■■■ 多摩動物公園の見所 2013.3.10 ■■■ コアラ 多摩動物公園のウリは、ライオンバスとコアラだった。過去形では失礼で、今も引き続きということだが。 なにせ、コアラを国内で見るには、限られた動物園に行くしかないのである。関東地区には3箇所もあるとも言えるが、そんな見方が通用しない分布状況である。 (関東) 多摩動物動物園[日野} こども動物自然公園[東松山} 金沢動物園[横浜} (名古屋) 東山動植物園 (関西) 天王寺動物園 王子動物園[神戸} 淡路ファ−ムパ−クイングランドの丘 (鹿児島) 平川動物公園 (沖縄) 沖縄こどもの国 これを多いと見るか、少ないと見るかは、考え方ひとつ。 オーストラリアの観光資源だから、流出管理が厳重なこともあるが、費用の方も膨大なので、おいそれと展示に踏み切れるものではなさそう。特定のユーカリの葉を毎日与える必要があるから、おそらく食餌代金だけでも年間数千万円かかるだろう。これに、他の動物では考えられないような緻密な環境維持や健康管理の負担が重くのしかかる。一大出費の覚悟無しではコアラ招聘などと口に出せるものではなかろう。 素人からすれば、よくぞここまで揃っていると感心するほどの数だ。 だいたいこの手の特殊な食性の動物をヒトに直接触れさせるような観光資源にすること自体がとんでもなくおかしい。新規病原菌にはとてつもなく弱いに決まっており、世界中からわからぬ菌が持ち込まれる状態にしておいて、コアラ保護でもなかろうと思うが。 コアラはカンガルーやエミューと違って、家畜化あるいはペット化できる動物ではないのは明らかにもかかわらず。 そう感じるのは、天気の良い平日の真昼間、多摩動物公園のコアラ舎を訪れたら、人っ子一人いなかったから。寒い日だから、子供を連れて動物を見に来る人はいまいと踏んでのことだが、それにしてもずいぶんと変わったもの。他の人気者が増えて、One of themの地位に転落したということかも。 ただ、多摩動物公園のコアラの展示は思想性があるので立派である。コアラというより、動物園として、どう見せるかという信条が伝わってくるからである。 比較対照の動物園に行ったことはないが、名古屋と関西の大施設の案内を読むとその違いは明らか。 ○東山動植物園 日本で初めてコアラが来日した動物園である。のは1984年のこと。ここは、動物園、植物園、スカイタワー、遊園地が併設されている巨大な複合施設。家族揃って遊んで下さいということだろう。子供を連れて、動物園にライオン、ソウ、サイ、キリンを見に行く時代と発想はそう変わっている訳ではなさそう。 ○王子動物園 こちらも複合施設のようだが、哺乳動物中心に人気者をしっかりと揃えている。見所も以下のようになっていそう。要するに「可愛い!」路線。 −−−ネコ科の毛皮が美しい猛獣:肉食獣 ↓ −−−超大型動物(ゾウ) ↓ −−−子供が喜ぶ可愛い動物達 ・縫い包み的人気動物(コアラ) ↓ ・人気陸上小動物(レッサーパンダ、プレーリードッグ、スローロリス) ↓ ・人気樹上小動物(リス、[小鳥]) ↓ ・人気水上小動物(カワウソ) ↓ ・家畜ペット系動物(山羊) ↓ ・ふれあい動物(飼い兎/羊) ↓ ・家畜ペット系小動物(モルモット) ↓ ・面白い珍種(ヤマアラシ、カピバラ) ↓ −−−肉食獣2(犬猫系→夜行性→熊系) ↓ −−−異種感芬々の動物1(ナマケモノ、[ワニ]、コウモリ ↓ −−−草食動物(キリン、ラマ、カンガルー、シカ、サイ、カバ) ↓ −−−[ペンギン] ↓ −−−異種感芬々の動物2(オオアリクイ) ↓ −−−猿/ヒト系(人気者含め猿11種、ゴリラ、チンパンジー、オラウータン) ↓ −−−水中動物(アシカ) ↓ 注目動物(ジャイアントパンダ) 施設配置の都合上の流れになっているとはいえ、まずは子供が嬉しがるような配慮が先に立っている印象が強い。 子供が、思わず、「コアラ可愛い!」と叫ぶ場所にしたいのだと思われる。 多摩動物公園のコアラ館は、これとはコンセプトが違う。そこは、オーストラリアの動物を見せる区域の拠点となっているからだ。 コアラと一緒に、フクロモモンガ+フクロギツネも眺めることになる訳で、その周囲にはエミュー/カンガルー+ワラビー/ウォンバットが揃っているのである。 興行的に成功しているのかはよくわからないが、意義ある展示方法だと思う。と言うか、カメラを抱えて動き回る人が増えているし、好みも多様化一途なのだから、従来型の「可愛い!」路線ではどうにもなるまい。と言って、知識学習の場にするほどつまらぬことはない。思案のしどころだろう。小生は、のんびりとくつろいで、世界観を考え直す機会が提供できたら素晴らしいと考えているのだが、まあ、そんなことを言うのは少数派だろう。 たとえば、せっかくだから、ゴンドアナ大陸からオーストラリア大陸に推移した図や、現代の有袋類分布と、化石発掘地点の図とか、模型化石展示でもあれば面白いと思うが。そんなことをすると、興醒めな情報提供教育ボードを立てられたりしかねず、せっかくの自然景観を損ねるから考えものではあるが。 ただ、肉食獣が入ってこれなかったため、オーストラリアで有袋類が独自に進化したという説を暗記している人だらけなので、それを崩すような説明があったりすれば面白かろう。 北半球にも有袋類は存在していたのは明らかで、何らかの理由で絶滅させられたにすぎないことを説明したらどんなものだろう。肉食獣もオーストラリアに入った可能性も無いとはいえまい。それこそ、ヒトが草食獣を守るために、肉食獣を目の敵にして絶滅させたという仮説もありえるのである。ものごとはいかようにも解釈できることを学ぶには動物園はうってつけ。 エミューとカンガルーの肉を適度に頂戴するだけで生きていける社会を理想としていた人達の社会ができあがっていたのかも知れないのである。 突拍子もない仮説ならいくらでも考えられる。特殊な食性から見て、内臓で毒が造られており、これを摂取した哺乳類は繁殖できなくなって絶滅という可能性も。フグ毒は餌由来だからありえないことではなかろう。あるいは、もともと肉食獣には毒として働く草が生えていた可能性もあろう。古代のオーストラリアは植生が特殊だったかも知れないではないか。コアラが生きていけるのは、ユーカリとアカシアだらけの森という特殊植生だらけだったからだが、そんな地域が世界の他にあるとも思えまい。 ともあれ、肉食獣がいれば、コアラのような動物は早くに絶滅していておかしくなかろう。なにか秘密がある筈だと思うが。 ちなみに、食事を済ませたコアラ君に、手を振ったら、木からガラス窓のヘリに移って来て、しばらくごそごそ動いて存在をアピールしていた。本当は目がよく、好奇心旺盛な動物かも。 その後、コンクリートの床に降りて数m走ったりと驚くほどよく動く。 お隣も動きだしたりして、今度は一番高いところに上ったり。互いに全く気にしていないそぶりだが、実は、じっと観察していたりするのかも。 一日の大半を寝て過ごしている動物と聞いていたが、決してそういう訳でもなさそうである。その気になれば活発に動く動物とお見受けした。もっとも、そんなお姿を拝見できるのはとてつもなく幸運なことかも知れぬが。 だが、展示されている餌のユーカリを触ると、その行動には納得感あり。葉にはずいぶんと多様性があるからだ。いかにも消化が悪そうな堅くてとても美味しそうに思えないものもあれば、表面に白い粉がふいていて有効成分リッチそうなものや、アロマオイル様の香気が立ち上る手のものも。そんな刺激の強い葉を沢山食べたりすれば、そりゃ興奮してきて、動き周りたくもなろう。 ところで、糞になると、ユーカリオイル様香気は消え去ってしまうのだろうか。多少気になるところである。 多摩動物公園の見所−INDEX >>> HOME>>> (C) 2013 RandDManagement.com |