誰も二度と見なくなる。結構気を使うのである。
 これになぞらえるなら、「ご挨拶」では、このサイトをどう発展させたいのか、このサイトは何故必要なのか、といった思想を述べ、関係者の協力を呼びかけるべきだろう。本気でサイトを育てる気があるなら、この先、毎月、サイトの成長について書く欄を設ける位のことはすべきだ。
 読んでみると、“日本の科学技術、日本の科学者が発信する情報を、海外に向けて提供することがゴール”との一文はあるが、現状は「夢」でしかない。サイトの現状の話ではない。今後どう育てるつもりなのか、方針表明が無いからである。

 と言うことは、コミュニティ内部向けの「ご挨拶」ではないのかもしれぬ。

 勘の良い人なら、ここまでダラダラ書けば、言いたいことはおわかりだと思う。
 「ご挨拶」をどうにかせよ、という話ではない。もう少し、サイトの目的をはっきりさせて、読む人の立場にたって全体を設計したら如何、ということである。
 目的が曖昧だと、どうしても、雑炊的な設計になってしまうのである。それは読む方にとってはつらい。

 とは言え、個々を見れば、それなりに便利ではある。

 例えば、科学技術政策動向では、今までばらばらだったものを集めてくれた。
 欲を言えば、こうしたものに関係する解説や議論のサイトへのリンク集もあるとよいのだが。

 ただ、検索は、わざわざこうした総合サイトから行う必然性はなかろう。文献・特許検索は、自分の分野に合う便利なサイトからか、自分で作ったリンク集を使う方が圧倒的に便利である。科研費関係は別として、わざわざこのサイトから検索に入る必要はないだろう。
 従って、このサイトは、参考書の役割に徹してもらうと有難いのだが。リンク先のウリをもっとわかりやすく書いて欲しい。例えば、NIIなら、世界中の主要学術雑誌1,000誌の創刊号からの280万件の論文が一覧できるといった解説が望ましい。
 検索の解説リンクなども欲しいところだ。

 要するに、網羅性より、見る方の立場でまとめて欲しいのである。そうでなければ、インターネット揺籃期のリンク集のようになってしまう。メインテナンスが大変な割りに、誰にも感謝されないから、そのうち消えるのである。
 なんでもかんでも入っている一覧表から情報を探す仕組みだけは勘弁して欲しいのだ。それでも、無いよりはましかも知れぬが。
 ビジネスマンなら、そんな網羅的一覧表などイライラして見る気がしない。すぐに、仲間内で、関係分野の一覧表を作り始めると思う。
 こうした力をどう組み入れるかが、発展性を決めることになる。

 こんなことを強く感じたのが、国家資格一覧表。 (網羅的なもので、林業架線作業主任者まで入る.)
 悪態をつく輩と言われてもこまるから、感想はここら辺りで止めておこう。

 日本は、科学関係のサイトは概して貧弱であり、ともかく、新しいものが登場しただけでも有難い。
 但し、それで拍手する訳にはいかない。費用負担がどうなっているのか、わからないからである。
 価値ある動きと言えるか、まったくもってわからない。

 --- 参照 ---
(1) http://scienceportal.jp/portal/


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