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■■■ 上野動物園の見所 ■■■
2014.11.29


獅子を見て

動物園のライオンといえば、小生には、多摩動物園のアフリカゾーンしか思い浮かばない。いかにも所在なさげにに多数が寝そべっているところをバスが回るシーン。流石に、それではこまるから、餌で動きを喚起している訳だが。
ただ、時期や時間帯によっては、大ゲンカや吠えまくりもある。それに、結構、追いかけることもお好きなようで、暇つぶし手段は色々あるようだ。

東京では、ライオンは上野動物園でも見ることができる。狭いながらも、工夫された自然の景観のなかに、♂か♀のどちらかの一頭の交互展示のようだ。
ただ、こちらは、インドライオン。みかけ、アフリカライオンと同じだが、雄の鬣は短く、こざっぱりした感じがする。と言っても、堂々とした立派な体躯。

アジアにもライオンがいることを習う機会は無いから、ほとんどの人は「インド」という表示を見て驚いている。ビハール州のアショーカ王柱の模型でも置いたらどうかと思うが。昔は、ペルシアにもいたし、インドの首府デリー辺りにまで進出していた訳である。

それが、今は、インド北西部グジャラート州Gil Forest保護区にのみに棲息。虎は藪棲で、こちらは疎林住いであり、場所が遠く離れているので会うことはない模様。当然ながら棲息地域はいたって狭く、獅子口はせいぜいのところ300頭内外と推定されている。
数を増やすといっても、可能な密度がある筈で、圏外に出て家畜を襲うしかなくなるから、保護活動は簡単ではなかろう。動物園化する道しか残っていないのではないかという気がするが。

マニアではないので、そうそう上野に見に行くこともないので、どのような生活パターンかは定かでないが、動いている場面にはなかなか遭遇できない。

♂は、寝っ転がっていても、時々体を動かすから、睡眠中という訳でもなさそう。顔を観客に向けることもお嫌いのよう。と言うか、顔をあげても、周囲の状況に全く関心無しのご様子。
目線を合わせて、観客の目前まで近寄ってきたりする、お隣のベンガル虎とは対照的。
それでも、時に吼えることはあるようだ。牝に存在をアピールする必要があるということなのだろうか。
そんな状況を見ていると、獅子生、さっぱり面白くないと言いたげに映る。
♀も似たようなもの。全面ガラスの観客覗き場から、見えにくい場所を選んでふて寝しているが如し。
居心地悪しか。

思うに、遊ぶタネが決定的に不足しているのでは。多摩の、ネコ科動物はそれなりに、皆、遊んでいるように映るからだが。
もっとも、遊具では反応しそうにないから、簡単ではなさそう。

そんなことをついつい思ってしまうのは、雅楽のハイライトたる獅子舞では、獅子には手繩がついているし、あやし役の童子が二人登場するからである。
獅子とは、そういう手の動物では。

現実の動物をを見ていると、なんとなくそんな気がしてくるのである。
それこそ、準和名としてデカデカと「獅子」と表示して欲しい。

もっとも、そんなことを言うと、雅楽はすたれたと言うお方もおられよう。しかし、逆に、民俗的舞楽の「獅子舞」は、全国津々浦々どこでも行われているのでは。日本にはライオンなどいなかったと言うのに。まあ、お得意の習合の可能性もあるが。(ヰのシシや鹿のシシ)しかし、現在使われている獅子頭は雅楽の面となんらかわらないし、それはライオンの表象としか思えない。日本人はどういう訳か、矢鱈に獅子好きなのだ。

その辺りは、島嶼のスリランカとウリかも。彼の地にライオンが存在した可能性は限りなく薄いが、驚くなかれ、自称「獅子の民」で、入れ込みは半端ではない。Lion文化に対抗する、仏教のシンボルということかも知れぬ。

なにせ、Lion文化に染まっている人達にとっては、この最強獣を自らの番犬として扱うことが誇りなのだから。
それは、最高権力の座の表象ということだろう。
家々を百獣の王が遊びに訪れるかの如き、獅子舞文化とは相容れない。

 (獅子文化圏)
 中国---獅子/shîzi
 日本---しし
 沖縄---シーサー
 韓国---Saja
 ベトナム---Su'tú'
 インドネシア---Singa
 タイ---Singto
 チベット---Sengge
 ネパール---Sinha
 パンジャブ---Śêra
 ヒンディ---Śêra
 ベンガル---Sinha
 スリランカ[Sinhalese]---Sinha
 マラーティ---Sinha
 スワヒリ---Simba

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