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■■■ 上野動物園の見所 ■■■
2014.12.25


ペンギン考

"Penguin"を知らない子供などおよそ考ええられない。ピカ一の人気者と言ってもよいのでは。
書籍も色々あるが、先月には、さらに4,000円の図鑑が発売になった。テュイ・ド・ロイ,マーク・ジョーンズ:「新しい、美しいペンギン図鑑」エクスナレッジ 2014年11月

そんなこともあり、米国では、一種のテーマパークであるペンギンツアーが興行的に成功を収めてきた。一方、日本では、上野動物園が早くから飼い方を開発してきたお蔭で、昔からそこらじゅうで飼われており、珍しいと言うよりは、馴染みある動物となっている。
どもあれ、奇妙な動物という感覚は万国共通だと思われる。

その理由は、水辺で、2足で直立している点にありそう。にもかかわらず、結構動きがあるから、展示動物に向いている。しかも、寝ていたり、見えない所に隠れるような挙動を見せないし。

説明し易い単純形である点も、親しみが湧くポイントだろう。
 伸長30〜40cmで体躯は紡錘形。
 体の表面は、黒白色織物状皮革のよう。

体色が黒白がはっきりしているモノトーンな点も、注目を浴び易いと言えよう。
  ペンギン(上野,井の頭,葛西)
  ジャイアントパンダ(上野)
  マレーバク(多摩)
  アビシニアコロブス(上野)
  イルカ
  シャチ

飛べない鳥とされており、それに疑問を感じる人はいないようだ。翼の存在を感じる走鳥系は体型が違いすぎるが。
  ダチョウ(多摩)
  エミュー(上野,多摩)
  ヒクイドリ
  [絶滅]エピオルニス(上野:彫像)
と言って、キーウィやタカヘ[絶滅]は、飛べないとされるが、翼を持つ鳥の姿そのもの。ペンギンとの類似性は全く感じられない。ガラパゴスウミウも飛べないと聞くが、飛んで逃げる必要がない水鳥というにすぎまい。ペンギンは、どう見ても、これらの飛べない鳥とは全く異なるから、常識的には鳥と言われても本当か疑わしいと感じてもおかしくない。

不思議なのは、飛べない割に、二足歩行はえらく不得意という点。単に前に進むだけでも、よくみかける鳥の歩行とはえらく違う、ひどくぎこちない動きだし、一寸した段差や坂を上るのは大事で、躓いたりこけたりする。わざとピエロ的に振舞っているように見えるほど。
その辺りも人気の秘訣である訳だが。

もっとも、鳥と教えてもらい、納得できるのは、嘴があり、水面に浮かんだ状態が水鳥の姿ウリだから。
しかしながら、冷静に眺めれば、水鳥と言うよりは、水掻足と鰭的手を持つ獣に近そう。特に、水中に入っての行動は様変わりで、獺やラッコの手足変形と言われれば、そう見なしかねないのでは。
なにせ、潜水遊泳に移ると、紡錘形のアジカの動きそっくり。その素早い動きには目を見張らされる。そういう観点では、上野動物園の発展形として作られた「葛西臨海水族園 ペンギンの生態」は見モノ。100羽近くが、全員揃って潜水遊泳を始めると、壮観そのもの。

しかしながら、狭い陸上と、小さくて浅いプールしか無い上野動物園の展示の方が遠足の子供にとっては楽しそう。大勢のペンギンの潜水は怖さを呼ぶのかも知れない。
上野では、網がなければ手の届きそうな間近で見ることができることもあるが、穴ぼこネグラがあり、いかにも自宅保有族的な感じがするのが親しみを与える鍵では。しかも、喧嘩はするし、各自、勝手な方を眺めていたり、気ままに散歩しているものもいたりと、いかにも個性的なのが面白い。
と言うか、要するに、見物人がなにをしようと全く意に介さずなのだ。ヒトを恐れる様子は皆無。なかには、ヒトをビックリさせる技術を磨いていそうなヤンチャな輩も。

ここら辺りの仕草は、ペット的要素濃厚と言えよう。

ただ、惜しむらくは、陸上を一面白色に着色している点。
ペンギンとは、原則、南極大陸の氷上動物と見なしたいのだろうが、それはどうかと思う。間違った見方を助長させるのではなかろうか。冷たい環境に棲むといっても、それは南極海から流れ込む海流であって、陸上ではなかろう。
上野に住んでいるケープペンギン一族は。アフリカ大陸南端のケープ地域が根城。その気候を考えれば、上野に雪でも降れば、寒くてブルブルというのが実態では。忍耐力抜群なのは間違いなさろう。ともあれ、南氷洋の世界の動物と言うよりは、ヒトの棲息域で暮らす動物であるのは明らか。(そうなると、表示もアフリカペンギンとした方が良くないか。)
漁民からの嫌われ者だろうし、ヒトと同居、当然ながら絶滅危惧種だ。大量魚食だから、もっとも、その個体数は小さな数字ではない。つまり、万単位で密集して生活するタイプということになる。従って、小規模な飼育だとストレスを味わっている可能性もあろう。素人感覚的には、小学校をどうしても考えてしまるので、30羽くらいはいないと辛そうに見えるがどうなのだろうか。
もっとも、飼育数を増やし始めれば際限なき状態になりかねない。飼育数3桁になると、衛生管理業務の負担もただならぬものになるのは間違いない。群れ飼育は簡単ではなさそうだが、そこは知恵で工夫するしかなかろう。
そんなことを考えると、将来的には、ICタグ管理の自動給餌システムとか、ペンギンに親和性が高い清掃ロボット投入が不可欠な気がしてくる。そのための基礎データの蓄積が重要かも。

ともあれ、多種展示ではなく、単独種群れ展示が基本形だろう。
上野の群れはアフリカのケープペンギンだが、葛西の大規模な群れは、南極からの冷水のフンボルト海流が流れている、ペルー・チリの太平洋岸と沿岸部島嶼に棲むフンボルトペンギン。
その違いは素人にはよくわからない。言われてみれば、葛西組は、首の下の黒い横縞の幅が広いといえばそうかもという程度。・・・黒帯ペンギンの、南アフリカ棲息群とペルー・チリ棲息群と呼びたくなる。小生は見たことはないが、日本の動物園にはマゼランペンギンと言う類似種も少なくないそうだ。こちらは、横縞が2本だというから違いはすぐわかるらしい。そこまで観察する人は少ないだろうが。

尚、この他の種としては、大型が有名。首下の黒帯無しの上に、モノトーンでなく、色模様がつく。いかにも寒い所で生活している風情を感じさせるから、それなりの施設に入居させる必要がある。
一方、モノトーンで黒色が弱い感じで、かなり小さいのがコガタペンギン。そのものズバリの名称。大型種の子供と間違いそう。
あとは、頭に飾りがついている種。そのなかでは、イワトビペンギンは超有名。顔を見ているだけでもなんとはなしに面白い。しかし、大きな群れの隣で孤立状態というのは、どんなものか。

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