■■■ 鳥類/哺乳類の分類 2013.4.1 ■■■

   歯について

動物園には必ず展示動物の名札が掲げられており、そこにはカタカナの和名と「目/科」名に、ラテン語の学名が書いてある。これだけは必須。大雑把な分布地域も表示していることもあるが、こちらは必須という訳でもないようだ。他にも、食の話や、種としての特徴、飼われている全員の紹介も見かけるが、これらはオプション。おそらく、それぞれの飼育員さん(兼キュレーター)の好みで、どのように説明するか決まるのだろう。
まあ、一緒に生活しているようなものだから、この方式が一番なのは間違いない。

ただ、余りに個々バラバラになりすぎると、動物園としての価値を失いかねまい。観客に、分類表記である「目」の意味を考えさせるチャンスを失いかねないからだ。そこら辺りの匙加減は結構難しそう。
なにを言いたいかわかりにくいか。
全体の展示を通じで、鳥類/哺乳類の全体像をなんとなく感じ取れるようにして欲しいということ。従って、昆虫や爬虫類は別扱いにしないと、なにがなんだかわからなくなってしまう。多摩動物公園のキャッチフレーズは、蟻から象までらしいが、正直ガッカリである。葉切蟻の展示は面白いだけでなく、有意義ではあるが、それは別な話。
そして、同じような場所に棲んでいる動物でも、爬虫類を鳥類/哺乳類と並べて展示するのもどうかと思う。鳥類/哺乳類への進化を考えさせるきっかけ作りになっているとは思えないからだ。もちろん、特定の状況下での環境問題を取り上げて、なんらかのメッセージを打ち出したいうのなら別だが。

つまらぬことを書いているのは、学生の頃、他大学で分類学者の講義を聴講した時の記憶が未だに頭の片隅に残っているから。(今は、こんなことは不可能。)
ということで、一寸書いてみることにした。

実は、小生は、哺乳類分類のあまりの馬鹿馬鹿しさに、呆れ返っていたのである。言うまでもなく、素人だからそう考えた訳である。・・・一番馬鹿げていると思ったのが、「兎目」。クジラは例外的だから、「鯨目」というのはわかるが、ウサギといったポピュラーな動物にそのままの名称をつけるとは一体どういうつもり。それなら、全部、そういう風にしたらよいではないか。「猫犬目」、「象目」といった調子で。
ご存知のように、「象目」とは呼ばないのである。
 ・長鼻目---ゾウ
誰だって、納得する名称だろう。しかし、それなら、「短鼻目」はないのかね。まあ、無いこともあろうが、キリンはどうなるか。
 ・長首目---キリン
 ・短首目---サイ、カバ
ウサギはこうなるか。
 ・長耳目---ウサギ、ロバ
顔に着目するなら、これもありでは。
 ・長顔目---ウマ
 ・大顔目---パンダ
 ・小顔目---ネコ
一番進化しているとされる動物はこんなところがお似合い。
 ・厚尻目---チンパンジー
 ・厚顔目---ヒト

どうでもよい話だが、要するに、「目」名称が常識的な分類の様相ではなく、恣意的なものに映る訳である。
---東京ZOO どうぶつ図鑑 哺乳類---
http://www.tokyo-zoo.net/encyclopedia/index.html

【有袋目】(ウォンバット科,コアラ科,フクロモモンガ科,クスクス科,カンガルー科
【長鼻目】ゾウ科
【霊長目】オナガザル科,キツネザル科,ロリス科,ヒト科,オマキザル科,テナガザル科,キヌザル科,アイアイ科,メガネザル科
【ウサギ目】ナキウサギ科,ウサギ科
【偶蹄目】ウシ科,キリン科,シカ科,カバ科,イノシシ科,ラクダ科,マメジカ科
【食肉目】ネコ科,クマ科,アライグマ科,イタチ科,アシカ科,アザラシ科,イヌ科,マングース科,ジャコウネコ科
【奇蹄目】バク科,サイ科,ウマ科
【齧歯目】ビーバー科,リス科,パカラナ科,チンチラ科,トビウサギ科,ネズミ科,ヤマネ科,ヤマアラシ科,カピバラ科,デバネズミ科,トビネズミ科,アメリカヤマアラシ科,デグー科,テンジクネズミ科
【翼手目】オオコウモリ科,ヒナコウモリ科
【ツパイ目】ツパイ科
【食虫目】[*]−記載無
【単孔目】ハリモグラ科
【貧歯目】ナマケモノ科,アルマジロ科,アリクイ科
【有鱗目】センザンコウ科
【管歯目】ツチブタ科
【ハリネズミ目】[*]ハリネズミ科
【アフリカトガリネズミ目】[*]テンレック科
  [*]:食虫をなくし、トガリネスミ目(モグラ科含む)の3分類にしたいようだ。


このなかでいかにも分類然とした名称もある。特徴的な歯の名称、【齧歯目】、【貧歯目】、【管歯目】(歯根無しの臼歯のみ)である。これなら、網羅的な分類として通用しそう。例えば、次のような名称に変えることもできそうな気がしてくる。
 ・捕殺歯目---【食肉目】
 ・シャベル歯目---【ウサギ目】
 ・微塵切潰し歯目---草食系---【奇蹄目】【偶蹄目】
歯列がどうなっているかは化石でも確認できるから、歯なら、絶滅動物も分類できる。眺めてみると、結構色々な名称があるようだ。【肉歯目】、【裂歯目】、【紐歯目/帯歯目】、【汎歯目/全歯目】である。
それぞれが、どういう内容を意味しているのかは知らないが、歯分類が優れていそうなのは素人でもわかる。ワニ、カメ、ヘビ、トカゲは、食物丸呑みに近く、歯の数が多いだけで毒牙があったりはするが、歯の硬さを活用して十分な機能を発揮しているとは思えないからである。それがどこまで本質的な違いと言えるのかはよくわからぬが。

しかし、上記のどうぶつ図鑑の分類を見てわかるように、「目」分類は、「歯」分類に対応可能とも思えまい。分類基準がバラバラな上に、レベル感が相当違う。常識なら、肉食、草食、昆虫食、雑食というのが分類の基本だが、食肉と、草食動物での蹄の数が偶数か奇数かが、同レベルになっている。素人には解せない訳である。滅茶苦茶な視点で分類しているようにしか見えない。だが、実は、それでよいということを、くだんの学者の話で初めて知ったのである。そんなことは、図鑑や本には書いていないのでは。ほとんどが分類暗記推奨本だから、遺憾ともしがたい。
「目」とは、要するに、ストーリーが描ける単位になっていればよいのだそうである。小生は、それですべてが氷解した。どんな名称にしようとかまわないということ。
このことは、素人がストーリー性を感じることができる展示でないと、進化による種の多様性の実感は浅薄なものでしかないということ。折角、多種の動物を展示しても、色々珍しい動物って存在するものだネで終わってしまう訳だ。これを、個別の動物展示の工夫で対応するのは極めて難しい。全体の配置とか、くくり方による印象で、動物の全体像を捉えてしまうからだ。従って、「ゴリラと猛獣の森」とか、「夜行性」や「珍しい小動物」といった展示をされてしまうと、地球史的な感覚で時空間的に動物を考えることはできなくなってしまう。動物園といっても、興行組織であるから、それはそれで結構な話だが、動物園としてのレゾンデートルを云々するなら、考えもの。
(案内マップを比較すると、多摩動物公園は動物の時空間的全体像を観客に考えさせるような設計を追求しているように見える。その方針が、個々の展示にも相当影響している感じがする。)


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