■■■ 多摩動物公園の見所 2013.5.8 ■■■

   トノサマバッタ

多摩動物公園は丘陵にあるので、動物舎めぐりはハイキングモードに近いが、昆虫園だけ見るつもりなら、300m程度の坂道を歩くだけですむ。その割には、他と比べて観客が少ない感じがする。生態園など、ドーム型温室植物園でもあり素晴らしい施設なのに。(実に凝った建築で、昆虫生態園はチョウの形なのだ。お隣の昆虫園本館はトンボの形とか。2つの建物の前庭には、子供が乗れる中嶋大道作品。もちろんトノサマバッタの♂♀ワンペア。)
まあ、小生にしてから、動物園は哺乳類の見世物ビジネスと考えており、見物するに際しては、先ずは昆虫からとはいかない。別扱いにした方が観客を呼べそうな気もする。昆虫ファンは少なくない筈だから。
とは言うものの、昆虫園は、動物園全体で見れば便利な場所に位置している。肌寒さを感じた時や、小雨交じりの時、とりあえず生態園に急いで入り、緑の温室内でのんびりする手があるからだ。もっとも着膨れていたりすると、暑くて居られたものではないが。

と言う説明をすると、新宿御苑の立派な新築温室や、古くなってしまった井の頭の温室と比較されかねないが、多摩の展示主体はあくまでも蝶。
壮大なスケールで、蝶がわんさか飛びかう場所である。従って、虫採り少年少女だった方だと、興奮して全身汗だくになるかも。
世の中には、鱗粉のついた翅がヒラヒラと舞う姿を見た瞬間、血の気が引く方もおられるが、そんなお方にとっては危険地帯そのもの。
まあ、こんな余計なことをほざくのは、チョウはチョウでも「超」巨大ゴキブリもいるからだ。こちらは、多分、苦手な方だらけ。その上をいくのは、ゴミムシダマシ君の展示。実物を見たことある人など滅多にいないと思うが、お名前から想像した通りのお姿。マニア諸君は別として、わんさかと箱に入っている図をわざわざ見たい方は少数派だろう。
この様な、いかにも自己主張が強そうな展示が並ぶのが、多摩動物公園昆虫園の一大特徴。なんとしても、昆虫の面白さを見つけてもらおうとの意気を感じさせる企画のテンコ盛り状態である。「蟻さんから象さんまで」というのが動物園全体のスローガンらしいが、昆虫って、象さんより凄いんだゼと言いたげなのが花丸。

ただ、小生は、温室の芝生で静かにくつろいで日光浴中のトノサマバッタの展示が一番気に入っている。
バッタ自体は別に珍しくもないが、捕まえることはできても、特定の一匹の動きをじっと眺める機会はそうそうあるものではないからだ。バッタ同士が互いに出会うとどういう反応を示すのか、日陰になる時どう動くのかを見るだけでも、なかなか面白いものがある。・・・観客はそんな風に気楽に眺めて楽しめる訳だが、その裏で行われている飼育・繁殖はえらく大変そうだ。温室外の通路展示でその過程がわかるからである。でも、それはほんの一部。幼虫・成虫あわせておよそ5,000匹ものトノサマバッタを飼育しているというのだから。(これが蝗なら、佃煮商売ができると思わず考えてしまうほどの数。)

思うに、食虫動物を是非とも飼いたいというキュレーターがいない筈もないから、トノサマバッタの飼育は展示用もさることながら、餌作りでもあろう。・・・まあ、そんなつまらぬことを考えながらバッタを見ている観客もいる訳である。

実は、そんなことより、ムカデもいるのに驚かされた。さらには、30脚のゲジゲジも。ゲジも、よくよく見ると目が大きく、かわいらしい顔の生物だそうである。小生は同意しかねるが。そうそう、サソリもいらっしゃる。
うーむ。これらは昆虫ではないのだが。類縁ということで是非にも昆虫と比較して見てくれということか。
ただ、小生は直感的に、ムカデは、昆虫とは相当に縁遠い生物と思うが。バッタ(昆虫:六脚)とムカデ(多足)を、「1対の足が付属する節」からなる生物だから同類というのは余りに強引ではなかろうか。義務教育で節足動物として覚えさせることになっているから、表立って反対する訳にはいかないが、どうもセンスを逆撫でされるような分類である。
まあ、膨大な肢も次々と退化していけば6脚になるとの理屈をつけたければ、そりゃなんとかなる。しかし、実物を眺めると、どうもネー。

それに歩き方も違う。ムカデは、歩肢3点での繰り返し運動で進むようだ。昆虫園本館にある大型模型でそれが実によくわかる。その手の動物が、一対の後脚で跳ねあがり、数十m翅で飛び続けるトノサマバッタと類似性ありと言われてもネ。
  ・・・ムカデの3点歩行・・・
    ○●○・・・・・・・・
 [頭]━━━━━━━━━━━[尾]
    ●○●・・・・・・・・

それに、体躯の構造が決定的に違う。バッタ等の昆虫は、【頭部】+【胸部】+【腹部】構造。蟻さんの場合は翅が無いが、普通は胸部に付属する6脚4翅の10足生物だ。
  ・・・昆虫の体躯・・・
     U▽U▽U
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     U△U△U
  【頭部】 0対の脚
    【胸部】 3対の歩肢+2対の翅
      【腹部:多節の名残】 0対の歩肢
一方、ムカデはそれこそなにがなにやらの区別なき繰り返し構造である。
  ・・・ムカデの体躯・・・
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 ■━━━━━━━━━━━○:
  -・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  【頭部】 無脚(1対の触角と口器)
    【胴部】 毒牙でもある顎肢付最前節(歩肢無)+1対の歩肢付中間節多数+曳航肢付尾節
尻の曳航肢は歩行に無縁で、見た目には頭の触覚と同じような感じがする。お陰で、尻と頭の区別がつかなかったりする訳である。このことは、頭部と胴部はたいした区別が無いということでもあろう。頭-胸-腹が峻別されている構造と、胴体を形成する中間節はいくつあろうがかまわないような生物とでは、余りに差がありすぎる。それこそ、脊椎動物で言えば、背骨の数がどうにでもなる種ということなのだから。

多足から10足(6脚4翅)になったというのもどんなものだろうか。
確かに、昆虫の幼虫たるイモ虫は多足だから、祖先は共通だったと見なしたくなる。それに、バッタ成虫をよくよく見れば、確かに、ムカデのような多足の進化形といえなくもない。
 【頭部】 「触覚」節+横動きする「顎」節+足無しのジョイント部3節
 【胸部】 それぞれ1対の脚を持つ3節
 【腹部】 無足の11節

だがネ、ムカデは湿気を好む、泥の生き物で、そこからバッタの好む草原へ繰り出すことはないのでは。あり得そうなのは、土中に生きる方向。しかし、昆虫たる蟻が、ムカデやゲジに似ているとはとうてい思えない。バッタとムカデは出自が全く違う生物同士というのが、多摩動物園で両者を実際に眺めた素人感覚から来た結論。

(東京ズーネット 動物たちの横顔 20) 昆虫園のトノサマバッタ
(東京ズーネット ニュース) ゲジの孵化 2013/01/04



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