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2010.5.17 |
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口蹄疫対応に見る地方政治の質…スーパーで国内産肉の特売が盛んだという。売れなくなるとこまるので、その前に一気放出しようということかも知れぬ。メディアは畜産分野にはたいして興味がないようで、ニュースにもならないようだが、ビジネスの現場はとうの昔に動き始めた。ご存知だと思うが、口蹄疫が宮崎県で発生したのである。ヒトに感染しないので、消費者には関心が薄いが、業界は一大事である。ただ。韓国や中国でも発生しており、予想の範囲であるから、発生したこと自体はそう驚くことではない。 しかし、ニューズ報道を読むとそうはいかなくなる。 宮崎県では、“殺処分した家畜を埋める場所が十分に確保できていない”(1)というのだ。 感染家畜が未だに生きているということを意味するのだろうか。本当だとしたら、とんでもない話である。 この疫病は即座の殺処分が当たり前。死体運搬を避けてその場で埋めるのだ。 蔓延防止には、ウイルス発生源を一早く断つしかないからである。 感染防止のための徹底的な消毒作業を行ったところで、一頭、一匹でもウイルスを放出していれば、せっかく対処していてもほとんど気休めになってしまう。一個体からのウイルス放出量が多い上、その感染力も強いから、どうにもならないのである。当たり前だが、ウイルス運搬者は車、ヒトだけでなく、犬、猫、野生生物といったすべて。風にのって運ばれる可能性もあるとされる。空気感染するウイルスなのである。 従って、“Within 24 hours our entire herd of 180 cattle and 200 sheep had been shot and buried”(2)が常識的対処。発生地の近隣だと多少余裕を見るにしても、普通は48時間以内では。 いくら地域を閉鎖しても、ウイルス発生源を絶っていないのなら、広域罹患の危険があるということ。一体、この県は、何を考えているのか。 どうせ、地方は国に対処してくれないと責任を転嫁し、国は逆の対応をとるのだろう。そんなつまらぬことで時間を潰さず、危機なら大騒ぎするべきではないのか。それこそ、法律では無理なことを要求すれば、ことの重大さが伝わる筈である。 ところが、県が動いた兆しはない。風評で、肉の売れ行きが落ちるから、できるだけお静かにという姿勢でなければよいが。 想像するに、こういうことか・・・。 1 知事に重大事態発生との認識がない。 すべて担当者にまかせる体制のまま。 2 県が上手く対応しても、政治的得点を稼げるとは思えない。 あえて余計なことをしない。 1は、よくある話。日本の地方政治家はお神輿に乗っているだけのこともあるし。ともかく、この手の危機にはえらく鈍感なのである。 だが、知事は勘定高い政治家のようだから、2と見た方がよいかも。なにせ、いくら被害が甚大だろうが、被害は産業であり、人の健康問題ではない。自分の責任とされないなら、他者を徹底批判し、補償金でもバラまけば感謝されるかも。それに、民主党政権だから、強い姿勢で臨めば、多大な金銭が降ってくる可能性も。それこそ、地方政治家冥利につきるというもの。 ちなみに、県の「農政水産部:畜産課」の頁(3)を見ると感覚がよくわかる。先頭の記載は、“家畜の改良及び増殖に関すること”で始まる「事務分掌」。次が更新情報。2008年6月13日の次が、2010年5月12日の「口蹄疫に関する情報提供について」。伝えたいことなど滅多にない部署なのである。 これが地方自治体の活動の実態。この県が特殊な訳ではない。 それでは、知事の顔写真が載っている県の看板ページでは何を訴えているだろうか。勘の良い方ならすぐわかるかも。 ・・・“口蹄疫被害に対する義援金を募集します(5月13日)”(4) --- 参照 --- (1) “宮崎で新たに8頭が口蹄疫の疑い” 産経新聞 [2010.5.13] http://sankei.jp.msn.com/affairs/disaster/100513/dst1005130004000-n1.htm (2) 'Nobody knew who would be next' BBC [21 February, 2001] http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/1181965.stm (3) http://www.pref.miyazaki.lg.jp/soshiki/nosei/chikusan.html (4) http://www.pref.miyazaki.lg.jp/contents/org/fukushi/fukushi/shakai_fukushi/html00165.html 侏儒の言葉の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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