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■■■ 上野動物園の見所 ■■■
2014.11.27


雪夫翁逝く

上野動物園の国内最高齢の白熊君死去。
病名はあるものの、平均寿命は30年程度だろうから、老衰に近かろう。

実際、筋肉の力は相当に衰えており、どうにかプールからはい上がれるようなご様子だった。
泳ぎもゆったりとしており、獣の機敏さは微塵も感じられなくなっていた。
それでも、プールに投げてもらう餌を獲るのが、一種の遊びでもあったようで、いかにも嬉しそう。それがかえって、遠足の子供達の人気を呼ぶことにつながっていたようだ。

釧路から帰ってきてから、実に短い期間だったが、水中での3m近い巨大な体を間近で見せてくれたりして、大活躍と言ってよいだろう。それにしても、北海道に、ご隠居暮らしの場所がなかったのが不憫である。

まあ、秋めいてから、お迎えが近そうな気配は濃厚だった。
ゴロゴロするのがお好きとはいえ、本来的には氷点下の温度で長距離を歩く動物が、日が差し込む草地でぐったりしていたのだから。
しかし、そんな状態でも、時に、目線だけを観客に向けたりしてサービス精神旺盛な熊君だった。流石、動物園育ちという感じがした。

折角の、寒くなる季節を越せなかったのが残念であるが、こればかりは如何ともしがたい。

これで、上野には、イタリアから移住してきた小振りな体躯のDea嬢だけになってしまった。
思うに、今のような飼育を続けていてよいのか考え直す時期に来ているのではなかろうか。

これからの動物園の標準は、おそらくシンガポールの"Frozen tundra"型だろう。氷が浮かぶプールで泳いでいるのは、熱帯で誕生した北極熊君である。日本とは雲泥の差の境遇と言ってよいだろう。
そう、そんなことができるのは、生活にゆとりがある社会だけ。それができないなら、飼ってはならないということ。

日本の場合、場所にもよるが、夏の亜熱帯的気候にさらされ、ほとんど檻状態環境下の動物園は少なくない筈。それを放置したままで、全国規模での展示個体数維持に注力というのは、どうみても時代の流れに合っていないと思うのだが。日本は、欧米とは違うモラル感の社会だと言ってしまえば身も蓋もないが、それを続けるのは難しかろう。
上野動物園の白熊の死亡状況を見れば歴然としているが、飼育員さんの愛情あっての長寿実現だろう。一緒の生活が楽しみだったのは間違いないと思う。だが、もしもこれが劣悪環境下だったとしたら、そうした行為は決して褒められるべきものではなかろう。北極熊展示は日本猿飼育とは本質的に異なるからだ。展示施設建設だけでも、膨大な費用がかかる訳で、国内にいくつも作れる筈がないのである。

(かつてのお姿)
「ホッキョクグマとアザラシの海」[1]ホッキョクグマ(2011年10月撮影)@東京ズーネット
(ご参考)
故ユキオ(雪夫) ♂
  1987年ドイツ・ミュンスター動物園誕生
  2000年他園を経て 上野動物園来園
  (2012年-2014年4月釧路市動物園)
  2014年11月25日 急性膵炎死亡[26歳11ヶ月]
故レイコ ♀
  1983年ロシア・レニングラード動物園誕生
  1984年上野動物園来園
  2012年2月24日 肝腫瘍死亡[28歳2ヶ月]
故ユキオ(雪男) ♀(♂と誤認されていた.)
  1958年上野動物園来園[ソビエトサーカス団より]
  1993年3月15日 死亡[34歳9ヶ月]

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