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2007.6.21
 
 


小さな商品こそ中小企業の独断場の筈だが…

 電話の受話器と本体を繋ぐコードが捻れて団子状態になることがよくある。ひどくなると、絡まってしまい。受話器が上手く取れなくなることも。
 そんな状態の電話機は時々見かけるが、たいして気にも留めていなかった。
 ところが、先日、このネジレ防止器具が売られていることを知った。(1)
 実売価格500〜600円程度の商品。

 気になる商品だが、君は買うか? と聞かれると、すぐに答えられない。
 と言うことは買わないということか。

 もっとも、捻れコードが嫌なら、受話器コードレス電話機に変えるという方法もあるし、電話を受ける時、ちょっとした気遣いで、捻れ現象は防止できるという。(2)
 ただ、そんなことを教えてもらったからといって、受話器のとり方の習慣を変えるのは難しそうだが。

 どこの会社が出した商品か気になったのでラベルを見ると、量販店のパソコン用小物の棚でよく見かける名前だった。
 小物にもかかわらず企業名を覚えているのは、この会社の商品、実に、細かいのである。電話用のモジュラーケーブルだけでも、長さ1mから20mまで6種類。さらに色も2種。
 この程度で留まらない。標準ケーブルの他に、エコ、スリム、やわらかスリム、スーパースリムといったタイプがある。

 う〜む。
 こんな細かな商品ラインだから、捻れコード防止器具があっても当然かも知れない。

 そんなこともあり、この会社、2006年に取り扱い商品が6,000点に拡大したようだ。(3)
 おそらく、まだまだ色々な商品があるのだろう。

 これを見ていて、思わず、昔のことを思い出してしまった。日本の電話料金が異常に高額だという話をしていた時のこと。
 米国のビジネスマンは、日本は、無駄としか思えない高機能機器を導入し、過剰サービスに励んで、料金を高額化しているようがが、一体何を考えているのか、という感覚だった。日本の消費者な何故怒らないのか、といった感じだろうか。
 まあ、それはその通りだが、利用者側の要求が厳しいのも事実なので、一応説明しておいた。
 日本には、公衆電話ボックスの清掃サービスとは別に、オフィスのデスクで使っている受話器だけを消毒綿で拭くサービスがあり、安くはないのだが、これが結構繁盛しているとの話をしたのである。サービスの質にはいたく五月蝿いことだけは知ってもらわないと、ということ。
 当然ながら、相手は、ふ〜む、という感じ。
 まあ、感覚的に理解できまい。

 こんな五月蝿い消費者の存在こそ、日本の一番の特徴と言ってよいと思う。
 些細なことにお金をかけすぎるから、サービスや製品のコスト高を招き易いのは事実だが、逆に、様々な試行を行なうことができるという点では素晴らしい社会でもある。
 言い換えれば、優れたリードユーザーが沢山いるということ。とりあえず、面白そうな新商品は使ってみようと待ち構えるイノベーターがそこらじゅうにいる訳だ。従って、潜在ニーズが顕在化し易い。この特徴を活かせたら素晴らしい成果は間違いなかろう。

 日本の中小企業は不振と言われるが、こうした展開で飛躍するチャンスなどいくらでもある気がする。方向を間違っているのではないだろうか。

 要は、電話コードのネジレ防止器具のような商品を出すということである。
 思いつきだろうが、練りに練った商品だろうが、どうでもかまわない。重要なのは、新しいアイデアであること。そして、それ以上に重要なのは、その商品を買ってくれるお客様の実像を描けること。
 つまり、試行ではあるが、儲かることがはっきりしているビジネスに徹する必要がある。
 中小企業は儲からない商品や、確実性が薄い新商品に手を染めるべきではない。もしハイリスクな試みをしたいなら、失敗したら会社をたたむ覚悟で別途起業を考えるべきである。ここを間違えている経営者が多すぎると思う。儲からない事業は切捨て、高収益な事業に専念すべきである。これを守らないから、不調になるだけのこと。
 中小企業は、大企業と違い間接部門が軽いから、本来、高収益を実現し易い体質なのに、余りに逆が多い。アイデア勝負ではなく、コスト競争で戦っている企業が多すぎるということでもある。なかには、大企業の理不尽なコスト削減要求で儲からないと不満を述べる下請け企業もあるが、それなら手を切るしかないのは自明。
 どこかで、そのコストで受けても儲かる企業があるということ。競争力が無いのだから、撤退しかない。駄目なら、早く手を打つのが経営者の役割である。

 そこまで冷徹に見据えないから、日本の地場の中小企業は不調をかこつのだ。儲かるビジネスが無さそうなら、事業を止めるしかない。この原則を守らないから悪循環になるだけのこと。

 中小企業の本当の問題とは、こんなことではない。
 儲かる体制を作っても、ベンチャーとは違いハイリスクでも一気に伸ばすカルチャーに欠けるので、大きく成長するチャンスを逃しやすいのである。しかも、人的資源が限られているから、伸ばそうとしても、思わぬことでガタついたりする。
 本来はこの支援策が重要なのだが、それ以前の問題に力を入れているのが実情。
 しかも、ハイリスクベンチャー型と、高収益な中小企業型の施策をまぜこぜにしている。これで成果があがるとは思えない。

 --- 参照 ---
(1) http://www.sanwa.co.jp/product/syohin.asp?code=TEL-TW2&cate=1
(2) http://www.itmedia.co.jp/bizid/articles/0705/28/news018.html
(3) http://www.sanwa.co.jp/outline/1_kigyougaiyou.html
(電話機のイラスト) (C) 3D+WEB MIX http://webweb.s92.xrea.com/


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