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2007.4.30 |
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ホルモンの影響…2007年3月、専門誌(PNCA)に、常識を覆すような論文が掲載された。(1)イタリアの研究者達の仕事である。ただ、この常識、素人の思い込みかも知れぬが。 高等植物の温度・光・乾燥といった環境ストレスに対応する基本的な生理的反応プロセスに関与する分泌物、アブシシン酸(Abscisic acid [ABA])が、ヒト白血球の顆粒球(granulocytes)を刺激するというのだ。 言うまでもないが、顆粒球とは病原体と戦う機能を担っている細胞である。 それで、何が驚きかといえば、極く単純。 このアブシシン酸という物質、別に、珍しいものではないからだ。(1)高校教育でジベレリンと一緒に植物ホルモンの項に登場しておかしくないほどポピュラーなのである。にもかかわらず、そんな物質が、ヒトの基幹システムに影響を与えたというのだ。 ・・・“ABA Stimulates Phagocytosis, ROS and NO Production, Chemotaxis, and Chemokinesis in Human Granulocytes.” しかも、顆粒球のなかにもこの物質があるというから、ヒトの生産物でもあるということかも知れぬ。 ・・・“ABA in Human Granulocytes” つまり、“ABA behaves as a pro-inflammatory endogenous cytokine” 創薬の人達から見れば、抗炎症剤開発に役立つ新しい知見ということで、大いに興味を覚えるだろうが、素人はそんなふうにはとらない。 聞かされ続けた話と違うので、エ〜、本当か、となる。 沢山の細胞が集まっただけの植物で発見されたホルモンは、高度な仕組みを持つ動物で使われることはない、と教えられた覚えがあるのだが。 この論文の結果を見ると、どうも、習ってきたのは俗説と考えてよさそうだ。 レセプターが解明されている訳ではないからまだまだ仮説段階ではあるが、カルシウムイオンのシグナル経路図(3)が提案されている。これだけ論理がしっかりしていれば、信用してよさそうである。(cADPRとIP3がセカンドメッセンジャーとして介在) そして、ハッとさせられるのは、この物質がすでに“brain of vertebrates”で発見されたとの指摘。(pigとrat(4)) コレ、1986年の論文ではないか。そんなに古いのか。 最近は、一寸、ヒトに影響を与える要素を発見すると、それだけで大騒ぎする傾向があるが、こまったものだ。重要なのは、どうして影響が出るかという論理の方である。 新しいアイデアに基づいて論理を組み立てることを軽視する風潮は危険である。 もっとも、論理だけ重視し、苦しい単純作業をサボってしまう学者もいそうだから、逆に振れすぎてもこまる。なかにはデータ捏造に手を染める学者まで出たりする。そんな場合、徹底的に撲滅施策を展開すべきなのは言うまでもない。それに伴う副作用など考えず、即時、実行。手を抜けば、必ず禍根を残す。 その一方、論理をはなから無視する学者も少なくない。 例えば、高濃度で影響が出ない物質でも、低濃度で影響が出ると主張する。一体、どういう理屈なのか。 もしそんな理屈が通るなら、ここで取り上げた論文も含め、濃度変化で影響力を観察する実験には何の意味も無くなる。 素人にも理解しがたい主張だけは勘弁して欲しい。 --- 参照 --- (1) Bruzzone S., et.al.: “Abscisic acid is an endogenous cytokine in human granulocytes with cyclic ADP-ribose as second messenger” PNAS 104(14) 5759 [2007.4.3] http://www.pnas.org/cgi/gca?sendit=Get+All+Checked+Abstract%28s%29&gca=104%2F14%2F5759 (2) http://rikanet2.jst.go.jp/contents/cp0090e/contents/hormone/contents4.html (3) http://www.pnas.org/cgi/content-nw/full/104/14/5759/F3 (4) M.-Th. Le Page-Degivry, et.al.: “Presence of Abscisic Acid, a Phytohormone, in the Mammalian Brain” PNAS 83(4) 1155 [1986.2.15] http://www.pnas.org/cgi/content/abstract/83/4/1155?ijkey=d5c01162326ada0a34ac3586243fe8287a603094&keytype2=tf_ipsecsha 侏儒の言葉の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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