■■■ 多摩動物公園の見所 2014.1.21 ■■■

   チーターに見る飼い猫的性状

多摩動物公園のチーター一家は大繁栄しているだけあって、子供を持つ母親でも結構リラックスして生活していそう。観客が多いと、神経が昂りそうなものだが、慣れきっていてどうということはないようだ。
ただ、ピーチクパーチクの大勢のチビが覗き込むと、興味津々なようである。餌としてよさげな個体の目星をつける習慣が呼覚まされているのかも。

こんな大型猫を傍でじっくりと観察できる機会は滅多にないから、時間をかけてご対面を楽しむことをお勧めしたい。団体は来るものの、短時間で通り過ぎるから、一寸の辛抱ですむ。人気者の出番時間帯を避ければ、撮影マニアもすぐに消えるので、それこそ一対一で長時間顔を突き合わせることも可能。

そんな経験をすると、実感できることがある。
誰がみても、チーターは野生の大型猫だが、同じ野生でも、トラとは相当に違う種族。そりゃ当たり前だが、驚かされるのは、チーターの性状はどうみても飼い猫に限りなく近いという点。

勿論、分析的思考で検討した訳ではなく、全体から受ける直観的な印象。

なんといっても、特徴的なのは、ガラス越しで一対一になっている時の仕草である。招き猫のように前足を上に挙げることはないが、腰を落としてじっくりと座り込み、背は丸いものの、人間流に言えば背筋をしっかりと伸ばして顔を上げてシッカと前方を見つめ続けるのである。相手と目を合わせないことが多いが、チラリと合ったりすることはある。
コレ、飼い猫もよくやるポーズ。たまたま出くわして互いにビックリした後、その辺りに両者が留まっている場合は必ずこの状態になって固まる。人間様も座ってそれを眺めたりして。もっとも、そんなことは暇人しかできないが。
猫君にとっては、前足を揃えて、爪を仕舞っている状況を示し、静かにすることに大きな意味があるということ。多分、戦闘体制に入る気がないことを示しているのだろう。しかし、耳をピンと立てているから、一応相手を注聴しているとのサインは出しているのだ。多少時間が経てば、側ににじり寄ってもこの姿勢に変化なし。そして、時間だけが過ぎていく。気に召せば、小一時間でも続けていそう。ヒトはそれに辛抱しきれないから、それじゃネ、さようならにならざるを得ぬが。・・・なにがなんでも仲良くしたければ、それを我慢すべきなのだろう。さすれば、気にいってもらえればの話だが、肌の触れ合い的お付き合いに至ることも可能なのであろう。
この猫的ご挨拶の意味はよくわからぬが、仲間として認知しあえるかテストされている感じはする。
多摩動物公園のチーター一家はそのレベルで観客に接していそうということ。

ところが、トラはそうはいかない。
このような姿勢はとらないのである。4つ足を立てたままで、顔を多少挙げた感じで、前方を凝視する体勢をとる。長時間そのままということはないが、気になる観客だと、しばし、大きな目でじっと相手を眺め続ける。目が合ってしまうことも多い。
なんか御用かネといった感じである。煩い輩は消え失せろという意味なのか、はたまた、なんか遊ぶかネとのサインかはなんとも。ただ、敵対的な仕草では無さそうだから、興味を覚えた対象をしげしげと眺めているにすぎない可能性もあろう。

これだけで、チーターが虎より飼い猫に近い性状と解釈するのは余りに強引ではあるが、そうなるのは、彼等がリラックスしている時の姿でも同じようなことが言えそうだから。

チーターの場合、観客とのご挨拶に飽きてしまうと、ゴロッと横になる。
その姿勢だが、前足は揃えて前横方向に出し、上腕も伸ばした状態。ダラーと投げ出し、筋肉を弛緩させているのだと思われる。
それなら、腹這い状況がよさげに思うが、そうはしない。臀部を攀じることで、後足も同一方向に投げ出すのだ。要するに、横腹を見せる形で寝そべるのである。
人間だと、こんな姿勢は心地よくないどころか、無理な姿勢だから、すぐにやめてしまうが、チーターも飼い猫もこれが一番くつろげるようだ。この姿勢で長時間過ごすこともありそう。
従って、チーターがこの心地に入り込んでいそうなら、邪魔せずに立ち去るのが礼儀かも。観客と反対側を向いていることも多いし。

ところが、トラはこの姿勢はお好みではないようだ。皮がダブダブしているから、同じような姿勢の方が楽ではないかと思うが、腹の位置がお気に召さないようである。腹は見せず、スフィンクスのようにベタ座りしているようになる。しかし、よく見ると、後ろ足は片側に揃えて出しており、腰から臀部にかけて、体が捩れているのだ。モコモコ毛皮なので一寸見にはわかりにくいが、背骨の線が曲がっている訳で人間ならかなり辛いことになる。その線の延長上に尻尾があり、これを丸めているから、曲線が続く訳だ。どういう気分かわからぬが、後ろ足は動かさないのに、尻尾だけ時に位置を変えたりする。曲線の形が気に喰わぬのだろう。
そういうこともあって、前足の状況もチーターとは全く違ってくる。
肘と手先は伸ばして地面にべったりつけるが、どういう訳か、上椀は地表に垂直のまま。従って、イカリ肩になる。観客から見れば、緊張が持続していそう映りかねないが、この体勢でないと落ち着いて休めないようだ。飼い猫なら、とびかかる姿勢に移る前段と勘違いしかねない訳だが。そうでないことは見ればわかる。前足の爪先は脱力状態だし、頭が若干傾き、顔が下向きになっていて、正面の状況にもなんら関心を払っていないのである。

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