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2008.3.17
 
 


外国籍労働者受け入れを考える…

 ごく普通に考えれば、日本の農業はあと10年で壊滅すると言わざるを得まい。それまでに農業用ロボットが実用化されるとも思えないから、肥えた田畑だろうと、労働力不足で栽培放棄が始まる。おそらく、地方では実質的な放棄がぼちぼち始まっていると思うが、やがて誰の目にも見えるようになる訳である。
 これを避けるには、外国人に来てもらう以外に有り得まい。そう考えるなら、そろそろ本気で外国人住民をどう受け入れるべきかノウハウを溜めていく必要があると思うのだが。

 もっとも、南米日系人を中心とする外国人住民が多数居住する地域における課題については、とっくに「外国人集住都市会議」(1)等で行われちるようだ。問題でも発生すれば、日本の基幹産業が揺らいだりしかねないから当然の話である。
 ただ、これらの地域の外国人は、大概が派遣会社を通じての企業への派遣労働者だろうから、その心情は想定できそうだから、それほど難しい問題ではなさそうな気がする。  しかし、それを一般化できるとは思えまい。特に、東京の場合、外国人といっても、余りに幅が広く、統一課題としてまとまたりすればかえって役にたたないものになるのではないだろうか。

 それに、そもそもが、東京の場合は余り情報が入ってこない感じがする。そこで、一体どうなっているのか、統計数字を眺めてみることにした。(2)

 全体で見れば、東京23区の外国籍の登録は30万人を超えているようだ。素人だから、この数字の信頼性を評価できないが、変更届けを出さない人がいてもおかしくないから、精度はプラスマイナス1割程度というところでは。それに、登録無しの労働者もいるに違いない。旅行者の数は多いから、その数は数万人は下らないだろう。従って、この数字、概算程度と見なすべきものでは。

 このうち3分の1は、外国人といっても、韓国・朝鮮籍。実際どんな人達が残っているのかわからないし、来日する学生がどの位いて、労働力を提供しているのかも、簡単に調べることができそうにないから、残念ながらよくわからい。ここは、捨象するしかなかろう。

 ともかく住民の数で多いのが中国籍だ。東京では、鮨屋も含め、飲食店には必ずと言ってよいほど中国語を話す店員がいるから、当然だろう。23区あまねく分布しているようだが、韓国・朝鮮籍が多い地域と重なっているような感じがする。
 目立つのは、新宿区。そらに新宿駅とJRで繋がる北側の区も多そうだ。さらに、江東区や大田区も。

 新宿区は、新宿駅の西側がオフィスビルが乱立し、東側が商業地域でその北側が歓楽街だ。しかし、新宿駅から遠く離れてしまえば住宅地と、それに対応した商店街といったなんということもない地域になる。(そんな地域にフランス人は惹かれているのだろうか。)
 外国籍の人が集中しているのは、新宿駅北側の淀橋と呼ばれていた地域で、大久保駅に近い柏木(百人町)一帯だ。おそらく、人口では、新宿区民の1割にすぎまい。従って、この地域で見れば外国人籍は3〜4割ということになりそうだ。相当な密度である。
 この地域は、どうも、1980年代から韓国・朝鮮籍の人が急に集まるようになったらしい。それが中国籍者の増加を誘引し、これに加えて、次山々と異なる国籍の人が混ざっていったようだ。そんな経緯だから、労働力活用目的で外人住居が作られていった訳ではない。従って、滞在目的も千差万別だろうし、個々の生活パターンもバラバラだろう。従って、実態がつかみにくい地域だと思われる。
 ただ、これだけの非日本人人口があれば、全く異なる消費需要であっても、規模の経済が働くから、それこそエスニック型地場産業が育ってもおかしくない。新宿の雑踏や歓楽街と繋がり、新しい文化を生み出す原動力になる可能性も秘めている訳だ。と言うより、おそらくそんなバイタリティがあるから、大きなトラブルもなく一大エスニック地域をつくりあげてしまったと見た方がよだそうだ。

 新宿区とは様相が全く違うのが、江東区、江戸川区、大田区。
 これらは、東京では母子・父子世帯数が一番多い区でもある。もちろん、高齢世帯もかなりの数だ。区としては負担が重くのしかかっている。ただ、騒ぎが発生しないから、自治体は、できる限り手厚い支援を進めているに違いない。それなくしてはこの地域から人が消えかねないから、ある程度は止むを得ないと言ってもよいだろう。ただ、意味の薄い公共工事や、ハコもの運営費を直接ばら撒くことで、地域経済を持たせようとしなければ、今後、なんとかなるかも知れぬ。
 と言うのは、この地域は、住居から楽に通える範囲に、熟練度を必要としない仕事が十分ありそうだから。つまり、高収入は期待できないが、生活コストが十分低廉なので、健康なら、生活にはこまらないということ。
 もし、こんな仕事を提供しているビジネスが十分高収益で、今後伸びそうなら、地域全体としては発展性があるかも知れないのである。
 多分、そんな感覚があり、海外から人が流入してくるのではないか。
 例えば、仕分けや梱包などの物流がらみの軽作業や、食品や飲食サービス産業がらみの単純作業はこれからも増えていくと主う。新企画が増え続けるなら、単純作業の全機械化より、単純労働はヒトにまかせ、チェックを機械が行う仕組みの方が、低コスト高品質オペレーションを実現し易いからだ。
 そして、研究開発型や高付加価値型のビジネスも増えるなら、少量迅速生産型の工場が必要になることもは間違いなかろう。そこには安価な単純労働も必要となるのは当然。
 海外の真面目に働いてくれる労働者が、こうした地域に住みつき、そんな役割を中心的に果たしていれるなら、東京全体の生産性は上がっていくのではないか。

 ただ、この流れがスムースに進むとは限らない。北新宿地区とは違って、ここは東京でも古い地域だからである。昔からの地元向け家内産業や、地場の卸・小売業者が沢山あるということ。これらの業種・業態は、地域の生活コストを下げる波に洗われれると、たちどころも無く瓦解する。すでに多くの業者は転業や廃業に進んでいると思うが、それが面白い筈がない。従って、外国籍住人を経営悪化の元凶と見ていてもおかしくない。 しかも、これを利用しようと考える政治勢力もいるだろうから、結構厄介な問題だと思う。

 しかし、新宿地区にしても、江東区・江戸川区・大田区にしても、上手く伸ばしていく道はある。
 問題なのは、それ以外である。
 生活上の合理的な理由なしに、外国人が集まり始めていたなら、その動きには十分注意を払う必要がある。
 万遍なく23区に散らばるのなら問題はないが、特定の地域に、一つの文化の人達が閉鎖的な街を作ったら極めて危険である。治外法権区域ができかねないからだ。
 例えば、渋谷区広尾にはユダヤ教会があるが、その周囲がユダヤ人住宅地域になる兆候はない。しかし、それが他の宗教でも同じとは限らない。

 もう一つ注意することがある。
 それは、東京の場合、外国籍内でのコンフリクトが発生する可能性がなきにしもあらずだからである。
 外国籍と言っても、労働者階層だけではなく、ビジネスマンや外交官等といった管理階層の人も結構多いのである。発展途上国であるにもかかわらず、グローバル経済化のお蔭で、極めて高所得な日本在住者も少なくなり。つまり、同じ外国籍であっても、2層化しており、その間には深い溝が横たわっているのである。
 当然ながら、高所得なビジネスマンが好む場所は、大使館が多い港区・渋谷区。さらに、住環境とコストパフォーマンスから、目黒区から世田谷区へも広げている。両者が日本国内で分離されているならよいが、ビジネスで遭遇することもありうる。そこに、資本家と労働者という古典的な対立感情を持ち込もうと考える人は少なくない。そんな騒動をおこされても、止めようとすれば、火に油を注ぐようなもの。厄介である。

 --- 参照 ---
(1) 2007年版データ http://homepage2.nifty.com/shujutoshi/
(2) 特別区統計情報システム: TMSAALB全国籍別外国人登録者数 [2007]
  http://statwb.tokyo-23city.or.jp/ichiranbody.d2w


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