■■■ 多摩動物公園の見所 2013.4.27 ■■■

   インドサイ

多摩動物公園の犀の重さは3トンだそうだ。これで、車の速度で走るらしいから、体当たりされたらひとたまりもない。
しかも、皮膚はいかにも硬そう。鎧犀と呼ばれるほど。肉食獣の犬歯程度では歯が立たない模様。ただ、鎧板の切れ目があるから、そこは弱点だと思われるが。猫族だと、それでも試そうと挑戦しかねない変わり者もいる筈だが、どうにもなるまい。巨体で潰されるか、爪が弱いところをつかんだりすれば、振り回されて落とされた挙句に、角で体を切られるのがオチ。
ただ、それは成獣の話で、親から離れた子供は狙われるだろう。

弱視らしいが、遠くを眺めて天敵をいち早く見つける必要はないから、当然だろう。と言うか、天敵はヒト以外にあり得そうにない。そのヒトの武器とは、計略を立てること。いち早く存在を発見しても狙われていたら最後。下手に逃げようと全力疾走したりすると、仕掛けに嵌ってド壷に落ちることになる。勝ち目は無い。

こんな動物は滅多にいないから、釈迦の言葉を伝える最古の文献「スッタニパータ」にも犀が登場する。どうにでも解釈可能な内容だから、一部を読んでも意味ないが。・・・
  一切の生き物に対し、暴力を捨て、
  たとえひとりでも害することのない、その者は、
  子を望まずにあれ。
  〔いわんや〕どうして仲間を〔望むだろうか〕?
  犀のように独り遍歴されよ。
上記はWikiの訳文だが、中村元訳では最後の行が「犀の角のようにただ独り歩め。」となっている。そのため、読んでいると、頭がくらくらしてくる経典である。インド修辞学とはそういうものなのだろう。ちなみに、この経典では、冒頭から蛇の脱皮が17回のリフレイン。次に牛飼いと師の問答が続き、犀に入る。ここで、なんと「犀の角のようにただ独り歩め。」を41回も読まねばならぬのだ。"有角動物こと犀"は市井の人々に強烈な印象を与えていたことがよくわかる。
多摩動物公園の♂ビクラム君と、♀ナラヤニ君は仏教国のネパールから、子供の頃に来園したのだが、その名前は神様だと聞く。そういう動物の扱いな訳だ。

小生は、こんなところから犀角に邪気を除くイメージが生まれたのだと見る。それをいいことに漢方薬化が進んだ訳である。犀君にとっては、えらく迷惑な話だが。

それにしても、互いに独立して生活し、一族社会を形成するつもりが全く無いというのは、草食動物としては珍しいのではなかろうか。肉食獣が避けざるえない巨躯を誇る象にしても群れるのだから。群れる理由は色々あろうが、サイには当てはまらないということか。
 ・天敵の兆候をモニターする数を増やす。
 ・大群で動くことで、天敵が狙い定め難い状態を作る。
 ・群れで疾走することで、侵入した天敵を蹴散らかす。

多摩動物公園でも、旺盛な独立心に応えて、運動場が3箇所ある。深いプール付きタイプ、ぐるりと一周駆け回りタイプ、寝所建屋の裏の坪庭タイプ。展示用の前2タイプは頑丈が柵で仕切られてはいるが、互いによく見えるようになっている。互いに関心を示し合うことは滅多にないようだが、意識していることはある。どういう気分なのだろうか。まあ、雄同士と、雌雄の時では、全く違う対応なのだろうが。
そうそう、独立心というのは、一族内だけの話だけではないかも。実は、完全な独居ではなく、同居者がいるのである。インドガン。同じ故郷なのだから、仲よく暮らせばよさそうなものだが、そんな雰囲気は全く感じられない。鳥はそれなりに緊張しているご様子なのである。

ただ、それをヒト嫌い的な、交流拒絶型性格と見ると誤りのようだ。飼育員さんには懐くらしい。
♂ター君の場合、こすられるのが好きな場所があり、皮膚が柔らかいお腹や襞の内側ということだが、そこをブラシでこすってやると、リラックスしてえらくおとなしくなるという。そろそろティーンズを終える頃合だから、気難しくなってきそうだから、それがいつまで続くかわからぬが。
もっとも、家猫や豚も同じようなものだし、体面上言わないだけで、ヒトも似たようなものだろう。腹撫ぜは、親しい間柄になったことの象徴だと思われる。豚など、腹を撫でてもらえると、嫌いな水のなかにも入る位だ。余りの快感で我を忘れ水槽で横になりかけ溺れそうになったりする大馬鹿までやる。
だが、サイの大きさになると、コリャ大仕事。気持ちよくてドッと倒れてこられでもしたら、ヒトの体など一瞬にして潰れてしまう。でも、それに近いことをしている模様。爪きりをしてあげなければならないそうだ。
まあ、膝枕で耳掃除してもらってリラックスする大人とたいして違わない訳である。

ちなみに、サイ君の一日は結構規則正しいようである。
  <♂ター君の夏の一日>
09:30 部屋から運動場へご出発
09:30〜10:00 朝食
10:00〜12:00 長時間のシャワー浴び
      終われば、運動場散策と雑草食み
12:00〜13:00 木陰でご休憩
13:00 木陰が無くなるとシャワー浴び
      終われば、室内入り口での徘徊(入りたいとの意思表示)
14:00 冷房室内へご帰還(選手交代)
  <サマーナイト追加の場合>
17:40 部屋から運動場へご出発
     シャワー浴び・菜食・部屋入り口徘徊の繰り返し
19:00〜 水場で横になってご休息
21:00 部屋へご帰還

(東京ズーネット ニュース)
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