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2010.7.8
 
 


メキシコ湾海底での原油流出阻止策が気になる…

 メキシコ湾海底油田からの原油流出については、多量の報道と解説がある。個々には、わかる話だが、どうも全体像がわかりにくい。それが、なんとなく心配である。

 そもそも、原油流出といっても発生地点は深海。流出状況を調べるといっても限度があろう。素人目には、その割には、思った以上に調べているように映る。しかし、いくら注力しても、得られるのは、映像と周囲の環境データだけ。こんな情報が、対応策立案にそれほど役に立つとは思えまい。正確な状況把握だけでも大事だと思われる。
 “Deepwater Horizon Response”(http://www.deepwaterhorizonresponse.com/)のサイトも充実している。これより格段上の対応も難しかろうし、さらに注力したところで、今以上の効用もさそうである。
 こんなことを言うと、そういう話ではないと言われそうだが、リアリズムに徹すればこんなところ。

 従って、メディア報道も難しい。報道するといっても、たいした材料がないからだ。その結果、記事は、責任追及トーン一色。
 要するに、安全性を犠牲にしたことが一番の問題であると指摘し、これに、規制当局の杜撰さを示唆する話を絡ませるというもの。
 それはそれで意味はあるのだが、大きな問題を忘れてはいないか。

 この大事故は、ミスや怠りが原因で、海底地層が大きく割れたという訳ではなさそうだからだ。
 安全軽視とか、いい加減な対応で発生したのは狭い視点ではその通りだが、本来はその程度で発生した事故なら、原油流出は一時的なものであった筈。
 この事故はそんなものとは違う。
 注目すべきは、安全弁が働かなかったという点。ここが肝心要。

 小生は、深海掘削設備の安全担保の仕組みは、チェルノブイリの原発のようないい加減なシステムである筈がない思う。
 誤って、深海に自然噴出口を作ってしまえばとんでもないことになるのは当たり前だから、万が一にもそんなことが無いようなシステム設計にしてあるに違いない。つまり、現場がいかに手抜きをしようが、それこそ、海面の基地が崩落し、パイプが折れたところで、原油噴出を放置せざるを得ない事態だけは避けることができる設計になっている筈だ。それが、機能しなかった。根本的な欠陥があったということか、予測の範囲を超えたことが発生したのかのどうちらかでは。
 おそらく、海底の噴出口の巨大設備が最終的な安全担保役。どんな噴出になっても、それを止めることができる超重量級バルブ機器を設置していた筈。
 ところが、この機能が幻想にすぎなかった訳だ。

 ところが、これほど重要なことなのに、記事を読んでも、よくわからない。機器不調とか、人為的な操作間違いで動かなくなったということがあり得るものか、はっきり記載されていないのである。
 この状態で様々な対処策を試していて、大丈夫なのか大いに気になる。

 何故、そんなことにこだわるかといえば、噴出内容物が予想の範囲を超えた可能性があるからだ。
 まあ、ともあれ、このバルブより強力な噴出阻止装置など考えにくいということ。従って、この噴出口からの流出を止めることは無理だろう。
 そうなると、逆向き漏斗を被せるなどして、噴出物をできるだけ沢山回収し、ガスは海上で燃焼させ、液体は専用巨大回収船で運んで処理する以外に手はない。
 言葉では簡単に言えるが、とてつもない費用が永続的に必要になる。巨大石油企業には膨大な資産があるとはいえこ耐えられるものかはなんとも。最大の課題はココにあるのかも。

 ただ、そうなると、素人でも考え付きそうな代替案に向かうのは必然。お金と時間はかかるが、抜本的対処策を試みることになろう。
 当該噴出口辺りを別途切削し、現在の流路を無効にすればよいのだ。常識的には、なんとかなりそうな手段だ。
 しかし、それが正しいと言えるのかよくわからなぬ。安全担保設備が働かなかった理由がわからないからだ。
 この油井特有の異常条件で機器が稼動しなかったとすれば、従来の理屈では対応できない地域ということで、さらなる掘削は考えもの。
 そういう話でなければよいのだが。


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