■■■ 多摩動物公園の見所 2013.3.27 ■■■

   アジアゾウ

多摩動物公園のアジアゾウ舎がリニューアル。♀ガチャの死亡以来、♂アヌーラだけの一頭住まいが20年も続いたが、孤児2頭が加わることとなったため。
 ♂アヌーラ(1953年:60歳)
 ♂ヴィドゥラ(5歳), ♀アマラ(8歳)
おわかりのように、還暦を迎えた象である。日本ではそんな雄象は類稀。従って、のんびり余生を過ごして長生きして欲しいと思っていたが、突如、新しい環境に対応を迫られることになった。大丈夫だろうか。どこか痒いだけかも知れぬが、なんとなく落ち着かない動きが多い感じ。
しかも、来園したのはメスだけではないし。
よく知られているように、雌象は飼い易いが、雄は厄介極まる。そのためどうしても親密な扱い方ができなくなるもの。そのせいか、日本の気候のせいかはよくわからないが、日本の動物園では雄象は長生きしないようなのだ。その点、♂アヌーラは例外的。メスの尻に敷かれて生活し、その後は観客の子供達の声援を愉しみにしながら、単独で気ままに過ごしていたからよかったのではなかろうか。

ということで、雄ゾウは日本に数頭しか飼育されていないのかと思ったのだが、どうもそうではなさそう。正直驚いた。以下のリストは、古いデータをもとにしたもので、間違ってアフリカゾウを含めたりはしていないとは思うが、なんともいえない。これが、だいたいのところ正確という前提での話なので、そのおつもりで。
 ---日本の♂アジアゾウ一覧(誕生年/推定含む)---
  アヌーラ(1953年)@東京-多摩
  ダーナ(1971年)@豊橋
    [太郎](1973年-2013年)@愛媛-とべ
  ダン(1974年)@長野-茶臼山
  チー(1975年)@名古屋-東山1
  ボン(1976年)@横浜-金沢
  ラウナ(1976年)@鹿児島-平川
  ラスクマル(1990年)@ズーラシア
  テリー(1992年)@市原ぞうの国
  マック(1992年)@神戸-王子1
  ランガ(1992年)@とくしま
  アティ(1997年)@東京-上野
  たいよう(2000年)@宮崎-フェニックス
  ラフル(2002年)@沖縄こどもの国
  コサラ(2004年)@名古屋-東山2
  オウジ(2007年)@神戸-王子2
  [不詳]@富士サファリパーク
雄は繁殖には不可欠だが、暴れるから、本場でも使役用の象は雌というのが通り相場。それを、ストレスが溜まり易い動物園で雄を飼育するのは、できれば避けた方がよいと思うが、それは素人考えなのだろうか。ペアにすることが良いというのは、当てにならない仮説かも。
実際のところどうなのかは知らぬが、動物園で飼育されているアジアゾウの寿命は短いとの主張も耳にする。(サイエンスの論文である。)幼児死亡率が高いのと、成熟してからの寿命が伸びないからだろう。芸をする先進国の象達は、運動量が少ないし寒いからどうしてもカロリー過多となる上、青草摂取量は極端に少なく、ご褒美の黒砂糖やバナナを食べすぎていそうだから、まあ妥当な結論と言えそうだが、母集団のとり方で数字はなんとでもなりそうなので、なんともわからぬが。
だいたい、人社会で暮らす象の場合、象使いと四六時中一緒に生活するパターンが普通。そうでなければ広い保護地での集団生活。その条件だと、還暦当たり前になるということだろう。なにせ猫族とは違い、柔軟な体躯ではなく、寝て起きるのも一仕事という巨大な動物だ。適度な日光浴ができる気候でもなく、走ることも不可能な狭い場所で飼育されれば、相当に辛いのは間違いなかろう。いくら美麗で清潔な飼育場所にしたところで、所詮はヒトの目で眺めての話でしかなかろう。長生きの条件としては劣悪なのかも。

井の頭自然文化園の♀はな子(1947年:66歳)は長寿とされているが、心が通う象使いと生活していれば雌なら70歳など驚くにあたらない数字。ヒトの方が短命で、象が悲しむというのが当たり前の世界である。ただ、これは雄象には当てはまらない。
たまたま、多摩丘陵の風土に合ったのか、はたまた周囲の人達と波長が合ったのか、雄象が還暦を迎えたというのはニュースである。アヌーラ君に会いに行くというのは動物園訪問として、なかなか意義深いものがありそうに思うがどんなもんだろうか。

どうも、動物園は希少動物を繁殖するスキルを身につけるべしというドグマが流行っているようだが、ことアジアゾウに関しては現段階の動物学のレベルなら無理に進めるのは考えもの。雪豹や蒙古野馬とは訳が違うからだ。
ただ、ゾウは江戸時代から人気動物。当然ながら、子象の誕生となれば大喜びの人だらけとなる。しかし、以下の状況を眺めて、そんな気になれるだろうか。
 ---日本でのアジアゾウ誕生すべて---
 2013年:♀−@東山動物園・・・♀アヌラ(2001)+♂コサラ(2004)
 2012年:♀ガーム@富士サファリパーク・・・♀テム+♂---
 2011年:♀マーラ[両前肢骨折]@豊橋総合動植物公園・・・♀アーシャー(1977)[@上野]+♂ダーナ(1971)
 2007年:♀ゆめ花@市原ぞうの国・・・♀プーリー(1991)+♂テリー(1992)
 −2004年:♀[約1年で死亡]@神戸-王子
 −2007年:♂[5年半で死亡]@神戸-王子
しかも普段なら扱い易くて優しくしていた雌象でも、こと子供が生まれれば、本能的に突如「切れる」ことはありうる訳で、当然ながら事故も多発する。飼育員も泊り込み対応となり、文字通り命を賭けての大仕事。しかし、いかに精力をかけようが、幼なくして死亡する例は少なくない。猫族と違い、狭い場所では子象は走れないから、まともな成育状態とは思えない。親象にもストレスが溜まるから、子象に八つ当たりするし、それがもとでの大怪我の可能性も極めて高い。そんなリスクを抱えながらの繁殖にどれだけメリットがあるのか、じっくり考えるべきでは。
上野動物園程度の広さの施設で、雄1頭に雌4頭も抱えていてよいのか、ということ。
 ♂アティ(1996年)
 ♀アーシャー(1977年)
 ♀ダヤー(1977年)
 ♀スーリヤ(1994年)
 ♀ウタイ(1998年)
小生は、♂アヌーラの長生き追求研究を期待していたのだが。逆の展開になってしまった。それが、社会的要請ということなのだろう。

(おことわり) この頁については、引用したウエブリソーシス一覧表記は省略させて頂いた。尚、一次情報が一般開示されていないようだから、上記のデータは間違っている可能性はかなり高い。そのおつもりで。
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