■■■ 多摩動物公園の見所 2013.6.23 ■■■

   自制心を持つようになったチーター一族

突然だが、「常同行動」の話しをしてみたい。自閉症の方に見られる動きを指すテクニカルタームだ。

傍から見れば、理由なしに同じことを繰り返すので、どうしたのか心配になる。それは本人の意思だからと放置していると、だんだん周囲との交流ができにくくなるので要注意である。と言うのは、どんな時だろうが、突然にして常同行動に入ってしまい、誰の言葉も耳にはいらなくなり、自分だけの世界に入り込んでしまうからだ。それが頻発すると対応が難しい。
おそらく、自発的というのではなく、無意識的にその状態になってしまうのだと思う。従って、防ぐ方法はわかっていない。

小生は、これは特殊な現象とは見ていない。ヒトとは多かれ少なかれ、こうした状態になる動物と見ているからである。俗に言う「貧乏ゆすり」など典型。電車の座席で長時間に渡り髪を弄くり続ける女性もよく見かけるが、「癖」と考えることもできなくないものの、同じようなものでは。
要するに、心地よい刺激が全く無く、ストレスを感じてしまうと、自動的に体が反応してしまうのだ。
自閉症の方は感覚が鋭敏で、繊細なところまで見つめてしまうので、どうしても発生し易いというにすぎまい。それに、多くの人は、子供のうちから、指しゃぶりを始めとして、常同行動が始まらないように徹底した訓練を受けているから、どうしても目立つということ。

当然ながら、常同行動はヒトに限らない。
動物園で飼われている動物には多かれ少なかれ見られるが、それは当たり前。毎日、数十Kmも移動するような生活をしているのに、コンクリートで囲まれた狭いケージに入れられれれば、どうなるかは自明。これで常同行動が出ない方が不思議。

チーターなど、時速100Kmで疾走するというのに、1秒で壁に激突するような部屋に入れられているのだから、耐え難いに違いないのである。しかし、その割には「常同行動」は少ない。
どうしてなのかつらつら思うに、ヒト慣れというか、ヒトの観察もなかなか面白いワイということではないか。

そう推測したのは、広い運動場での、とあるシーンを見たから。
丘のようになっている上部に伏せており、顔だけ出していたのである。よくよく見ればわかるのだが、ほとんどの観客は全く気付かない。一帯をジロジロ見回して、チーターさんお休みなんだと言ってすぐに通りすぎてしまう。決して寝ている訳ではなく、行きかう観客を上からしげしげと目を見開いて観察しているのである。ハハハ、俺の存在がわからないのか、といったところ。
特に、子供の集団は興味津々らしく緊張感が伝わってくるほどじっくり見つめている。ところが、その視線を感じる子供がいるのだ。存在に気付き指で指したりする。すると、なんの関心も持っていないとばかり、そっぽを向くのである。さらに、子供達が揃ってワイワイ言い出すと、顔を隠してしまったり。結構、意識して面白がっていそう。
こうなると「常同行動」発生の余地はなかろう。

猫族とはそういうものかも知れぬ。
ユキヒョウにしても、運動場出場メンバー入れ替えの時刻になると、岩山の上に登って隠れて観客を覗く体制に入ったりする。飼育員さんも仕方がないから、ホラホラ交代だゾと伝えに外に出てこざるを得ない訳である。それを待っていたとばかり、顔を隠したりする。天邪鬼というか、遊んで欲しいようだ。しばし、かけっこできればそれで満足して、ようやく出口から退場となる。
ヒトって結構面白い動物だと見ているとしか思えまい。もちろん、好き嫌いはかなり激しいようであるが。

ただ、チーターもガラス貼りの狭い方で観客に接しているときは「常同行動」的になることがある。そりゃ、今日は嫌な輩だらけで不快極まると感じる時もあろう。
ただ、そうならないように自ら対応しているとしか思えない態度を示すことも少なくない。観客側に顔を向けずにダラリと寝そべるのである。およそ緊張感に欠ける姿だが、ストレスで自爆しないように自制しているのでは。
ただ、カンガルーのようなだらしなさとは違う。耳を見ているとわかるが、観客が何をしていそうかそれなりに注意を払っているのだ。従って、こちらが関心を示していることをそれとなく伝えたりすると、顔だけ振り返る。興味を覚えると、知らん顔をして元の体制に戻るのだが、耳がピンと立ってこちらを向く。そのうち、なにげなく立ち上がり、ソッポを向きながら、歩き始める。そうこうするうちに、観客の前ですわり、場合によってはしげしげと眺めたりする。
フン、よく来たなという調子か。明らかに、情緒コントロールをしている。
ヒト慣れするとここまでできる訳である。

こんなチーターの姿を見ていると、猫族の知性の高さを感じてしまう。
想像にすぎないが、ストレスを感じると、動物は暴走してしまうようにできているのだと思う。ヒトでも、キレる人は少なくない訳で、スイッチが入ってしまえばコントロールが効かなくなるのである。チーターだって同じことで、自暴自棄にならないように、どう自制すべきか考えているのだと思う。
それができそうにないとなると、自分を守るために、「常同行動」のスイッチが自動的に入ってしまうのだろう。おそらく、「キレる」と脳細胞もダメージを受けるから、それを防御するための仕組み。

多摩動物公園のチーター一族は長生きしそう。
 多摩動物公園の見所−INDEX >>>    HOME>>>
 (C) 2013 RandDManagement.com