↑ トップ頁へ |
2009.2.23 |
|
|
アウトライン・プロセッサの話…アウトライン・プロセッサは何をお使いですかとの質問を時々うけることがある。どうも、論理的に文章を書くためには、どのソフトがよいか悩んでいる人がいるようだ。だが、話をきくと、たいていはがっかりさせられる。 古い本だが、Mintoの基本テキスト(1)を読んでいないからだ。ITとは全く関係ない内容だが、小生は、アウトライン・プロセッサのソフトを考える前にこちらに目を通すべきではないかと思うのだが。 この問題を間違えてもらってはこまるが、フロント・エンド・プロセッサ(かな漢字変換)はどれがいいかという話とは違うのである。 かな漢字変換は、小生はWindowsについてくるIMEを使っているが、ATOKを使っていたこともあった。もっと昔は、Macだったから、ことえりだった。確か、トラブルで借り物を使った時は、EGBridgeなどというものもあった。よくわからないが、相当な長短があろう。色々な人から状況を聞いて、検討するだけの価値はありそうな感じがする。 もちろん、アウトライン・プロセッサも同じように議論できない訳ではないが、目的が違うのである。 そして、もう一つおさえておくべきことがある。 普通に文章を書くだけなら、MS-OfficeのWordに含まれているアウトライン機能で十分なのだ。従って、ソフトの差など議論したくないのである。(だからこそ、このソフト市場がニッチ的になったということではないか。) しかし、文筆業者なら使い勝手がよいものが欲しいだろうし、プログラムを書く仕事人なら、同じような感覚で書けるソフトが欲しくなって当然。そんな人達は、専用のソフトが必要だろうし、比較も重要だが、一般の人にはどうでもよいこと。 さらに付け加えるなら、MS-OfficeのPower Pointにも、アウトライン機能らしきものがある。プリゼンテーション力を上げたいなら、これを活用してもよい。(但し、日本ではこの機能はほとんど活用されていないと言われている。) この説明で、ご想像がつくと思うが、質問者は、アウトライン・プロセッサを用いると、企画力があがると考えているのであり、MS-Wordの持つアウトライン機能は埒外なのである。 この見方には、一理ある。ただ、この要求に合うようなソフトを使うと、どうして力量があがるのか、十分理解しておかないと、逆効果の可能性もある。よく注意した方がよいのではないか。 と言うことで、老婆心ながら、書き留めておくことにした。 何から語ればよいか迷うが、やはり、ワープロとか、アウトライン・プロセッサという言葉を整理しておく必要があろう。 そこで、小生の感覚で、勝手に分類し特徴を示した。IT業界の常識に合っていないかも知れないのでそのつもりで。 【0:フロント・エンド・プロセッサ】 【1:アイデア・プロセッサ】 ・書こうとする題材につながるタネの収集ソフトである。 (情報の網羅的整理とそこから派生するアイデアの創出が主たる役割である。) ・定番がある訳ではない。 (KJ法をプログラム化したものが広く使われていることはなさそうだ。) ・2+x種類あると見ている。 TypeA: カード情報化(解析して基本構成要素に分割)して樹状型に整理 TypeB: メモを作り階層型データベース化(情報の中身を判断し分類) TypeO: 上記に曖昧性を加味した整理方法を導入 (例1) 主題からキーワードで展開 (例2) 樹状や階層でなくグループ化や連関表示化 (例3) 解析的な整理でなく直感方式 【2:狭義のアウトライン・プロセッサ】 ・文章を構造化(章立て作成・推敲)するソフトである。 ・標準形式があるとは言いがたいし、クリッピング/インポート機能は不完全ではないか。 (Outline Processor Markup Language(2)は一応あるそうだが。) ・2種類あると見ている。 TypeX: 長文見出し整理(折り畳み整理) TypeY: 多数原稿の合成(分割整理) 【3:テキスト・エディター】 ・テキスト入力に、フォント、語句・文法調整や必要なら説明挿入図作成が加わったソフト。 【4:DTP・レイアウト・ソフト】 ・文章印刷イメージの整形が基本。これに、図表等の取り込み方や組版が入ることもある。 【他:付加的なフォーマット変換支援・ソフト】 ・ウエブ掲載(HTML化)支援といったもの。 ワード・プロセッサーとは、上記を統合したようなもの。ただ、1の機能はほとんど無い。中心は言うまでもなく3。ただ、前述したように、パソコン用のソフトは2も取り込んでいる。 市場から消えてしまった、単機能の日本語ワープロ機で考えると、上記の分類の意味がわかり易いかも。 ワープロだから、3が中心に見えるが、実は4である。ほとんどの場合、プリンターは専用であり、入力したイメージ通りに印刷されるように最適化しており、使いやすいというのがウリなのだと思う。このことは、主目的は清書であって、文章の創作ではないということ。従って、フォーマットの互換性は考えないし、1の機能など不要。2の機能もあったとしても目次作りといった程度である。 アウトライン・プロセッサで創造性を上げようという場合、重要なのは2ではなく、1である。ただ、実用性があるのは、2と統合されたものと言ってよいのではないか。そうでないと、アウトプットがはっきりせず、成果があがったのかよくわからないことになりかねまい。 それでは、何が問題で、何が意味があるか、整理せずに記しておこう。お役に立つかはわからないが、批判的な視点からこの見方を再構築して、ご自分なりの結論を出すとよいのではないか。 ・固まった構想があると、メモを貯めていく方法は、確かに効率的である。 ・ただ、書き方を規定しているから、それにあわせることを重視するので、どうしても発想は萎みがちになる。 ・見出し作りや、構成要素化を気にし始めると、一気に文章を作るスタイルができにくくなる。 頭に思ったことを断片化せずに、吐き出す作業が上手くいかなくなる可能性はかなり高い。 (小学校で受けた、長文の作文教育のせい。) ・思わぬ組み合わせに気付く可能性は減り、陳腐な整理になりがちである。 ・樹状整理とか階層構造とは矛盾を容認しないことを意味する。 インスピレーションで矛盾が、新しい秩序で整理される画期性は期待できない。 ・それと、バッサリと切り捨てることを躊躇しがちになることもあろう。 勇気をもって乱暴な決断をする切欠は滅多に生まれないと言ったらよいだろうか。 この結果、キレが悪い話ができあがる。 ・換言すると、誰でも考えるロジックで迅速に整理するには便利ということ。 だが、斬新なロジックは滅多なことではうまれないということでもある。 まあ、常識的な話で終わる訳だ。 ・しかし、これは、ある意味便利である。 人を説得しやすい方法論であることは間違いないからだ。 その点では、間違いなくお勧めである。 ・この階層構造に慣れてくれば、問題の深堀もできる。 企画案の整理にはうってつけ。 ただ、イノベーティブなものが生まれるとは思えない。 ・それを嫌って、インスピレーションを求め、曖昧な整理方法にしたりする流れもある。 だが、かえって頭が働かなくなるのがオチだろう。 (小学校で受けた、文章でものごとを考える方法論のせい。) ・もう一つの問題は、整理された記載項目の重み付けの表現が難しい点。 整理に用いた秩序感とは別な感覚であるが、これについては、どうしても表現が稚拙になってしまう。 これは、全体観を鈍らせるもとになる。 ・物事を並列的に考えたりしない場合、階層構造で検討し始めると、構成要素が固定化するきらいがある。 最初に作った枠から抜け出られなくなり、発想が広がらないということ。 ・構造化すると全体は見やすくなるが、細かな部分は全く見えなくなる。 それが、全体像把握にプラスに働くとは限らない。 ・文章を書いていると、頭にイメージが浮かび、新しい発想が生まれることが結構多い。 構造化作業を重視するとそれは期待できなくなる。 (小学校で受けた、ともかく書くという教育を受けているせい。) ・色やグラフィカルなまとめ方と肌(文化)が合わないと、発想が貧困化しかねない。 尚、小生は、斬新なアイデアが欲しいなら、手とそれに馴染む文具を使うのが一番だと思っている。 パソコンを文具同様に扱う人はよいが、そうでないなら手書きをお勧めする。そして、アウトライン・プロセッサ利用のスキルをいくら高めたところで、凡人には、新しいコンセプトを生み出すことは無理と割り切ること。抽象論は、比喩的な頭の使い方が必要であり、それから遠ざかるような方法論がプラスに働く筈がないからだ。 ただ、すでに述べたように、Mintoのように、論理的に整理したいなら、アウトライン・プロセッサを活用するのは悪くない選択である。 それは、普通の企画書作りにほかならない。それなりの分析能力があれば、アウトライン・プロセッサを活用して、質の高いものを作れる。もっとも、ソフトに慣れるのに時間がかかる人は別だが。 --- 参照 --- (1) Barbara Minto[山崎康司 訳]: 「考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則」["The Pyramid Principle"] ダイヤモンド社 新版1999年[原著1987年] Mintoのサイト http://www.barbaraminto.com/ (2) OPML http://www.opml.org/ (鉛筆のアイコン) (C) Free-Icon http://free-icon.org/ 侏儒の言葉の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
|
(C) 1999-2009 RandDManagement.com |