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2009.12.28 |
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ユニクロ好調を眺めて…〜 不況でも、優れた経営の企業は成長を続けているとの話がとびかうが。 〜先日、散歩していたら、整理員がでるほどの長蛇の列に出くわした。何かと思ったら、イタリアンレストランのお客さん。ラーメン店はあるようだが、これには流石に驚いた。 と言うのは、ずいぶん前のことだが、閑散としていたから。特段に優れた料理との印象は受けなかったが、そのうち混むようになってきた。そして、ついに大繁盛店となった訳だ。しかし、ここまで人気がでるとは。 不景気で外食産業は苦しいと言われるが、業容急拡大のお店もあるということ。
外食単価が急低下と騒がれているが、いくら不況だといっても、エンゲル係数が高かった時代でなない。「十分なカロリー」の食事を「手軽に短時間で」済ませる“労働食事”を提供できれば喜ばれるとは思えまい。成熟社会の不況は知恵さえあればなんとかなるのだ。 「日経2010年版市場占有率」(1)を眺めるとその状況がよくわかる。衣料品販売業は苦しいと言われているが、絶好調のカジュアル衣料専門店もあるからだ。 コンビニ、ドラックストア、スーパーにしても市場は拡大している。マクロでは消費者の支出が絞られているが、知恵の働く企業は業容を拡大し、漫然と同じ売り方を続ける企業が沈没していくということでは。
・・・という手の話に興味がある方は、本屋には沢山並んでいるから、お好きな本をお読みになることをお勧めしたい。 〜 成功話本の読みすぎには注意した方がよいのでは。 〜 成功企業の逸話や、その教訓話を満載した本は山のようにある。しかし、売れる本はパターンが決まっていると聞いたことがある。 一番多いのは、ビジネスモデル論。新しい時代に合わせたビジネス展開はとりあえず知っておく必要があるということで誰もが読まねばと感じているということか。一昔前なら、これにIT利用を被せるだけでいくらでも売れたとか。今は逆らしいが。 次が、企業文化論的な話。従業員が経営者とともに頑張ったことにハイライトを当てた話。オペレーションの効率化を全員野球で徹底したとか、一人一人が知恵を絞って競争優位発揮にこぎつけたという話。 そして、こうした本の基本的ストーリーはだいたいは同じで、正しいとわかっていることを愚直にやって成功につなげたというもの。わかっていることを実行するのは難しいぞという話にするらしい。 確かに、それは間違いではないが、そんな本ばかり読んでどれだけ役に立つのか疑問を感じる。 それを強く感じさせられたのは、若手の日本の経営学者の愚痴。アンケート調査結果しか材料が無く、あとは出版物に記載されている成功話をまとめるだけになってしまい、気分的に落ち込むというのだ。まあ、わかる。 それはともかく、目標をはっきり定め、愚直なまでに真面目に全力で取り組むという話をいくら読んだところで、たいしたことはできないのでは。重要なのは、どうしてそんな目標になったのか、それがどうして妥当と納得できたのか、そんなところでは。 そこを書いている本はほとんどないらしい。 その手の本ばかり読んでいると、構想力不足に陥るのではないかと心配である。 折角のチャンスを見逃しかねないからだ。 〜 ファーストリテイリングの成功教訓をそのまま受け取ったのではつまらぬ。 〜
印象としては、青山商事の仕組みを踏襲したカジュアルウエア番で、Supply chain Managementを徹底強化したビジネスとなるかも知れない。 しかし、それではできそうにないのは海外展開。GAPを越える根拠がよくわからないからだ。しかし、ついに海外事業が軌道にのり始めたようである。これは大変身と言ってよいのでは。 ここら辺りを、ご自分の立場で考えてみることをお勧めしたい。 と言っても何がなんだかわからないか。ご参考までに、アパレル業界を知らない素人ならこんな風にも考えるという一例を書いてみようか。 なんといっても面白いのは、ファーストリテイリングの商品がカジュアル品であること。SAP(製造小売業)の世界では、ご存知のようにGAPが圧倒的な存在感を示してきたのだが、その商品に流れる思想は全く違うのではないかと思う。UNIQLOはあくまでも、日本調の商品ということ。ここが重要。 米国調というなら、一番分り易いのは、単なる無地のTシャツ。こちらは昔からanvilが有名である。米国企業の宣伝に使われる印刷シャツにはこのマークが入っていたからだが。着易い形と、まあ丈夫な布で、あとは色彩感覚というところか。これに対抗する後発は余程のイノベーティブな仕掛けを持たないと難しかろう。 対GAPで競争するのも同じことが言えよう。 しかし、米国調の製品ガチンコ勝負にならそうだが、日本調で行けば話は別だ。普通は、アパレルではそんなことは難しいと言われてきたが、それを上手く実現しているのではないか。 かつての日本企業の飛躍と似た勝利のパターンである。 “安かろう悪かろう”ではなく、“廉価なほうが品質が良く機能も優れている”ことで躍進したことを思わず思い出さざるを得ない。 何を言っているかおわかりだろうか。標準的な仕様を旨とするカジュアル品なら、規模が大きい米国市場にあわせた商品が圧倒的な強みを発揮するのが普通だ。ただ、アパレルの場合は“安かろう悪かろう”が売れているということでもないと思う。 ジーンズに象徴されるように、米国でのカジュアル感とは、言わばザクッと感。従って、縫製が雑であることは場合によってはプラスに働く。そこが嬉しさかも知れないのである。ただ、着心地が悪い型は駄目だと思う。 しかし、この文化は日本では受け入れられまい。カジュアルだろうが、縫い目まで気にする人は少なくないし、細かな配慮が要求されるのが普通。それがわかるのがボロボロのジーンズ。日本に入ると、様々な嗜好が凝らされる。セレブの真似半分とはいえ、どのようなボロかという品質にこだわるのだ。これこそ日本調。 この状況だと、日本調の商品は海外では受け入れられないということになる。 しかし、本質的なニーズを考えれば、米国調の商品が嬉しいものかは疑問が湧く。高品質高機能で廉価な商品を嫌う理由などないからだ。従って、日本調商品を主流にすることもできる筈なのである。 UNIQLOはグローバルに消費者の琴線に触れる魅力を持ち始めていることを見ると、(5)それは理屈ではなく、現実なのだと思う。従って、この成功話から、様々な教訓を得られるのではないか。 何を言いたいのかおわかりになるかと思うが、ドメスティクな商売しかしていない企業も、グローバルな大企業に変身するチャンスがあるということ。 これがグローバル化した時代の経営の醍醐味では。日本調の良さをグローバルに通用するようにもっていけば、可能性は一気に広がるのである。 要は、自分の土俵の方に流れをもってくるということ。 〜 ファーストの意味を考えると面白いかも。 〜 ともあれ、ファーストリテイリングの強みは企画から製造・販売までの一気通貫の仕組みにある。だからこその社名なのだと思われる。(もっとも、マスコミの用語原則からいえば、ファースト[first]でなくファスト[fast]だが、日本語としては秀逸な名称かも。) そんなところも考えたいポイント。言うまでもないが、アパレル業界ではファスト[fast]と呼ぶ。そう呼ばないのは外食産業のファースト・フードである。 ここでの展開は面白い。fast v.s. slowという意味の筈だが、現実にはなんだかわからなくなっている。言ってみれば、スローフードのファーストフード化とファーストフードのスローフード化という訳のわからぬ動きが生まれているからだ。こんな動きに火をつけたのはおそらく日本での動きだと思う。 スローフードと言えば、本来は時間と手間がかかり易い地場食材の調理品を出すお店。イタリアンなどそんなものと思っていたが、日本ではスパゲッティを短時間で提供する仕組みがすぐに開発されたりする。冷凍化とか、スパゲッティに切り込みを入れ短時間茹でを実現したりする。これこそ日本調商品の典型ではないか。 一方、正真正銘のファースト・フードに、今までスローフードとされていた食材を持ち込んだりある。安直に提供していた食の内容を、材料から吟味するということ。スローフードが健康食というのなら、その良さを取り込もうということ。マスコミの「slow food v.s. fast food」キャンペーンを逆手にとる作戦である。秀逸。これも日本調そのものではないか。この手の作戦は食生活が単調な国では難しいのである。 しかし、こうした日本調の良さが、本質的なニーズに合致しているなら、世界を席巻するようなビジネスになってもおかしくない筈。 〜 日本企業に飛躍の芽があるのでは。 〜 だいたいファーストリテイリングが競争相手とし意識しているのは、今は、GAPではなく、ZARAやH&Mらしい。ご存知のように、前者は小国のスペイン企業だし、後者はスウェーデンである。そんな国がアパレルの本場とは思えないではないか。 ZARAの凄さは、毎週2回の新製品投入と、発注後2日で店頭に並ぶといった、文字通りファスト販売に徹している点らしいが、そんな感覚に馴染む消費者がいる国だったということも大きいのではないか。 米国西海岸文化が色濃いGAPとは違うし、米国東海岸文化臭さを醸し出すbercrombie & Fitchでもないということ。 それなら、日本企業も違う動きを起こせるのではないか。 と言えば、三宅一生の“PLEATS PLEASE”を想い起こす人も多かろう。まさに日本調の折り紙細工そのもので、素材も単なるポリエステルで丈夫だし、たためる。機能性抜群の上に、おそらく着心地も素晴らしかろう。 価格も違うしインナーだが、アナロジーとして、UNIQLOのヒートテックを持ち出したくならないか。日本調の良さが海外でもわからない筈はないと思う。 お歳暮にしても、美麗な箱ばかりで無駄とされる日本文化だが、細かいところまで美しく無いと気分が悪いのだから仕方あるまい。だからこそ、カニカマのような食品が生まれたのは間違いあるまい。今や世界商品に成長しているのではないか。これも日本調そのもの。廉価でも、細部にまでこころ配りされている商品の嬉しさを理解してもらえるかが勝負ということ。それは、常に各論となる。 廉価である必要もなかろう。化粧品の競争は凄まじいものがある。ドラッグストアを支える重要な商品だが、様々なサンプルを使っているだけで購入すう暇もないとのではと思わされるような状況なのではないか。しかし、それらが世界を席巻する可能性もあり得ない訳でもない。 ただ、日本と海外文化の違いは大きいから簡単ではない。そう思うのは、小売業Sephoraの日本での失敗を見ているから。開店直後に見た人は失敗を確信したのでは。香水の棚が広く、カウンセリング商品を並べているからだ。しかも、有力ブランドが完璧に揃っている訳でもなかった。Bootsも、やはり、わかっていなかったように思う。 ところで、間違えてはこまるが、日本調とは、なにも素材の機能性を徹底追求するだけはない。 原宿から渋谷にかけては、それこそ雑多なファッション文化を生み出す力がある。閉塞感もなんのそのという強烈なものだが、そこに本質的なものがあるなら、ビジネスに」取り込めば世界に飛躍するかも知れないということ。 知恵さえ生み出す組織をつくり上げることさえできれば、投資家はついてくるもの。世界中でとマネーが投資先を探して蠢いているのだから。 冒頭で述べたように、日本企業の大半はこれとは逆に動いている印象が強い。現行の仕組みの効率化に邁進しても、知恵が出ない方向に進めば元も子もない。日本調を大事にすると力が出るのは、そこに知恵を生み出す仕組みが残っているからである。海外の真似で競争力をつけて、日本市場で楽勝というのが日本の成功物語のほとんどだが、そろそろそれを止めたらどうだろうか。 --- 参照 --- (1) 「日経2010年版市場占有率」 日本経済新聞社 2009年10月23日 http://www.news24.jp/articles/2009/11/06/04147275.html (2) “play well”のデンマーク語“leg godt”の略語 (3) Katie Roberts: “Lego bucks financial trend” Toy News [2009.2.23] (4) http://www.fastretailing.com/jp/ir/library/pdf/factbook200908.pdf (5) Carola Long: “Plain and simple: The Uniqlo formula” The Independent [25 June 2009] http://www.independent.co.uk/life-style/fashion/features/plain-and-simple-the-uniqlo-formula-1717795.html 侏儒の言葉の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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