■■■ 多摩動物公園の見所 2013.6.13 ■■■

   シロテテナガザル

熱帯林の樹上生活者。肉食動物に襲われることはなさそうだが、林冠でボケーとしていると鳥には襲われる可能性大。あと、危険なのは毒蛇や大蛇くらいしか思いつかない。そうなると、一番の天敵はヒト。
そのわりには観客には親近感を抱いていそう。飼育動物だからそうなるのかも知れないが。
ケージを覗いていると観察にやってきて、手を出したりする。こちらを触ってみたいようである。じっと見つめていたりするが、そのうちやおら動き始める。先ずは跳躍で一気に台に乗り、ロープを使ってケージ中をハイスピードで動きまわる。ヒトを見るのに飽きた訳ではなく、こんな凄いことができるゾと、敏捷な運動能力をご披露してくれるのだ。サービスというより、こっちの方がアンタより上と見せつけている感じがする。
なにせ、又、元のところに戻ってくるからだ。 拍手してあげたいところだが、そんな習慣はなさそうだし、こういう時はどう対応すべきかよくわからん。まあ、褒めてつかわすといった調子の目で応えるしかない訳である。跳び上がるとか、手をグルグル回すという手もありそうな気はするが、試したことはない。

確かに、長い腕をつかった空中渡りの運動能力は素晴らしい。当然ながら、枝やロープをつかむのに向いた手の構造なのだろうが、地上に降りて葉っぱを取ろうして、結構、難儀している。心理的なものか、細かな動きは苦手なのかわからぬが、不思議な感じがする。(尚、ウエブ情報だと、地上には下りないとされている。)

極めて珍しい動物であるが、どういう訳か、長谷川等伯(1539-1610)が「枯木猿猴図」「竹林猿猴図屏風」で描き込んでいる。もちろん、手長猿が日本に棲んでいたことなどあろう筈もない。大徳寺の牧谿「観音猿鶴図」を見ての作品。どう感じたのだろうか。
観音像、鶴、白手長猿、岩山はモノクロが様になるから水墨画に向いている画材であるが、なにか特別な信仰感が生まれたのかも。

そういう意味がありそうなら、漢字での「猿猴」表現は間違いである。白手長臂猿は「猿」であって、「猴」ではないからだ。ニホンザルの極く近しい親類のアカゲザルこそ、"普通の"「猴」なのだ。要するに、日本に住んでいる連中を含めて赤い顔なら「猴」。威厳を感じさせる顔つきなら「猿」ということ。本来なら、「猿」は特別扱いすべき動物。
手長猿には、尻尾が無いとか、直立歩行姿勢がとれ、ヒトに近いというのは些細なこと。威厳というか品位を感じさせるこそが、「猿」の一番の特徴だからだ。ただ、移動スピードがとんでもなく速いから落ち着きを欠くと勘違いされがち。上述のように、ヒトと面と向かって目を合わせることができる高度な知性の持ち主であり、どちらかと言えば、じっくり思考型と見なすべきである。おそらく豊かな感情表現の日々を過ごしているに違いない。だからこその一夫一婦制だと思われる。 目を合わせたりすると、ヒトを恐れているくせに、すぐに威嚇してくる軽薄な「猴」達とはいささか違うのである。

(絵画)
枯木猿猴図:http://www.kyohaku.go.jp/jp/syuzou/meihin/kaiga/kinsei/item13.html
竹林猿猴図屏風:http://www.shokoku-ji.jp/j_meihou/art_tikurinenkouzubyobu_l.html http://www.nanao-cci.or.jp/tohaku/big/16.html
観音猿鶴図:http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/0/03/Guanyin,_Monkeys,_and_Crane.jpg/350px-Guanyin,_Monkeys,_and_Crane.jpg


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